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10

俯せになった遼のアナルを、健斗が激しく犯していた。パンパンと大きな音がし、その音がする度に、遼の尻が波立つように揺れる。
「気持ち、いい」
遼は喘ぐ。疲れ果てた筈の健斗にアナルを貪られる。背中を平手で叩かれ、尻を叩かれ、頭を床に押し付けられる。
「遼、お前を・・・」
それを何度も繰り返す。が、その先は言わなかった。のしかかるようなセックス。ただ、遼を使う、そういう感じのセックス。
それでも遼は気持ち良かった。あの、痛みも何もかもが気持ち良くなった瞬間を思い出した。あれと似ている。でも、少し違う。あの時は全てが気持ち良くはなったけど、それを受け入れてはいなかった。今は健斗を受け入れている。健斗のすること全てを受け入れている。
「お前を・・・」
健斗がそう言いながら、遼の首に手を掛けた、
「お前を・・・」
その手に力が入り、首を絞められる。
「うう」
遼が呻く。が、首を絞める力は強くなる。
「お前を・・・」
「あがっ」
苦しい。意識が遠のく。それでも、首は絞められ続ける。



遼は体を起こした。
周囲を見る。向こうの壁際の隅に、健斗が背中を向けて横になっている。遼は無意識に首の辺りに手を当てていた。
(そうだ、犯されながら、首絞められたんだ)
アナルに指を当ててみる。ぬめっとしている。その指の匂いを嗅ぐ。精液の匂い。
(首絞めながら、出したのかな)
たぶん、そうだろう。
(僕は首を絞められ、意識を失ったんだろうな)
健斗の背中を見る。
(睡ってるんだろうか)
近寄ってみようかと思ったが、止めておく。また健斗の裸のままの背中を見る。お尻を見る。足を見る。ペニスが勃起する。右手でそれを握る。
あの、首を絞められた時のことを思い出す。
(なんで、首を絞めたのかな)
首に左手を当てる。健斗の手の感触。その温度。ペニスを握った手がゆっくりと動き始める。
(僕を殺したかったのかな)
手の動きが少し速くなる。くちゅくちゅと音がする。アナルに指を入れる。その指で中をかき回す。指を抜き、匂いを嗅ぎ、舐める。
(健斗に掘られて、殺されそうになったんだ)
そういえば、健斗は遼のことは知っていた。俳優で、あの映画に出ていて、あのイベントで痴態を晒した、ということを。でも遼は健斗のことはほとんど何も知らない。授業中にオナニーしたとか、友達を押し倒したって聞いただけだ。
(僕は、犯されて、犯されることが気持ち良くなって、犯されたいって思うようになったけど)
健斗の背中を見る。
(あいつは、どうしたいんだろ)
息が早くなっている。
(僕の首を絞めて、気持ち良くなるのかな?)
溜め息が出る。いや、喘ぎ声だろうか。
(僕はあの時・・・)
「んっ」
遼は射精した。その日、いったい何回目だろう。それでもかなりの量の精液が飛び散る。
(あの時、気持ち良かった・・・たぶん)
手についた精液を舐め取り、健斗に背中を向けて横になる。
(僕を殺そうとしたんだろうか)
目を閉じた。すぐに寝息を立て始めた。



夢。
あの時のことを夢に見ていた。
背中を鞭で打たれる。気持ちいい。
アナルを太いペニスで犯される。気持ちいい。
そして、男が遼の首を両手で締める。苦しい。
どんどん首を絞める力が強くなる。苦しい。
男を見た。違う。健斗だった。健斗が僕を奪う。僕の命を奪うんだ。気持ちいい。
気持ちいい。
気持ちいい。
アナルが気持ちいい。
体が揺れている。
気持ちいい。
抱き締められている。
気持ちいい。
誰かの体温が、気持ちいい。

目が覚めた。アナルに健斗が入っていた。
「ああっ」
目が覚めて最初に出したのが喘ぎ声だった。健斗が遼の背後からアナルを犯していた。ペニスは健斗に握られ、勃起している。遼は首を捻り、健斗を見る。キスをする。そのまま四つん這いになって後ろから腰を打ち付けられる。パンパンと音がする。
「気持ちいい」
頭を床に押し付ける。手を、自分のペニスを握っている健斗の手に添える。
「気持ちいいよ」
喘ぐ。健斗は何も言わない。荒い息を吐きながら掘り続ける。そのまま掘り続けられる。
ドアが少し開いた。いつのまにか、朝食の時間になっていた。ドアの隙間からトレイに載せられた朝食が差し入れられる。同時に声がした。
「お前等、ホント、好きだな」
ドアが閉まる。
「そうだよ。大好きだ」
遼が閉まったドアに向かって言った。

健斗が遼の中で射精したところで、一旦二人は朝食を取ることにした。
「朝から気持ち良かった」
食事をしながら遼が言う。
「裸で寝てるの見てたら、抑えられなくなって」
健斗が少し照れくさそうに言った。
「でも、朝一で中に出されて嬉しい」
すると、少し健斗が目を逸らした。
「2回目なんだけど」
小声だった。
「え?」
「今日2回目。一回目は遼が寝てる間に出した、中で」
「それって・・・掘られても僕は起きなかったってこと?」
すると、健斗が頷いた。
「マジかぁ」
大げさに驚いて見せる。
「さすが遼だなって。掘られても平気って」
「うん・・・まぁ、そうかも」
朝食を食べ続ける。
健斗があのことに触れないようにしていることは分かっていた。
「昨日、さ」
しかし、遼はそれを確かめたかった。
「うん」
「僕の首、絞めたよね」
健斗が俯いた。
「うん」
少し間を置く。
「気持ち良かった?」
健斗からの答えもしばらく経ってからだった。
「うん」
「どんな風に?」
遼は、質問を畳み掛けるべきじゃないだろうとは思っていた。でも、今聞かないと、今言わないともう言う機会がなくなる気がする。
「訳分からなくなるくらい、興奮した」
「そっか」
そして、黙る。しばらく経って言う。
「良かった」
健斗が顔を上げた。
「僕も気持ち良かった」
遼の言葉を聞いて、意外そうな顔をする。
「なぜ、僕の首を絞めたいって思ったの?」
健斗は少し考えた。
「良くは分からないんだけど・・・俺・・・」
遼は答えを待つ。
「俺、遼が欲しかったんだと思う。遼の全て、奪いたかった・・・のかも」
健斗のペニスが勃起しているのに遼は気付いていた。
「僕を奪いたかったのか・・・」
遼のペニスも勃起していた。
「嬉しいな」
それから二人は無言で朝食を食べ続けた。

