その施設では、廊下に沿って部屋が並んでいた。その部屋の一つに、玉城遼と三廻部健斗は収容されている。施設には監視のための職員が24時間常駐していたが、直接彼等を監視する監視員は、その廊下の端に一人いるだけだ。
彼等異常行動者への国や行政の対応は遅れていた。状況は悪化の一方だったが目立った施策も打ち出されず、ただ、彼等は施設に収容されるだけだった。
彼等の置かれている状況は、益々悪くなっていった。
つまり、彼等は施設に閉じ込められた後、放置されていた。
だが、玉城遼はほんの少し、理性を取り戻していた。
都会の病院で男達に犯されていたことが、彼の衝動を一時的に落ち着かせたのかもしれない。彼はその衝動を体の奥に抑え付け、なんとかそれをこらえることが出来るようになっていた。
特に、この施設に移されてからは、その衝動が幾分少なくなった気すらしていた。もちろん衝動が治まった訳ではない。が、彼は自制することが出来ていた。
いや、出来ている気がするだけだったのかもしれない。
UHHVAは新しいインフラとして定着していた。が、このようなインフラの常として、まず都心部からスタートし、徐々にそのエリアは拡張されていった。が、UHHVAは国の後押しもあり、そのエリア拡大スピードは、従来の通信インフラと比較すると、遙かに早かった。
ほんの数ヶ月で、UHHVA通信エリアは国内のあらゆる地域をカバーするに至っていた。
玉城遼と三廻部健斗が収容されている施設がある地域でも、UHHVA通信が可能となった。
それは、ある夜に起きた。
水の中にいる夢を見た。玉城遼は渦に飲み込まれ、その渦が体の中に入り込み、血液となって全身を駆け巡っている。そのぞわぞわとした感覚。それで目が覚めた。
「うう」
体中がぴりぴりする。手のひらで腕を擦る。ぞわぞわとした感覚が拡がる。勃起していた。ズボンの生地にペニスが擦れ、それが彼を責めたてる。
「ん」
ズボンの上から陰茎を押さえる。久しぶりの感覚。あの嫌な感覚。
嫌なんだろうか。その欲求。体の、心の奥から溢れる衝動。同時に押し寄せる不安。
「はぁ」
大きな溜め息を吐く。もぞもぞと体を動かす。体が床に擦れるだけで全身がじんじんする。
「起きてるか?」
声がした。荒い息が耳元に聞こえる。
「うん」
玉城遼は答えた。すると、三廻部健斗が彼の手を掴む。
「ヤバい・・・なんか・・・体がヤバい」
三廻部健斗が言った。玉城遼はほんの少し安心する。
「僕も・・・あの時みたい」
少しの間、二人の荒い息使いだけが聞こえた。三廻部健斗の手が、玉城遼の股間を覆った。
「ああっ」
玉城遼は、思わすその手に股間を押し付ける。体の上に三廻部健斗が覆い被さってくる。
「遼」
(そう呼ばれるのは初めてだな)
なんとなくそんなことが頭をよぎる。が、体は、本能は三廻部健斗の口に口を押し付けていた。
「はぁ」
「ああ」
口を押し付け合い、溜め息を漏らし合う。三廻部健斗が股間を玉城遼の股間に押し付けてきた。堅いあの部分の感触。お互いにぐりぐりと押し付け合う。
「ああっ」
玉城遼が大きな声を上げる。
「ああっ」
どこかから声が聞こえた。激しくキスを交わし、体を押し付け合いながらも聞き耳を立てる。この施設の中のあちこちでその声が上がっている。一瞬、三廻部健斗が顔を離して玉城遼を見た。
「他の奴等も同じみたいだ」
また口を押し付ける。玉城遼も押し付け、舌を入れる。それを吸われる。三廻部健斗の舌が入ってくる。それに舌を絡める。ペニスが押し付けられる。押し付け返す。手を三廻部健斗の背中に回す。
「ああ、健斗」
一瞬、三廻部健斗の動きが止まる。
「初めてそう呼ばれたな」
そう言いながらまた股間を押し付けてくる。
「健斗もさっき、遼って呼んだから」
健斗が口を離す。その少し開いた口から唾液が滴る。遼がそれを舐め取り、すすり上げる。また口を押し付け合う。股間を押し付け合う。抱きしめ合う。
