(なにが・・・)
少年は、自分の中で起きている変化に戸惑っていた。
(なんだ、これ)
男達が出て行ったドアを見つめる。戻ってくる気配はない。
(どうなったんだ)
ペニスはさっきからずっと勃起している。
(僕は、一体・・・)
ペニスを握る。
「あっ」
それだけで体が跳ねる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息が荒くなっている。ペニスを扱く。
「ああ・・・なんだ、これ」
今度は小さくつぶやいた。
少し腰を浮かせ、股間を床に押し付ける。
「あっ」
体が震えた。全身に電気が流れたみたいだった。
「ふぅ」
息を吐く。また少し腰を浮かせる。そして、床に押し付ける。
「ああっ」
ぴりぴりと体中にその感覚が伝わってくる。
「き・・・」
口から出掛けた言葉を飲み込んだ。その言葉は言いたくなかった。しかし、腰の動きが止まらない。股間を床に押し付け、擦りつけ、その感触を全身で感じた。体の奧で何かがじんじんとしている。
(なんだ、これ)
それに戸惑う。体が熱くなっている。全身がピリピリしている。
「気持ちいい」
そう口走る。そう口走ったことに驚く。と同時にそれが心の声であることに気が付いた。
「されたい・・・」
つぶやく。心の中の何かが外れたような気がした。
「されたい」
(何を?)
まるで熱に浮かされているような感じだ。自分が自分で無くなった感じ。自分の中の何かに突き動かされる感じ。またペニスを握った。
「ああっ」
掴んだその手を上下させる。
「ああぁ」
ペニスからはすでに先走りが溢れていた。それがくちゅくちゅと音を立てる。
「ああ・・・され・・・たい」
(ダメだ、言うな)
理性が頭の中で言う。
「され・・・たい」
でも、止まらない。左手を股の間から尻の方に入れる。指をアナルに這わせる。びくっと体が跳ねる。
「あっ」
アナルに触れただけで全身に電気が走る。指でアナルを撫で回す。
(違う)
何かが違う。少年の本能が、体が欲しがっているものはそんなものではなかった。
(もっと・・・)
そう思った。そう思ったが、何をもっと欲しがっているのか少年自身も分からない。
(何か、もっと・・・もっと)
男達にされていたことを思い出す。アナルに指を入れてみる。
「くっ」
裂けたアナルに痛みが走る。
「ああっ」
と同時に少年の体が跳ねる。
「これ・・・」
胸の奥で何かが脈打つ。どきどきする。もっと奥まで入れる。痛みが増す。胸のどきどきも大きくなる。
(なんなんだ・・・)
しかし、少年は既に気が付いていた。
(僕は・・・どうなったんだ・・・)
少年の脳裏に男達にされたことが浮かぶ。まるで幽体離脱でもしたかのように、男達に犯されている自分の姿を上から見下ろしていた。ペニスが痛いほど勃起している。
(されたい)
息が荒い。心臓の鼓動が早い。体が熱い。ペニスを扱く手を止められない。アナルを指で触っているだけでは全然足りない。
「ああ・・・欲しいよ」
四つん這いになった。
「お尻に・・・入れて欲しい」
そうつぶやいた。
「入れて欲しい」
少し声が大きくなった。
「入れて欲しい」
ドアを見つめる。辺りを見回す。男達を探す。
「お願い、入れてください」
少年は叫んでいた。体が震える。
「誰か、誰かぁ」
大きな声で叫ぶ。しかし、ドアは開かない。
「だ、誰かぁ・・・」
少年は顔を床に押し付ける。そのままアナルに指を入れる。
1本・・・全然足りない。
2本でも足りない。
あの太いペニスを思い出す。引き裂かれるような痛みを思い出す。
(あれが欲しい)
また頭を上げ、巡らせる。男達を探す。男達を求める。四つん這いのままドアににじり寄る。そこでアナルに指を入れる。両手の指を2本ずつ入れる。その手で穴を開くようにする。
「はぁ・・・」
心臓の鼓動が大きく聞こえる。
「はぁ・・・」
体中が脈打っている。
「はぁぁぁぁ」
半開きの口から涎が垂れる。そして、ドアが開く音がした。
少年は体を起こし、ドアを見た。男達がドアのすぐ内側に並んで立っている。少年は彼等を見る。男達も少年を見ている。少年の勃起してビクビクと震えているペニスを見る。指を入れ、その指で開いているアナルを見ている。
少年は記憶を探る。どの男があの太いペニスの持ち主だったのか、思い出そうとする。
