目が覚めた。いつの間にか、俺は全然知らない所にいた。
真っ暗な部屋、でも、なんとなく俺の部屋よりもはるかに広いってことが分かる。少し空気が冷たい。
(これは・・・夢だな)
夢の中で、夢を見てるってことを自覚していた。何かが起こるのを予測して、俺は動かない。でも、何も起こらない。
(変な夢だな・・・)
ただ暗い部屋の中で俺はベッドに寝ている、それだけの夢。そういや、ベッドも俺のベッドじゃない。硬くて、小さいベッドだ。
ふと、何か小さな光が見えた。それが少しずつ大きくなっていく。
(ああ、何か近づいてきてるんだ)
夢の中だからか、不安や恐怖は感じない。やがて、その光の向こうに人の顔が見えた。
守だった。
「何でお前が俺の夢に出てくるんだ?」
夢の中なのに、少し腹が立つ。
(そうだ、これは夢なんだ。だったら、何してもいいってことだ)
俺はベッドから降りて、守を殴ろうとした。
でも、何かに腕を掴まれた。もう一方の手も一緒に背中で何かに掴まれている。
「なんだよ、離せよ」
俺は暴れた。でも、その何かはがっちりと俺の腕を掴んだまま、まったく動かなかった。
「今日、教室で僕が何を言っていたのか、知りたい?」
守が俺の耳のすぐ横に顔を寄せて言った。
「守のくせにえらそうに。手を離せ」
すると、守が俺の鼻をつまんで言った。
「えらそうに、馬鹿慶太のくせに」
ムカついた。俺は守の腹に思いっきり蹴りを入れた・・・つもりだった。でも、足が動かなかった。
「無駄だよ」
守は笑っていた。笑ったまま、俺の頬を平手で打った。
「僕はね、今日、サンタさんにお願いしてたんだよ。1日中ずっとね」
「キモっ。サンタなんかいねぇんだよ」
所詮、守は守だ。頬を平手打ちされても、ほんの少ししか痛みを感じない。
「いるよ、サンタさん」
守が言った。いつもと違って、まっすぐ俺の目を見ている。普段は俺達の顔をまともに見ようともしないのに。
「ねっ」
守が俺の後ろの何かに向かって言った。
「Ho Ho Ho」
後ろから笑い声がする。聞いたことはないけど、何となくその声の主が想像できる声だった。そして、俺の手を掴んでいた何かが俺の前に姿を現した。
赤い服に赤い帽子、そして白いひげ。典型的なサンタクロースだ。
「馬鹿か。どうせ誰かがサンタの服着てるだけ・・・」
それ以上言葉が出なかった。太い腕が俺の腹にめり込んでいた。
「僕の許可無くしゃべると、サンタさんが罰を与えるからね」
守は相変わらず笑顔のままだった。笑顔のまま、サンタクロースの横に並んで立っていた。
「馬鹿か、お前」
言い終わったとたん、また腹に腕が。俺は腹に手を当てて、しゃがみ込んだ。
「Ho Ho Ho」
サンタクロースが俺の髪の毛を掴んで体を引きずり上げる。赤ら顔のサンタの目も笑っていた。ただ、その目の光は冷たかった。
「僕は今日1日、サンタさんに馬鹿慶太を殺して下さいってお願いしてたんだよ」
俺は守の顔を見た。さすがにサンタから3発目のパンチを食らいたくはなかったから、何も言わない。
「そしたら、サンタさんが僕の願いを叶えてくれるって」
守は楽しそうだ。今まで見たことがないような笑顔だった。
「ただ殺すんじゃないよ。今までいろいろされたから」
サンタは俺の後ろに回る。軽く足を俺の足に掛け、また手を背中で掴む。
(さっき蹴ろうとして足が動かなかったのも、こいつが足を掛けてたからか)
さすがに夢の中だといろいろ起こるものだ、なんて思った。
(でも、さっきの平手打ち、少しは痛かったのに)
夢では痛みは感じないなんてのは嘘なんだろうか、なぜかそんなことを考える。そして、そんなどうでもいいことを考えている間に、俺の手足が縛られていた。
「さぁ、どんなことしようかな」
サンタが部屋の向こうに行く。暗い部屋の中で、サンタの姿がほとんど見えなくなる。でも、すぐにワゴンを押しながら戻ってくる。
「これ、最初ね」
守がワゴンにあった鞭を振り上げた。サンタがワゴンを押して俺から離れる。風を切る音がした。
「いっ!」
鞭が俺の体に当たった瞬間、体を引き裂かれるような痛みを感じた。
「Ho Ho Ho」
