エビラが僕を見上げている。口の端からは白い精液が垂れている。今、エビラの口の中に出した、僕の精液だ。
「ななちゃん」
エビラが僕に顔を寄せる。そして、僕等はキスをする。
精液の匂いがした。僕は舌をその口に入れる。今度はその味がする。エビラも僕に舌を入れてくる。お互い、舌を入れ合い、口を動かし合い、貪りあう。口の端から涎が垂れそうになる。それをすすり上げる。すすり上げながらもキスを続ける。
「やめろ!」
大きな声がした。後輩君の声だ。ちらりと後輩君を見ると、男達に羽交い締めにされながら一緒に僕等を見ていた。だったら・・・
エビラの体を抱き締める。更に口を押し付ける。
「んん」
エビラが喘ぐ。少し口を離して息を継いで、すぐにまた押し付ける。舌を絡め合う。
(見せつけてやる)
そう思った。だからキスを続けた。世界で一番好きなエビラ。その体を抱き締めて、キスを、それも濃厚なキスを交わす。この時間、男達が見ていようと、後輩君が見ていようと、この後売られるのであろうと関係なかった。僕等の、僕とエビラの二人だけの時間だ。
「ああ」
エビラの声。僕はエビラのちんこに手を伸ばす。もちろん勃起している。僕のちんこはもう、エビラに握られていた。そこも勃起している。抱きしめ合い、股間を押し付け合う。エビラの先走りが僕のお腹に塗り付けられるのを感じる。僕だって同じだ。エビラに体を押し付けて腰を動かす。僕のエビラ。エビラの僕。もっと抱き締めたい。もっと、僕のものにしたい。
エビラが床に座り込んだ。僕も座る。座ってキスをする。曲げた足の先にエビラのちんこが触れる。そこを足で押す。それを両足で包み込む。
「ああ」
キスしながらエビラが声を漏らす。周りをチラリと見る。後輩君はまだ押さえ付けられている。目が合った。僕は少し笑った。そして、両足でエビラのちんこを扱き始める。
「ああ、ななちゃん」
エビラが喘ぐ。気持ちいいんだろう。僕のちんこもエビラに握られて、ゆっくりと扱かれている。
「気持ちいい」
キスしながら言う。口の端から唾液がこぼれる。エビラがそれを舐め取ってくれる。足をエビラのちんこに押し付ける。そのまま動かす。
「ああ、ななちゃん」
僕を見る。僕に手を伸ばす。床に仰向けになる。
エビラが僕を見ている。僕はその体の上に四つん這いになる。
「ななちゃん」
エビラが僕の背中に手を回す。
「エビラ」
またキスをする。キスをしながらエビラの足に手を掛ける。
(僕等、するんだ)
エビラしか見えなかった。エビラの足を持ち上げて、エビラの穴を見る。そこに入れたい。エビラと一つになりたい。僕はエビラににじり寄って、勃起したちんこを穴に押し当てた。
「おっと、そこまでだ」
急に背中から羽交い締めにされ、体を引っ張られた。
「いやだ、入れるんだ」
僕はつぶやいた。エビラも僕に両手を伸ばしている。
「エビラ」
「ななちゃん」
僕等の間に男が二人、割り込んで来た。
「お前等の関係は大体分かったからな」
誰かが言った。
「まだ処女穴なんだろ?」
男がエビラの足を持ち上げ、そこを覗き込んだ。
「待って」
後輩君の声だ。
「僕にやらせて」
男に羽交い締めにされたままの後輩君が少し暴れている。
「僕のエビラに手を出すな」
僕も叫んでいた。後輩君が僕を睨む。僕も睨み返す。
「お前等、こいつが好きなんだな。じゃ、尚更だ」
エビラのお尻の穴にローションが塗られた。
「お前等にさせる訳がないだろ」
その男がエビラの上に体を重ねた。
「いぐぁ」