「どうだ、気分は」
「されたいです」
考える前に言葉が出ていた。
「そうか」
先程、少年を押さえ付けていた男が言った。そして、腕を組んで少年を見下ろす。少年は男を見上げる。開いた口から涎が垂れる。ドキドキしながら待つ。だが、男は何もしないし、何も言わない。
「されたいです」
もう一度少年が言った。
「ふうん」
男はそれだけ言う。
「あ、あの」
少年はその男ににじり寄った。
「入れて、欲しい、です」
そのまま顔を男の股間に擦りつける。
「さっき、どうして欲しいのか何も言わなかったくせに」
男が一歩下がる。
「ああ、あの、あの」
男を見上げる。そして口を開いた。
が、少年は何も言わなかった。心の、体の奧から湧き出てくるその言葉を飲み込んだ。男は少年を見下ろしている。少年は顔を伏せる。
「どうした?」
男の言葉が頭の上から降ってくる。
「どうされたい? どうして欲しいんだ?」
少年は俯いたまま、頭を左右に振る。
「そうか」
そして男は口を噤む。少年はその男を見上げる。またすぐに顔を伏せる。ペニスがビクビクと揺れている。その奧がじんじんと痛む。体が熱い。心臓の鼓動が激しい。手が震える。喉が渇く。唾を飲み込む。
「そうか。じゃ、そのままそこにいろ」
俯いた少年の視界の男の足が、向こうを向く。心臓がぎゅっと握りしめられたように痛む。誰かが部屋から出た。二人目も出ようとしている。
「はぁ、はぁ」
少年は荒い息をつきながら四つん這いになる。そのまま体の向きを替え、ドアの方に尻を向け、目をぎゅっと閉じた。
少年の中の何かがプツンと音を立てて切れた。いや、少年が自らの意思でそれを断ち切った。
「犯してください!」
大きな声で少年が言った。男達が立ち止まり、少年の方に振り向いた。
「なんだって? もう一度言え」
男が命じた。
「犯してください!」
再び、さっきよりも大きな声で少年は言った
「犯してほしいんだとさ」
男達が笑う。
「そうなのか?」
別の男が少年の前に回り込み、しゃがんで言った。
「はいっ」
少年は大きな声で返事をする。
「俺の顔を見ろ」
男が言う。少年は四つん這いのまま、顔を上げた。
「もう一度言ってみろ」
「僕を、犯して下さい!」
男の目を見て少年は言った。
「お願いします」
そのまま頭を下げ、床に額を付けた。
「よく考えろよ」
男が少年の頭を撫でた。そして、その手で少年の顔を上げさせる。
「それはお前の本心か?」
顎を掴む。
「お前の心からのお願いか?」
「はいっ」
少年は大きな声で答えた。その口の端から涎が垂れた。男が少年の頬を平手で打った。
「うぐっ」
痛み。いや、違う。打たれた頬からぴりぴりとした何かが体に拡がる。
「はぁ・・・はぁ・・・」
男を見る。顔が、体が熱い。
「ほら、どうされたいんだ?」
もう一度男が少年の頬を打つ。パンっという音が部屋に響く。
「ああっ」
声が出た。また頬を打つ。さらに打つ。何度も男が少年の頬を平手打ちにした。
「ああぁ」
少年は男の前に顔を差し出す。ペニスが勃起したままビクビクと揺れている。
「もっと・・・」
男に求める。
「もっと、ください」
その痛み。その興奮。その快楽。
男がまた頬を打つ。
「ああっ」
それが体中に広がる。
「立て」
男が命じる。部屋の真ん中を指差す。少年はそこに立つ。男が鞭を握る。少年は少し怯えた。だが、その目の奧には、何かに恋い焦がれるような色が浮かんでいる。
「そら」
少年の背中で鋭い乾いた音がした。床に血が飛び散る。その鞭は簡単に少年の背中から皮膚をむしり取る。
「ああぁ」
そんな声を上げながら、少年は床に倒れ込んだ。
「立て」
命じられるままに、また立ち上がる。ペニスは勃起し続け、先走りが床まで垂れている。男はゆっくりと鞭を扱く。それを目で追う。男が鞭を振り上げる。ペニスがビクッと揺れる。
「欲しいのか、鞭」
少年は鞭を見つめるが、何も言わない。
「欲しいのか?」
もう一度男が尋ねた。
「欲し・・・い・・・と思い、ます」
少年が答える。男が少年を見つめる。目が合う。その少年の目は少し曇っているように見える。
「欲しいのか、欲しくないのかどっちだ?」
男がまた尋ねる。
「そ、それは・・・」
少年が顔を伏せた。ペニスが脈打つように跳ね上がる。
「お願いです、鞭、下さい」
