「そんなことが」
話しながら、またうつむいていった裕太の頭に向かって惣一は言った。裕太の頭が微かに上下に動く。
「お母さんは、知ってるのか?」
また頭が上下に動いた。
(そういえば、裕太のお父さんは見たことがなかったけど、これが関係してるのか)
恐らく離婚、ということになったんだろう。
「その父親は、今は?」
「知らない。離婚してから会ってない」
(やっぱり)
惣一は思う。
「その話、あの・・・田所にもしたのか?」
「うん、前に」
惣一は、さっき田所に連れて行かれてされたことと、この裕太の父親の話がよく似ていることに気が付いていた。恐らく、田所はこの話を再現させたんじゃないだろうか。その意味は・・・
「僕がお父さんとしてたから、お父さんとお母さんが離婚して、貧乏になって、お父さんとも会えなくなって・・・」
惣一は少し驚いた。
「お父さんと会いたいのか?」
「うん」
恐らく、裕太のセックス好きは父親に作られた性癖なんだろう。それを考えると父親と会いたい、ということはつまり、父親とまたセックスしたいということなんじゃないだろうか。
「僕が全部悪いんだ」
裕太が顔を上げた。目に涙が浮かんでいる。
「お父さんがいなくなったのも、貧乏になったのも、お母さんのことも、全部、僕が」
裕太がテーブルに突っ伏した。肩が震えている。そんな裕太を初めて見た惣一は、どうすればいいのか分からなかった。
少し落ち着いてきた裕太の背後に回って、惣一はその体を抱き締めた。裕太はビクッと体を動かしたが、その後は黙って惣一に抱き締められていた。
「誰か、お前が悪いなんて言ったのか?」
裕太は首を左右に振る。
「そうだろ?」
裕太は彼を抱き締める惣一の手に、手を重ねる。
「お前は悪くなんかない」
「でも、僕は・・・」
(この子はなにを苦しんでるんだろう)
何かが裕太の心を縛り付けている。それは分かるが、それがなんなのか、惣一には分からない。
「お母さん、僕を嫌ってる」
「なんでそう思うんだ?」
「だって、僕が田所さんとしてるの、お母さん知ってるし」
(まさか)
惣一は驚きのあまり、何も言えなかった。
「裕太」
降幡家の美和子の部屋で、田所は全裸の裕太を抱き締めていた。透き通るような白い体。これで体温を感じなかったら、まるで氷か水晶でも抱いている気分になりそうだ。
足を持ち上げ、アナルにキスをする。
「きれいなアナルだな」
田所は裕太のアナルに指を入れる。
「あ・・・」
裕太が声を出した。が、痛みの声ではない。
「初めてじゃないのか」
「うん」
この艶めかしい体だ。むしろ、初めてと言われる方が驚いたかも知れない。
「じゃ、遠慮は要らないな」
田所は、太いペニスをまだ小学生だった裕太のアナルに突き入れた。
(痛がるかと思ったが)
目の前で大きな声で喘ぐ裕太を見ながら田所は思った。
「初めてどころか、やり慣れてるな、お前」
掘りながら言う。
「田所さんの、気持ちいい」
子供のセリフとは思えないし、子供にそう言われるのは喜んでいいのかどうかよく分からない。が、きっと悪いことではないだろう。腰を押し付け奥まで入れる。裕太が喘ぐ。
(まるで母親と同じだな)
目を閉じてその声を聞いたら、親か子、どっちの声か判別出来ないかも知れない。
「ああ、田所さん」
裕太が両手を伸ばしてきた。裕太の体に田所が覆い被さる。裕太がその体にしっかりと抱き付く。
「はあぁ」
田所が体を起こす。田所に抱き締められた裕太は、あぐらをかいた田所の上に座る。もちろんペニスは奥まで入っている。田所が裕太の体を揺らす。裕太の中に出入りする。
「ああぁ」
裕太はずっと喘いでいた。
ふと、田所の向こう側で、美和子の部屋の襖がすっと開いた。
仕事が早く片付き、自宅に帰ってきた美和子はその声を聞いた。その声は自分の部屋からのようだ。襖を開けて覗く。そして、それを見た。