「もう我慢出来ない、いいだろ?」
遼は頷く。健斗が遼の服を剥ぎ取り、自らも上半身裸になる。そんな健斗に今度は遼がのしかかる。遼が上になって口を押し付け、片手で健斗のズボンをずり降ろす。
「ああっ」
健斗が遼のペニスを掴む。
「あの、ネットで見たちんこ」
耳元でそう言われる。
(そうだ、僕のはもう見られてるんだ)
遼は体を起こして健斗のペニスを見た。そして、息を飲んだ。
「太い」
健斗のペニスは太かった。あの、まだ映画の撮影に入る前に遼を犯した男達の、あの太いペニスを思い出した。すぐに遼はそのペニスにしゃぶりついた。
「あっ」
健斗が遼の頭に手を添える。遼はその太いペニスを口に頬張り、頭を動かす。
「ああ、ヤバい」
遼の体の下で、健斗が体を捻る。そのままシックスナインの体勢になる。
「あっ」
健斗に咥えられ、遼は喘ぐ。
「あっイくっ」
二人とも、あっけなくお互いの口の中で射精した。
二人の動きは止まらなかった。
口の中の遼の精液を飲みながら、健斗は遼の足を持ち上げた。
「ああ、舐めてっ」
遼に言われなくても健斗はそのつもりだった。開いた足の間に頭を入れる。遼のアナルが見える。そこに舌を伸ばす。
「ひっ」
遼が声を出す。
(まるで、歓声みたいだな)
そう思いながら、健斗はその部分に舌を這わせる。
「ああっ」
遼が体を仰け反らせる。健斗は遼の足をしっかりと押さえながら、ゆっくりと、丹念にアナルを舐め回す。目の前の遼のペニスから、先走りがだらだらと垂れている。
「遼、すごいよ」
それは先走りについてだけではない。キスした時の反応、フェラチオしたときの反応、アナルを舐めた時の反応、それら全てを凄いと感じていた。
「健斗も・・・すごい」
そう言いながら、遼の手が健斗のペニスを弄った。
「太いから?」
遼は答えなかった。
「指入れるよ」
健斗が言う。遼の答えを待たずに指が入ってくる。
(そういえば、健斗ってどっちなんだっけ?)
今までの行為からタチだと思い込んでいた。が、それは正しいんだろうか?
「健斗って、入れる方?」
「両方。今は入れたい」
その答えを聞いて、遼は健斗に抱き付く。
「入れて」
「もうちょっと拡げてから」
その答えになんだか慣れたものを感じる。
「入れたことあるの?」
「ああ」
指が増える。
「大丈夫だよ、僕もいっぱい入れられたから、健斗の、入るから」
健斗が遼の顔を見た。
「分かった。じゃ、もう少し舐めさせてよ」
遼のお尻を持ち上げ、顔を埋める。
「ああっ」
遼の体に電気が走る。健斗にアナルを舐められながら、体を仰け反らせる。
「気持ちいいよぉ、健斗ぉ」
そう口走る。健斗は遼のアナルを舐めながら、目を遼の顔に向ける。目が合う。
「入れて欲しそうな目してる」
健斗が少し笑って言う。
「だって、入れて欲しいんだもん」
遼も笑う。
「じゃ、入れてやるよ」
健斗が上半身を起こして遼ににじり寄る。
「入れてください」
一瞬、健斗があの男に見えた。太いペニスを持った、あの男に。
遼の中に健斗が入ってきた。
「ああっ」
アナルを犯されるのは、それほど久しぶりじゃない。前の病院で毎日犯されていた。それなのに、遼の体に何かが渦巻いた。快感なのか、満足感なのか、充足感なのか。遼には今、自分を満たしているものがそのどれなのか、あるいはそれ以外のものなのかが分からない。ただ、入ってくるそれを、体中で感じた。
「ああっすごい!」
入った瞬間から、体が震えた。ペニスも打ち震え、悦びの先走りを垂らす。
「入ってる!」
焦点の合わない目で健斗を見る。
「まだ先っぽだけだ」
健斗が遼の肩を押さえる。
「ゆっくり入れられるのと、一気に入れられるの、どっちが」
「一気に奥まで入れて」
健斗の言葉を遮るように遼が言う。
「分かった」
健斗が少し笑う。一気にペニスを遼の奥に押し込んだ。
「ふああっ」
