目が覚めた。真っ暗だった。
(やばっ)
僕は体を起こそうとした。案の定、動かない。顔を覆われている感触。僕は、また御山君のお尻になってしまった。
(御山君の?)
当たり前のように御山君のお尻だと思った。でも、そうとは限らない。ひょっとして別のやつのお尻って可能性だってある。例えば、子安のお尻とか。お尻じゃないかもしれない。とにかく今、僕はたぶん僕じゃない。誰かの、何かになっている。その証拠に顔を覆っているものを取ろうと手を動かしてみても、それを取ることはできない。いや、手が動かない。手がない。
ノックの音が聞こえた。でも、僕は、いや、僕がどこかになっているその体は動かない。ドアが開く音。御山君ならお母さんが、いや、ママが起こしに来たのかもしれない。でも、その誰かは声を出さない。
(誰だ、これ)
僕は体を硬くする。いや、硬くする体はない。
その誰かの体が少し揺れた。そして、僕に何かが触れた。
「んん」
声がした。そして、僕の体が動く。また僕に何かが触れる。その感触は手のひらだ。それが僕を撫でている。そして、急に少し明るくなった。
「う・・・ん」
また声がした。そして撫で回される。
(やっぱりお尻だ)
その手が僕の顔を覆っていたものの下に入ってきて、僕を直接撫でた。隙間から少し周りが見える。どこかの部屋。ホテルとかじゃない。本棚が見える。そして、僕の視界が少しずつ開けた。
御山君のお父さんが僕を見つめ、撫でていた。
御山君のお父さんは僕を撫で回し、そして僕の口のあたりに指先を当てる。つまり、この誰か、たぶん、御山君のアナルに触った。たぶん御山君は眠っているんだ。眠っている御山君の部屋に御山君のお父さんが入ってきて、パジャマのズボンを下ろして、パンツも下ろしてお尻を、僕を触っているんだ。
指が一旦僕から離れた。そしてまた僕の口に触れた。少し湿っていた。その指が僕の口をこじ開け、ゆっくりと入ってくる。ゆっくりと抜かれて、そしてまた入ってくる。今度は指二本だ。御山君のお父さんは、たぶん御山君の顔の方を見ている。顔を見ながらアナルに指を入れているんだ。そして、僕の視線の先に御山君のお父さんの顔が現れた。その顔が僕に近づく。御山君のお父さんが舌を出す。それが僕の顔を舐め始める。
「ん・・・」
その声は御山君だ。間違いない。御山君は眠ったまま、お父さんにアナルを舐められている。舐められて、そしてまた指が入ってくる。冷たいものが口の周りに塗られた。ローションだ。
「このまま入れるぞ」
御山君のお父さんが言った。そして、僕にペニスが近づいてくる。
それが僕に押し付けられた。僕の口をこじ開ける。入ってくる。僕の口に、つまり御山君のアナルに御山君のお父さんのペニスがずりずりと入ってきた。
急に僕の体がガバッと動いた。
「もう、なにやってんだよ」
御山君だ。
「おはよう、目が覚めたか」
「もう、朝っぱらからなにしてんだよ」
しかし、僕に御山君のお父さんの腰が押し付けられる。
「好きだろ、こういうふうにされるの」
たぶん、御山君はベッドにうつ伏せになって、その上に御山君のお父さんが覆い被さってるんだろう。そして、御山君のアナル、つまり僕の口に御山君のお父さんのペニスが奥まで入ってきた。
「ああ・・・」
御山君が声を出す。
「ダメだって・・・ママに見つかるって」
出た、ママだ。
「大丈夫だ。さっき出かけた」
そして、僕の喉を突き上げる。
「うっ」
そのままズボズボされる。昨日のことを思い出す。
(って、昨日の今日だよな)
あの痛み。僕には痛くて無理だった。でも、御山君は平気だ。
「ああ、お父さん・・・」
それどころか、気持ち良さそうな声を出している。急に御山君のお父さんが僕から離れた。