朝食が終わっても、すぐには行為には至らなかった。二人は全裸のまま、向かい合って座っていた。
「前にも言ったけど、しばらく誘拐されて、犯されて、鞭打ちとかされてた」
健斗は遼の顔を見ていたが、何も言わない。
「そしたら、急に、そういうのが気持ち良くなった」
遼がふぅっと息を吐く。
「僕、Mになったんだと思う。だから、首絞められたときも、たぶん、気持ち良かった」
まだ健斗は何も言わない。
「あのイベントで、あんなことになったのも、今にして思えば良かったんだと思う」
健斗が少し怪訝そうな顔をした。
「あれで僕の俳優生命は終わって、こういう所に入れられて」
遼が立ち上がり、健斗の横に座る。
「健斗と出会って」
手を握る。
「良かったって思ってる」
「お前、打たれ強いんだな」
健斗がようやく口を開いた。
「鞭が気持ちいいくらいにね」
二人は笑った。
「だから・・・健斗に奪われるなら、きっと気持ちいいと思うんだ・・・僕の全て」
遼は健斗の顔を見た。
「だからさ・・・昨日みたいに、僕を好きにしていいよ」
すると、健斗が小さな声で言った。
「嫌だ」
そして、遼の顔を見る。
「昨日、夢中で首絞めて、遼が動かなくなったとき、めちゃくちゃ興奮して気持ち良くてイっちゃった・・・けど、その後、遼が死んだんじゃないかって凄く怖くなった」
今度は健斗が遼の手を握った。
「気を失ってるだけって分かって凄くほっとした。でも、怖かった。遼を・・・」
遼を引き寄せて抱き締めた。
「遼を失ったかもしれないって怖かった。俺は遼を失いたくない」
二人は顔を近づけ、キスをする。
「たぶん、俺、お前が好きだ。だから、お前の全てを奪いたい。でも、殺したくはないから」
遼が健斗の前にしゃがみ込み、ペニスをしゃぶり始めた。健斗は何も言わすにしゃぶられる。
「気持ちいい」
遼が一瞬顔を上げ、笑顔になる。フェラチオを続ける。
「気持ち良くなったら、また、首絞めるかも」
すると、遼が手探りで健斗の両手を握る。それを自分の首に当てる。顔を上げ、自分の両手を背中に回した。
「いいよ。なにされても」
笑顔になる。
「お互い、遠慮はしないってことで、ね」
体の向きを変え、勃起した健斗のペニスの上にしゃがみ込んだ。



「もし、ここから出られて自由になったら・・・」
数時間のセックスの後、横になった健斗が言った。
「俺のものになってくれる?」
「それって」
遼は健斗を見た。
「健斗と付き合うってこと?」
「そう・・・かな」
遼は笑う。
「鞭打ちとかしてくれる?」
健斗は頷く。
「もっと酷いこととかするかも」
遼は笑顔になった。
「楽しみ」
キスをした。

「ここから出る、か」
遼がつぶやいた。
「意外と簡単かもしれない」
健斗が言った。
「だって、監視はあいつ一人だけみたいだし」
ドアの外を顎で示す。
「ドアの鍵さえなんとかなれば」
「でも、他に監視とか警備の人がいるでしょ」
「でも、何人もいるなら、ここの監視だって一人だけってことはないんじゃないの?」
遼は頷いた。
「だから、部屋から出られさえすれば、けっこうなんとかなりそうな気がする」
「でも」
遼が言う。
「もし、捕まったら?」
「捕まって、なにかマズいことある?」
(確かに。捕まって部屋に連れ戻されても今と一緒なだけだ)
そう思ったが、一つ思い浮かぶ。
「健斗と引き離される」
「それは困る」
健斗が唸るように言った。
「考えないとな、俺達の将来のために」
遼を押し倒した。

その日は敢えて、ドアの近くでセックスした。
遼がドアに手を突き、その後ろから健斗がアナルを犯す。体を遼に押し付け、遼は自分の体をドアに押し付ける。ドアの小さな窓に顔を押し付け、そこで喘ぐ。
「ああ、気持ちいい」
いつもより大きめの声だ。
「もっと、もっと突っ込んで」
声を張り上げ、窓から外を見る。監視員が視界の隅に入る。
「ああ」
また声を上げる。監視員が近づいて来る。
「もっと・・・もっと突いて」
監視員がドアの外に立った。
「ああ、気持ちいいよぉ」
喘ぎながら、ちらちらと監視員を見る。監視員は珍しいものを見るかのような目で、遼を見ている。
「もっと・・・」
顔を突き出し、キスをせがむ顔をする。
「この、淫乱が」
監視員がドアを蹴飛ばした。
「犯して・・・ください」
監視員を見ながら言う。
「もっと掘られたいんです」
監視員が値踏みをするような目で、遼を見た。
「ふん」
そして、離れて行った。


      


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