田所の大きな背中の向こう側に、裕太の小さな頭があった。その頭は上下に揺れている。
「ああ」
裕太の顔が紅潮している。その顔を美和子は見た。田所に抱かれている裕太と目が合った。
その時、裕太は笑った。
「気持ちいい」
美和子の目を見たまま、田所にしっかりと抱き付き、言った。まるで美和子に聞かせようとしているみたいに。
二人が動く度に湿った音が聞こえる。自分と田所がしている時と同じ音。
「裕太、どこに出して欲しい?」
「僕に、僕の中に出して」
田所が裕太を布団に押し倒し、仰向けにする。二人が繋がっている部分が美和子にも見える。そこで田所が動いている。裕太は喘いでいる。気持ちいいと言っている。
美和子はそっと襖を閉め、そのまま家を出た。裕太の父親、大成が裕太としているのを見たときのことを思い出した。
その時のことをぽつりぽつりと話していた裕太が、少し息を吐いた。
「・・・気持ち良かった」
小さな声で言った。
「お母さんに見られながら、掘られて気持ち良くて、喘いでた」
「もういいよ」
「お父さんとしてるの見られてお父さんがいなくなった。田所さんとしてるのも見られた。でも、お母さんは田所さんが好きだから、次は僕がいなくなる番なんだ」
この小さな体の中で、男と女、男と男の愛情と欲望が渦を巻いている。それに裕太は飲み込まれている。あの母親との仲よさげな関係も、表面のごく薄い部分だけなんだろうか。田所に連れて行かれ、男の相手をさせられるのを断ることが出来なかったのも、これ以上誰かに嫌われると自分が消えると思っているからだろうか。惣一は裕太を強く抱き締めた。
「惣ちゃん、抱いて」
裕太も惣一に抱き付きながら言った。
「僕を、壊して」
そして、激しく口を貪った。
惣一は裕太の願いを聞き入れたくないと思った。それを聞き入れたら、本当に裕太はセックスだけが生きる目的になるような気がしたからだ。
(でも、だからといって、ここで裕太の手を離したら・・・)
裕太が別の男に抱かれている姿が目に浮かぶ。惣一以外の誰か。
惣一は裕太を抱きかかえ、布団の上に運んだ。服を脱がそうとすると、また裕太が抱き付いてきた。
「脱がせられないだろ」
そういうと、裕太は自ら着ていたシャツを両手で引き裂いた。ボタンがはじけ飛び、下に着ていたTシャツが露わになる。そのTシャツの襟首に手を掛け、それも引き千切ろうとする。
少し唖然として見ていた惣一は、裕太に手を貸してTシャツを引き裂いた。上半身裸になった裕太を押し倒す。のし掛かり、キスをする。裕太が舌を入れてくる。その舌に舌を絡める。裕太が惣一の背中に手を回し、ぎゅっと抱き付いた。足を惣一の腰に回し、しがみつく。
「裕太」
一瞬口を離し、息継ぎする間に名前を呼び、また裕太の口を吸う。裕太がキスをしながらズボンを脱ぐ。ボクブリも脱ぎ捨てて全裸になった。
「惣ちゃん」
股間を惣一の腹部に擦りつける。そんな裕太をうつ伏せにして、尻を両手で掴み、揉みしだく。
「ああ、惣ちゃん」
再び裕太を仰向けにし、乳首にキスをする。
「ああっ」
裕太の体が反り返る。そのまま舌で転がす。左手の指先で裕太の右の乳首を愛撫する。
「惣ちゃん・・・気持ちいい」
裕太が惣一の髪の毛をかき回す。体を入れ替え、今度は裕太が惣一の上になる。
「んんっ」
口に口を押し付ける。惣一のシャツのボタンを外し、胸をはだけさせる。そこに頬ずりし、同じように乳首を舐める。
「ああ、裕太」
惣一も同じように裕太の髪の毛をかき回した。すると、裕太は体をずらして惣一の股間に顔を押し付ける。ズボンの上から鼻を押し付け息を大きく吸う。吐く。それを繰り返す。裕太が股間に顔を押し付けている間に、惣一はベルトを外す。裕太が惣一のズボンをずり下げようとする。惣一は少し腰を浮かせてそれを手伝う。今度はボクブリの上から顔を押し付けた。
「惣ちゃん」
惣一の勃起したペニスにボクブリの上から口を這わせる。鼻を押し付け息を吸い込む。