エビラの叫び声が聞こえた。僕からはエビラの顔は男の背中に隠れて見えない。でも、男のちんこがエビラのお尻の穴にずぶずぶと入って行くのが見えた。
「エビラっ」
手を伸ばした。しかし、その手が別の男に掴まれた。そのまま床に押し倒される。体を引きずられ、エビラの隣に横たえられる。そのまま足を持ち上げられ、お尻にローションが塗り付けられた。
「お前もだ」
そして、ちんこが無理矢理入ってきた。
「ぎゃあぁ」
裂けるような痛みに体が仰け反った。
「や、やめて」
そのちんこから逃げようとした。でも、男が腰を掴んで離してくれない。それどころか、もっと奥まで押し込んでくる。
「痛、痛い」
あまりの痛さに涙が出て来る。
「助けて」
隣のエビラに助けを求める。でも、エビラも僕と同じだった。同じようにお尻の穴に無理矢理入れられ、呻きながら涙を流している。
「助けて」
エビラも僕を見た。僕に助けを求めた。二人お互いに助けを求めた。でも、二人とも何も出来ない。
エビラの方からぐちょぐちょという音が聞こえ始めた。同時にエビラの呻き声が大きくなる。エビラの体が揺れている。男がエビラを使っている。
「お前も同じようにされたいよな」
僕に入れている男が言った。男のちんこが僕の中に出入りする。僕のお尻からもぐちょぐちょと音がしている。掘られている。エビラと一緒に、エビラと並んで、エビラと同じように僕は、僕等は掘られている。
痛み。苦しみ。でも、それ以外に何かを感じる。
それはエビラと同じようにされているからなのか、それとも・・・
「勃ってきた」
後輩君の声が聞こえた。そうだ、分かっている。僕のちんこが勃ってきている。エビラと一緒に犯されて、僕は勃起させているんだ。エビラの股間をチラリと見た。エビラも同じだった。エビラも犯されながら勃起していた。
(同じなんだ)
胸の奥を何かでぎゅっと握られる感じ。僕は体を起こした。男はそんな僕の体の動きに合わせて位置を変えて掘り続ける。僕はエビラの上に這い寄って、勃起したちんこを咥えた。
「あ、ななちゃん」
呻きながらエビラが言う。僕は男に犯されながらエビラをフェラチオする。エビラも少しずつ体の向きを変える。僕の下になって、僕のちんこを咥える。お互い咥えながら掘られる。呻きながら気持ち良くしようとする。いや、いつのまにか、僕等は気持ち良くなっている。
急に、エビラを掘っていた男がちんこを引き抜いて、僕の顔に押し付けてきた。僕はそれを咥える。エビラも僕のちんこから口を離して、たぶん僕を掘っていた男のちんこをしゃぶり始めた。
「んん」
気持ちいいのかも知れない。手をエビラのお尻に沿わせる。さっきまで男のちんこが入っていた穴に指を入れる。
「ああ」
エビラの声がした。同じように僕の穴にもエビラの指が入ってくる。
「エビラ・・・気持ちいい」
そう言っていた。指を二本に増やす。クチュクチュと出入りさせる。
「楽しんでやがる」
男の声がする。そうだ、僕等は楽しんでいる。エビラと楽しんでいる。他の人とも楽しんでいる。後輩君はどうなんだろうか。後輩君を目で探した。見当たらない。でも、いいや。僕はエビラのお尻に入れている指を三本に増やした。
「ああ」
僕の口から男のちんこが抜かれた。それが僕の指の代わりにエビラの中に入る。僕の中にも男が入ってくる。
「気持ちいい・・・」
エビラの声がした。
「僕も気持ちいい」
僕も言う。僕等は気持ち良くなっていた。初めて犯されて、お互い舐め合って、指を入れ合って、男に掘られて気持ち良くなっていた。
「あ、イくっ」