「ほら」
御山君が体を動かす。僕は柔らかいもの・・・たぶん、御山君のベッドに押し付けられる。じゅぼじゅぼという湿った音がする。たぶん、御山君がフェラチオをしているんだろう。時々すすり上げるような音。
「お前はフェラが好きだな」
御山君のお父さんの声。御山君の声は聞こえない。
「今度、あの子にもフェラしてあげなさい」
「やだよ」
御山君の声だ。
「お前はあの子は嫌いか?」
「そうでもないけど・・・阿南よりお父さんのがいい」
ふと、そういえば母親はママだけど、父親はお父さんなんだ、なんて思う。
「そうそう、アナル君だったな」
(誰、それ)
「あなみ、だよ」
「だから、あな、る、君」
「まあ、似てるけど」
御山君はフェラチオしながら普通に会話している。
「あの子の下の名前は?」
「確か、誠一」
「そうか・・・アナル、精液君か」
「誰だよ、それ」
そして、二人で笑う。
(そんな呼び方すんなよ)
でも、僕の声は二人には届かない。
僕がまたお尻になってて、この会話を聞いているなんて思ってるんだろうか。
「今日はどうしてるんだろうね、アナル精液君」
(だからやめろって)
ふざけているのは分かる。でも、そこに少し悪意を感じる。
「さあ、知らない」
「ちょっと呼び出してみてよ」
その後、しばらくはただ湿った音だけになる。
「やだよ」
やがて、御山君が言った。
「今ごろお尻が痛くて動けないんじゃない?」
「そこまで無理矢理にはやってない」
僕の体が上に動く。あぐらをかいている脚が見えた。その真ん中に勃起したペニス。御山君のお父さんのだ。
「僕の時は結構無理矢理だったくせに」
そのペニスが僕に近づいてきた。御山君が、あぐらをかいたお父さんの上に座ろうとしている。
「お前は初めから入ったからなぁ」
御山君のお父さんのペニスに僕の口が押し付けられる。
「それに初めから気持ち良さそうだった」
手が僕の頬のあたりを引っ張ってる。たぶん、御山君の手。自分でお尻を開いてるんだ。
「ああ」
御山君のお父さんが僕の口に入ってきた。御山君のお父さんは動いていない。御山君が自分で受け入れているんだ。
「入ってくる」
先が僕の口の中に入ってくる。
「ああっ拡がる」
そのまま、僕の口を押し拡げながら奥へと入ってくる。
「元から拡がってるだろ」
そして、御山君のお父さんの腰が上に動いた。
「ああ、入ってくる」
御山君の声。顔が想像できる。昨日のあの顔。僕の顔が御山君のお父さんの股間に押し付けられた。
「お父さん大好き」
御山君が言った。
「俺のが、だろ?」
御山君が少し僕を浮かせて、そしてまた奥まで咥え込んだ。
「もう・・・そうだよ、お父さんの太いから気持ちいいんだよ」
御山君の開き直ったような声。全部僕が聞いているのに・・・・・
「あいつはどうだった、若狭とした時は」
「誰だっけ?」
そんな話をアナルに、僕の口に突っ込まれながら普通にしている。
「ほら、俺の部下の。すごいデカいやつ」
「ああ、あの人。あれデカ過ぎ」
「でも、入ってたろ」
「きつきつだった」
(ふうん・・・)
そんな話をしながらセックスしている二人。御山君は気持ち良さそうにしていた。きっと今も気持ち良さそうな顔をしているんだろう。
(あんなに痛いのに・・・)
そして、その御山君のお父さんよりデカいのも入れられているような・・・しかも、相手は御山君のお父さんの部下の人で、その人としたことをお父さんは知っている。
「でも、よがってただろ、後ろは若狭、前は俺のを咥えこんで」
知ってるんじゃない。見てたんだ。一緒にしてたんだ。
(この二人って、ほんとにどうなってんだろ)
疑問が湧き上がる。昨日や今日の会話も、親子というより恋人っぽい。
(恋人?)