「惣ちゃん」
足を持ち上げ、アナルの場所に鼻を押し付ける。匂いを嗅ぐ。
「ああ、惣ちゃん」
裕太が惣一のボクブリをずり下げた。惣一の勃起したペニスに顔を押し付ける。
「惣ちゃん」
ペニスに頬ずりし、竿を舐め、亀頭を舐める。そのまま惣一の足を持ち上げ、アナルにも鼻を押し付けた。
「惣ちゃんの、いい匂い」
二、三度大きく息を吸い、そこに舌を伸ばす。
「裕太」
裕太が惣一のアナルを舐める。丹念に、じっくりと舌を這わせる。
「裕太、ケツこっちに向けろ」
アナルを舐めていた裕太が、惣一の体の上で、尻を惣一の顔の方に向けて四つん這いになった。惣一が頭を起こして裕太のアナルを舐める。
「うっ」
昨日、男達にマワされたというそこは、心なしかいつもより膨らんでいた。
(腫れてるのか)
惣一は穴の周りを丹念に舐める。
「惣ちゃん、入れて」
裕太が惣一の顔を見て言う。
「腫れてるみたいだ。痛くないのか?」
「大丈夫だから、入れて」
裕太は自ら尻を開く。
「分かった」
惣一は体を起こした。その前で、裕太は四つん這いになる。
「はぁぁ」
裕太の息が震えている。
「入れて」
惣一は裕太のアナルにペニスを押し付け、そこに押し入った。
「うぐっ」
裕太が痛そうな声を出す。惣一はこんな裕太の声を始めて聞いた。いつもより少し狭くて熱い裕太の中で、惣一は動きを止める。
「惣ちゃん、掘って」
四つん這いのまま、裕太が言った。
「痛くないのか?」
惣一の問い掛けに、裕太は答えなかった。
(これじゃ、だめだ)
このままでは、裕太の痛み、体と心の痛みが惣一には分からない。惣一は裕太からペニスを抜く。
「仰向けになって」
裕太は仰向けになり、足を抱えた。
「入れるぞ」
もう一度裕太のアナルにペニスを押し付ける。裕太の顔を見る。眉間に皺が寄っている。
(やっぱり痛いんだな)
今になっても少し腫れ、熱を持っている裕太のアナル。そんなになるまで、いったいどんな使われ方をしたんだろう。それを考えると、惣一はいつものように腰を打ち付けることが出来ない。
「掘って、惣ちゃん」
だが、裕太はそれを求める。
「痛いんだろ、無理するな」
「お願い、惣ちゃん」
惣一が言っても、裕太は聞かない。
「壊れるまで掘って」
惣一はゆっくりと奥まで入れる。
「もう、気持ちいいセックスなんかしたくないから」
裕太が惣一の腕を掴んだ。
「僕を壊して、僕を変えて」
裕太の白い体。抱き締めると壊れそうな体。でも、激しく掘られて気持ち良くなるその体。
(裕太を壊すなんて、俺には)
「お願い・・・惣ちゃん」
裕太が惣一を見た。惣一も裕太を見る。二人目が合う。何かが惣一の心の中に入ってくる。
「裕太・・・」
惣一は腰を使い始めた。熱いアナルでいつものように腰を動かす。いつものように腰を打ち付ける。
「ん、ん、ん」
裕太が呻く。二人は見つめ合ったままだった。腰の動きが速くなる。裕太の尻に惣一の腰が打ち付けられる。パンパンと音がする。その音が速くなる。どんどん速くなる。
「んあっ」
裕太の呻き声が大きくなる。その声をかき消すように、二人が繋がった部分から音がする。
「惣・・・ちゃん」
裕太が腕を伸ばした。
「裕太」
惣一が上半身を倒す。その体に裕太が腕を回し、しがみつく。そのまま惣一は体を起こし、立ち上がった。小さく華奢な裕太の体が持ち上がり、惣一にしがみついた腕の辺りを支点にして振り子のように動く。
「ああ、裕太」
「惣ちゃん」
また裕太の体を布団に下ろし、足を肩の横に押し付ける。裕太の尻が持ち上がる。惣一はそこに体重を掛けて突き入れる。二人の体がぶつかり合い、二人の気持ちがぶつかり合った。
「ああ、惣ちゃん」
「裕太」
惣一が裕太の奧で射精した。同時に、裕太のペニスからも精液が飛び散った。
惣一は、裕太のアナルからペニスを抜いた。裕太のアナルが更に腫れ上がっている。血も少し出ているようだ。