遼の体がガクガクと震えた。
健斗も遼のアナルの中を感じていた。その包まれる感触、暖かさ、締め付ける強さ。どれもが久しぶりだった。健斗の体もその感触に打ち震えた。
(ヤバい、イくっ)
遼に入れた瞬間から、一気に絶頂に向かっていた。
「ああっ」
「イくっ」
二人同時に叫んでいた。遼のペニスが大きく跳ね上がり、精液を噴き出した。健斗は遼の体を強く抱き締めた。あまりの気持ち良さに夢中になっていた。遼の背中に健斗の指の爪が食い込んだ。
「ああっ」
遼は上半身を仰け反らせる。その痛みが快感になる。またペニスが跳ね、精液が噴き出す。
そのまま体を戻し、さらに健斗を押し倒す。床に仰向けに倒れ込んだ健斗の上で体を揺らす。
「ヤバっ、イくっ」
そのまま健斗も射精する。これで二人とも2回ずつ。挿入してから3分も経っていない。健斗が、挿入した時と同じように一気に遼からペニスを引き抜いた。
「ほら、舐めて」
勃起し続けているペニスを遼の顔に近づける。遼の開いた口の中にそれを入れると、舌が絡みついてくる。
「ああ、気持ちいい」
健斗が腰を使う。ぐぽぐぽと音がする。遼の口に根元までペニスを差し込んで、そのまま押し付ける。
「ああ・・・」
遼の喉仏が動く。
「ぐほっ」
遼が咽せ、液体を吐き出す。
「ちゃんと飲めよ」
健斗が遼に向かって言う。
「いきなりは無理」
そう言いながら、遼は健斗のペニスを再び口に含む。
「じゃ、今度は全部飲めよ」
健斗が放尿する。遼の喉仏が上下する。
「あの玉城遼が、俺のおしっこ飲んでる」
そのまま顔面に腰を押し付ける。
「んごっ」
喉でペニスを受け入れる。そのまま健斗が腰を動かす。
「ごぼっ」
遼が苦しそうな声を出す。が、ペニスは勃起したままだった。
それから数時間、二人は食事を挟んでセックスし続けていた。食事を運ぶ職員の前でもセックスを止めることが出来なかった。職員はそんな二人を見ても何も言わない。それほど、どの部屋でも同じようなことが行われていたということだ。
食事が終わり、夜になり、就寝時間となった。
ようやく二人は体を離し、床に座り込んだ。まだペニスは勃起している。が、少し硬さはなくなっていた。二人は無言で見つめ合う。そのまま顔を近づけ、キスをする。遼は健斗に抱き締められ、そのまま横になった。
「もう、出ない?」
遼が尋ねた。
「まだイけると思うけど・・・まだやり足りない?」
遼はこくっと頭を上下させる。
「でも、今は疲れた」
「だね」
遼が健斗の横でうつ伏せになった。健斗の腕を引き寄せ、それに頭を乗せる。
「実は甘えん坊なんだ」
遼は何も答えない。健斗はうつ伏せになった遼の背中に手を這わせる。しばらく、二人とも何も言わなかった。
「これ、聞いてもいい?」
健斗が口を開いた。指で遼の背中の、あの鞭打ちの傷痕をなぞっていた。遼は健斗の腕の上で頷き、言った。
「鞭打ちされた痕」
健斗が少し体を起こして、その傷痕を見る。
「痛くないの?」
「今はもう全然」
まるであみだくじを辿るように、指でその傷を辿っていく。
「酷い・・・」
顔をそこに寄せて、傷痕にキスをする。
「ごめん、背中、汚くて」
「汚くはないよ。ただ・・・」
健斗が唾を飲み込んだ。
「こんな・・・ことを・・・」
健斗が立ち上がる。遼の足を開かせ、その間に座る。背中を見下ろす。
「映画の撮影に入る前、しばらく誘拐されてたんだ」
「え、そんなことあったの?」
「うん。で、その時に」
健斗の両手が遼の背中を這い回り、指が傷痕をなぞる。
「その時、犯されて、鞭打ちもされて」
「そうか」
健斗が遼の背中に覆い被さり、傷痕に頬ずりする。
「縛られて、吊り下げられて鞭打ちとか・・・」
「そうか・・・」
遼のお尻の辺りに、熱い物が当たる。
「鞭打ちか・・・」
健斗が遼の両脇に手を付いて、上半身を起こした。熱く堅い物が遼のアナルに入ってきた。
|