セックスフレンド・・・なのかもしれない。
「ん・・・」
なんて色々考えている間に、御山君の気持ち良さそうな喘ぎ声だけになっていた。僕の口には御山君のお父さんが出入りしている。たぶん、二人は抱き合い、キスし合い、そして入れて、入れられている。少し・・・心の奥がむずむずする。
(うらやましい)
いやいやいや、違う、そうじゃない。お父さんとセックスだなんてありえない。ほとんど無意識に心の中に浮かんだその言葉を僕の心は否定する。でも、本当にありえないんだろうか。御山君とお父さんは仲が良さそうだ。セックスのことさえなければ友達みたいな親子って感じ。
(でも、セックスが・・・)
そう。そうだ。あのことが・・・
「ああ、気持ちいい」
御山君がつぶやく。
(どんなふうに気持ちいいんだろ)
単なる好奇心・・・いや、興味があるんだ。僕も、できれば・・・たぶん、それが僕の本心だ。僕も、できればあの御山君みたいに気持ち良くなってみたいと思ったんだ。
それがきっかけだったのかもしれない。
御山君のお父さんのペニスが僕の口に出入りしている。そして、それが奥にきた時・・・僕の奥で何かが反応した。
体の奥がむずむずしていた。
いや、お尻の奥だ。
今の僕の体にはお尻はない。僕自身が御山君のお尻なんだから。
そんな御山君のお尻である僕の奥がむずむずしている。それはきっと、御山君のお尻の奥がむずむずしているってことなんだろう。
その感じが少しずつはっきりしてくる。体が何かゾワゾワするような感じ。思わず仰け反りたくなるような感触。いや、じっとしてられない。僕の体がビクッと動く。
(あっ)
「あっ」
僕と御山君が同時に声を上げた。もちろん、僕の声は出ていないけど。
「当たってるんだろ?」
御山君のお父さんの声がする。御山君のお父さんが御山君の、僕の中を突く。
(これが、気持ち、いいってこと?)
体の奥がジンジンしていて、御山君のお父さんの動きに合わせてそれが広がっていく感じ。それが身体中を熱くして、そして体が動く。
(ああっ)
「ああっ」
心の中で体が仰け反る。御山君も体を仰け反らせているんだろうか。少し、体重が後ろ側に移動した。
「もっと突いて欲しいのか?」
(もっと)
「もっと」
僕と御山君がシンクロしている。同じことを、同じモノを感じている。御山君のお父さんが早く、そして力強く打ちつける。
(ああぁ)
「ああぁ」
頭の中が真っ白になった。
(出るっ)
「出るっ」
心の中で僕は射精した。同時に御山君の体に力が入り、そして震えた。
御山君も射精したんだろう。
「ところてんは前にしたっけ?」
「初めてだよ」
御山君は横になっている。きっと、抱き合いながら横になってるんだろう。
(ところてん?)