「大丈夫か?」
惣一は裕太に尋ねた。その時初めて、裕太の目に涙が溜まっていたことに気が付いた。
「うん」
しかし、裕太はそう答えた。
(きっと、痛かっただろうに)
惣一は裕太を抱き締めた。裕太は惣一に抱き締められながら、そっと涙を拭った。
「家に帰らなくていいのか?」
その日の夜、惣一は、敷きっぱなしの布団の上で横になったままの裕太に尋ねた。
「お母さん、いないし」
「って、今日は大晦日だぞ?」
それでも裕太は動こうとしなかった。
「たぶん、もう帰ってこない」
ぼそっと裕太が言った。
「家でもなにかあったのか?」
すると、裕太が起き上がった。
「見る?」
惣一に向かって言った。
裕太に連れられて惣一は裕太の家に行った。
家の中の物が、特に母親の服や持ち物が消えていた。
「なにがあったんだ?」
裕太は首を左右に振った。
「ちょっとどこかに行っただけとか?」
「だったらこんなに持って行かないでしょ」
裕太が冷静に答えた。確かにその通りだ、惣一は思った。裕太の部屋を覗いてみると、そこは特に変わりがないように見える。
「なにがあったんだ・・・」
惣一は再びつぶやいた。
「分かんないの?」
裕太が言った。
「お母さん、田所さんを選んだんだよ」
「それってつまり・・・お前を・・・」
惣一には、それ以上言えなかった。
「昨日、田所さんのところで、他の人達にマワされたでしょ」
惣一は思い出す。あの、裕太の父親の話とよく似た状況の話を。
「たぶん、あの時はもう僕とは終わりにするって決めてたんだ。だから」
裕太はそれ以上は言わなかった。
(父親にマワされた時は父親が消えて、あの男にマワされた後は、あの男が母親と一緒に消えたってことか。そのつもりだったから、同じ目にあわせたっていうのか)
惣一の心に怒りの感情がわき上がる。しかし、今はそれより優先するべきことがある、ということをよく分かっていた。
「裕太・・・」
惣一は裕太を抱き締めようとした。が、裕太はその手から逃れた。
「大丈夫だよ。いつかこうなるって分かってたから」
(そうだ、今朝からずっと、裕太はこのことを知ってたんだ)
「そんな顔しないでよ」
裕太が惣一を見て言う。
「あ、ああ・・・ごめん」
裕太が笑顔なのが意外だった。もちろん、その下に隠れた表情は笑顔なんかじゃないことは分かっているが。
「下に戻ろう」
惣一が言うと、裕太は素直に従った。
惣一の部屋で、裕太はまた布団の上に座り込んでいた。何をするでもなく、ただ座っているだけだった。
(居場所がないんだな・・・今だけじゃなく、これからずっと)
しばらくそっとしておくことにして、惣一は少し出掛けることにした。
「裕太、ちょっと出掛ける。10分くらいで戻ってくるから」
「えっ?」
裕太が惣一の顔を見た。一瞬、その顔に大きな不安が見えた。
「すぐ帰ってくる。必ずな」
そう言って家を出る。早足でバイト先のコンビニに向かう。店のノルマ達成のために発注させられたおせち料理を受け取り、急いで戻る。
(まさかこんなことになるとはな)
一人でお正月を過ごすつもりだった惣一には豪華すぎるおせち料理だ。これで、少しは裕太の気が紛れるといいんだが。
惣一が家に戻ると、裕太が抱き付いてきた。
「必ず帰るって言ったろうが」
裕太の頭を撫でながら、惣一は言った。が、裕太の気持ちは惣一には痛いほど分かった。今度は惣一にも捨てられるんじゃないかという不安。
(俺がなんとかしてやらないと)
「ほら」
裕太におせち料理を見せた。
「明日、一緒に食べような」
そう惣一が言うと、少し裕太も安心したようだった。
「じゃ、大掃除じゃないけど、少しくらい片付けようと思ってるんだけど、手伝ってくれるか?」
「うん」
(俺がしっかりしないとな)
健気にうなずく裕太を見て、惣一は思った。
<クリームパイ Final-06 に続く> |