サンタが笑う。そして2発、3発、4発・・・俺は痛みで息もできなかった。
「どう、痛い?」
守が手を止めて俺に尋ねるまで、何発鞭打たれたのかわからない。
「い、痛いに決まってんだろ」
普段ならたぶん、痛い訳ないとか何とか強がるだろう。でも、これは俺の夢の中なんだから・・・
「そうだよね。でも、こんな痛みなんて、僕がされたことに比べたら・・・」
守が隣に立つサンタにお願いした。
「じゃ、脱がせて下さい」
サンタが俺の服を強引に引き裂き、あっという間に俺は守とサンタに全裸を晒した。
「なんだ、馬鹿慶太のって小さいんだ」
守が笑った。
「Ho Ho Ho」
サンタも笑う。確かに、俺のは小さい。学校で守の服を脱がせたときに気付いていた。守のより、小さいって。
「こんな小さいの、恥ずかしい」
守が俺のちんこをつまむ。
「やめろ、さわ・・・」
最後まで言う前に、またサンタのパンチが腹に入る。俺は少しだけ吐きそうになる。
「やっぱ慶太は馬鹿だよね。何度も同じこと繰り返して」
そして、守はサンタさんに次のお願いをした。
「チン毛、剃ってやって下さい」
サンタがワゴンからナイフを取った。
「やめろっ」
今度はサンタは左手で俺の頬を殴った。
「また・・・ほんと、馬鹿だね」
サンタが俺の股間にナイフを当てた。
「あ、やっぱり僕がします」
サンタは横に一歩下がり、ナイフを守に手渡す。守が俺の股間にナイフを当てた。
「切れちゃったらゴメンね、馬鹿慶太」
俺は何も言わなかった。何も言わずに、守に剃り落とされていく陰毛を見つめていた。
「さ、きれいになった」
「Ho Ho Ho」
そして、守はにっこり笑って、剃り落とした陰毛を俺に差し出した。
「じゃ、これ、食べてね」
俺は口を開かなかった。しかし、サンタに強引にこじ開けられ、口の中に陰毛を入れられた。じょりじょりした感触・・・吐き出したかった。けど、俺はそれを守に見つめられながら、飲み込むしかなかった。
「良く出来たね、これでチン毛慶太だね」
守が笑う。俺は何も言わない。
守の顔から笑顔が消える。俺の玉を握る。
「次はここ。勝手に何か言ったら、分かってるよね」
そして、じわじわと俺の玉を握った手に力を入れて行く。
「痛っ」
そして、サンタのパンチ。その間も守は手に力を入れ続ける。
俺は涙を流しながら、守の責めに耐え続ける。
「チン毛慶太、泣いてる?」
守は俺の顔を覗き込んで笑う。顔をそらそうとしても、サンタに髪の毛を掴まれて元に戻される。
「やめて欲しい?」
俺は反応しなかった。
「じゃ、続き」
守が俺の玉をぎゅっと握った。
「ぐあぁ」
そしてパンチ。さらに玉の痛みが増す。
「や、やめろ!」
パンチ。
「それが人に頼む態度?」
守が手を緩める。
「さぁ、僕になんて言うの?」
守の顔がいやらしく歪んで見えた。たぶん、普段の俺達の顔も、守にとってはこんな風に歪んで見えているんだろう。
「や、やめて下さい」
夢の中だからこそ言える言葉だった。でも、守はいきなり俺の玉を思い切り握りしめた。
「いぐっ・・・」
声が出ない。
「やめて下さいお願いします、でしょ?」
俺はその言葉を復唱した。守は手を少しだけ緩める。そして言う。
「土下座」
「え?」
「ど・げ・ざ。土下座しろ」
そして、またじわじわと力を込める。
(どうせ、夢の中なんだから・・・)
俺は膝を着いた。そして、守に土下座して言った。
「やめて下さい・・・お願いします」
守はそんな俺の後頭部を足で踏みつける。
「じゃ、『チン毛慶太は守様の奴隷になります』って言え」
頭の上で守の声がする。夢の中とは言え、さすがにこれは我慢できない。俺は守の足を払いのけると、体を起こして守に向かって叫んだ。
「てめぇ、黙ってりゃいい気になりやがって!!!」
そう、これは夢だ。だから、俺がその気になれば、手足を縛ってる縄は消えて、俺は守に殴りかかれる。そして、殴ったら守は消えて、今までの変な夢も終わるんだ。
ごちん、という音がした。
手足を縛られたままの俺は、守に飛びかかるどころか無様に転び、頭を床に打ち付けた。
「Ho Ho Ho」
サンタの笑い声が聞こえた。
|