「お前、今日はいつもより感じてたな」
御山君の答えは聞こえなかった。
「まだびんびんに勃ってるし」
ベッドで体が横になった。そのまま、また僕に御山君のお父さんのペニスが近づいた。
「二回目もところてんでいけるかな?」
そして、また僕は押し拡げられた。
(ああっ)
僕が拡がっている。そんな僕に御山君のお父さんが嵌まっている。入っているよりも嵌まっているっていう方が正しいように思う。この時そんなことを考えてたんじゃなくて、あとで思ったことだけど。
拡がった僕に御山君のお父さんが出入りしている。御山君の声が聞こえる。僕は御山君のお尻だ。ただのお尻で、お尻の穴が僕の口になっている。でも、今はその穴が塞がれている。僕の口を塞いでいるそのペニスはちょうどいい太さで、僕を刺激する。また身体の奥がむずむずし始める。僕にペニスが付いていたら、きっと思い切り勃ってるはずだ。たぶん、御山君も同じだ。御山君はあの時みたいな気持ち良さそうな顔をしてるんだろう。
(僕も感じてみたい)
僕が僕だったときには痛くて入らなかった御山君のお父さんのペニス。でも御山君には入っていた。御山君は気持ち良さそうにしていた。あの時はその気持ち良さというものがどういうものなのか理解できなかった。
それが今は・・・
(ああっ)
「ああっ」
僕の心の中の喘ぎ声と御山君の喘ぎ声が重なる。僕の気持ち良さが御山君にも伝わってる。いや、逆だ。
御山君が感じている気持ち良さを、僕も感じていた。御山君のお父さんに挿れられて、その拡げられている感じ、お尻の中のそのペニスの存在を感じている。身体の奥に湧き上がってくる気持ち良さを感じている。
(これが、御山君の感じてる気持ち良さなんだ)
だから、この二人は親子なのにセックスしてるんだ。御山君のことが理解できた気がする。
(ああ、気持ちいい)
心の中で僕は叫んだ。ここで何を言っても御山君には伝わらない。何を感じても御山君には伝わらない。だったら、今は何も考えず、今感じられるこの気持ち良さを最大限受け入れて、楽しんでしまえばいい。今の僕は御山君のお尻でしかない。心の中で僕は仰け反り、よがり、勃起させ、先走りを垂らし、そして・・・
(い、いく!!)
「い、いく!!」
僕の心の中の声と御山君の声が合わさった。また僕等は同時に射精した。もちろん実際にしているのは御山君だ。でも、僕も心の中で射精している。身体が震える。御山君も同じだ。感じたことのない気持ち良さ、絶頂感、達成感。僕はそれに身を任せた。
でも・・・
それは実際には御山君が感じたものだ。僕じゃない。僕には御山君が感じているのが伝わってくるだけだ。
御山君がうらやましいと思った。
(僕も、直接これを感じてみたい)
僕も御山君のお父さんのペニスを受け入れられるようになりたいと思った。
でも、あの痛みを思い出す。
(本当に入るんだろうか)
僕が、いや、御山君が射精した後も、僕の中に御山君のお父さんのペニスは入ったままだ。その存在を感じ続けてる。それがそこにあることが僕を、御山君を満たしていると感じる。それはそれが抜かれたとき、なんとなく寂しい気持ちになったことで証明された。
御山君の身体が動いている。前後に揺れている感じ。たぶん、御山君のお父さんのを口でしてるんだろう。どんな顔でしているのか僕は知りたかった。でも、僕はベッドに押しつけられているからそれを見ることはできない。
(きっと、それも気持ちいいんだろうな)
その感じは御山君の身体から伝わってくる。
(愛してるって、こういうことなのかな)
この二人。この親子。なぜこうなったのかは知らない。でも、この関係はきっと特別なもので幸せなことなんじゃないだろうか。僕に分かるのはそれだけだ。
やがて、御山君の身体の揺れが止まった。しばらくそのままで、そして僕の視界が開けた。そのまま部屋を出る。階段を降りて、たぶん洗面所に入る。そこで御山君のお父さんの身体が少し見えた。ペニスは萎えていた。
(さっき、御山君に口でされて、お父さんもいっちゃったんだ)
なんとなく胸が締め付けられる感じがする。
バスルームに入る。二人でシャワーを浴びる。お湯が僕にもかかる。御山君のお父さんの手が僕を撫で回すようにしてボディシャンプーで洗っている。
「ママ、いつ帰ってくるの?」
「たぶん、夕方には帰るだろうな」
「だったら、もう一回できるよね」
二人の会話が聞こえた。うらやましい。僕もしたい。僕も入れられたい。そんなことを強く思う。
(僕も、絶対できるようになってやる!)
御山君のお尻で僕は叫んだ。
「ん、なにか言ったか?」
御山君のお父さんが御山君に尋ねた。
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