声が少し震えていた。それは興奮なのか、それとも怯えているのか。男が鞭を振り上げた。そして、今までより少し強めに少年の体に打ち付けた。
「ぐはっ」
少年が大きく蹌踉け、床に倒れ込んだ。血が飛び散る。
「うぅぅぅ」
呻き声。顔は苦痛に歪んでいる。が、ペニスは勃起したまま揺れている。
「痛いのか、気持ちいいのかどっちなんだ?」
少年が少し驚いたような顔で男を見上げた。
「そ、それは・・・」
顔を伏せた。
(なんだ、これ)
急に湧き上がった感情。いや、もっと深い、奧の方にある何か。
「痛いけど・・・」
それは確かだ。今も背中はズキズキしている。
「けど?」
男が尋ねた。
「けど・・・・・」
ズキズキしている。でも、それは背中だけじゃない。背中のそのズキズキが心臓の鼓動と同期している。そして、ペニスもそれに合わせて揺れている。少年は手を顔の前に持ち上げた。その手も小さく震えている。
「ピリピリして、じんじんして・・・」
そして、少年は気が付いた、自分が求めているものに。
顔を上げる。立ち上がる。
「気持ちいいです」
そういったとたん、鞭が少年を打つ。また蹌踉ける。が、今度は倒れない。2回、3回と背中を打たれる。
「うぐっ」
痛み。背中の激しい痛み。でも、それと同時にペニスの奧の方で、何かがまるで深呼吸するかのようにゆっくりと脈打っている。
「はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息をしながら男を見る。目が合う。
「お願いします」
少年は懇願する。
「もっと・・・」
少年の背後から、別の男が彼を羽交い締めにした。男の体が背中に触れる。背中の傷が擦れ、痛む。その感触がぴりぴりと彼の体に広がる。
「ああっ」
それは呻き声なのか喘ぎ声なのか、少年自身にも分からなかった。
手枷で宙吊りにされた少年の体に何度も鞭が飛ぶ。鞭の合間に男達のペニスが少年のアナルを襲う。
「ああ・・・」
混濁しかけた意識の中で少年はそれを気持ちいいと感じていた。あの、痛みしかなかった行為が、今、少年の体に快楽となって押し寄せている。
背中に鞭の痛みが走る。少年の体が揺れる。体の奥でむくむくと気持ち良さが広がる。誰かがアナルに入ってくる。アナルの痛み。少年は体の中で男のペニスを感じていた。痛みと共に広がるその熱さ。そして、その快感。
「もっと」
少年の体が痛みを渇望している。
「もっと下さい!」
手枷の痛みも気持ちいい。背中の痛みも気持ちいい。アナルの痛みも気持ちいい。
「もっと・・・」
鞭が飛び、少年の体が揺れる。
「もっと・・・」
血が滴り落ちる。それは背中だけではなく、アナルからの血も混ざっている。
「もっと・・・」
それでも少年は求め続けていた。
「もっと・・・もっと、痛いのを・・・もっと気持ちいいのを・・・・・」
男達が顔を見合わせた。
「話には聞いていたが、これが副作用ってやつか」
床に下ろされ、横たわっている少年の髪の毛を掴み、その顔を見ながら男が言った。
「想定以上だけどね」
別の男がクリップボードを手に答える。
少年のペニスはまだ勃起し続けている。が、すでに8回は射精し、その後も20回はイっていた。
「もっと・・・」
部屋には少年の血があちこちに飛び散っている。背中はずたずたに引き裂かれ、アナルは巨大なディルドが抵抗なく入る程度に引き裂かれていた。
「う〜ん、完全にイってるね」
クリップボードの男が少年のまぶたを捲り上げて目を覗き込んだ。
「通常のピーク時の300倍くらい分泌されるだろうって予想だったけど、ひょっとしたらその倍くらいは行ってるんじゃないかな」
手を離すと、少年の頭が床でごとっと音を立てた。
「こんな物が、300万人くらいの頭に埋まってるんだからね」
少年の頭を撫でる。
「なんで公表しないんだ?」
「そんなことするわけないでしょ、政府崩壊しちゃうよ」
少年は床でぼんやりと男達の会話を聞いていた。震える手で、痙攣する体で、勃起したペニスを扱き続けながら。
その実験は、数日間続けられた。
そして、唐突に終了が宣言され、あの機械が部屋から運び出された。
少年は治療を受け、2週間ぶりに解放された。
彼の身に何が起きたのかは、誰も何も教えてはくれなかった。
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