先に射精したのはエビラだった。エビラは男に掘られながら僕の口の中で射精した。僕もすぐに同じようにエビラの口に射精する。そのまま男に掘り続けられて、男の精液も僕等の体の中に流し込まれた。
「犯されてケツいきするとはな」
少し落ち着いた僕等に男が言った。後輩君は男の向こう側で、他の男二人に犯されていた。
「こいつはお前等が犯されてるのを見て、興奮してたしな。どういう友達関係なんだか」
男が苦笑する。
「まったく、拉致されて犯されてるとは思えないよな、お前等」
男が笑った。
「そんなお前等を泣きわめかせるには、どうすればいいんだ?」
男が何か合図した。
僕等は両手を上に上げた状態で縛られて、吊り下げられていた。左側がエビラ、真ん中が僕で、右側に後輩君。あの座った時の順番のままだ。三人とも全裸にされて、足が少し宙に浮いている。
「犯されて、気持ち良くなって射精するような変態二匹と、ヤクザの愛人。三匹ともマゾなんだな」
僕等の前を男が行ったり来たりしている。手には鞭を持っている。
「まあ、その方が値は上がるからいいんだが・・・」
僕の前で立ち止まり、鞭を振り上げた。
「ひっ」
僕は顔を伏せて身構えた。でも、男は振り下ろさない。
「そういう表情、嫌いじゃない」
そう言いながら、エビラの前に行く。また鞭を振り上げる。エビラも僕と同じように顔を伏せる。でも、やっぱり鞭は振り下ろさない。
「この三人で、一番経験してるのがお前だよな」
今度は後輩君の前に立つ。
「お前があれを好きになって、あれが手に入らないからってみんな壊してしまおうと考えた。そういう考え方も面白い」
また鞭を振り上げる。でも、きっと今度も振り下ろさないんだろう。
「ぎゃあっ」
後輩君が悲鳴を上げた。後輩君の体が揺れていた。
「そんな危ない奴を痛めつけるのも、面白い」
僕の方を向く。次の瞬間、体を切り裂かれるような鋭い痛みが襲ってきた。
「ぎゃっ」
体が揺れる。細い、鋭い何かで体を刻まれたような痛み。その痛みが拡がっていく。
「で、こうなった原因はお前にあるって訳だ」
エビラの悲鳴が聞こえた。同じように鞭打たれたんだろう。
「お前はこいつが好きなんだっけ?」
また僕の体に鋭い痛みが走った。
「やめ・・・ろ」
エビラが唸った。
「そして、こいつはお前が好きだ、と」
後輩君の悲鳴。
「たったそれだけのことで、こうなっちまったんだからな」
男が鞭の柄で、エビラの顎を持ち上げる。
「友達はもっと選ばないと」
エビラの耳元に口を寄せた。
「将来有望なテニスプレーヤーなら、悪い友達と付き合っちゃ駄目だろ」
そして、僕を見てにやっと笑った。
「ななちゃんは・・・違う」
エビラが小さな声で言った。
「なんだって?」
「ななちゃんは悪くない。悪いのは」
エビラが顔を上げた。
「僕だって言うの?」
「中原だろ」
後輩君とエビラが同時に言った。男は笑顔で見ている。
「お前が、僕とななちゃんの間に入ってくるから」
その通りだ。僕とエビラは普通に・・・ちょっと普通じゃないかも知れないけど・・・愛し合っている。エビラに好きになってもらえないからって逆ギレしたのは後輩君だ。それは間違いない。
「本当にそうか?」
男が言った。
「本当に、お前はこいつに愛されてるのか?」
男が僕を見て、そしてエビラに言った。
「当たり前だろ」
エビラはすぐに答える。
「本当か?」
男が後輩君の前に立つ。
「誰が誰を好きになってもいいよな?」
さっきのエビラと同じように、鞭の柄で顔を上げる。
「別に、お前がこいつを好きになっても悪くはないよな」
言い終わると同時にエビラを鞭打った。続けて後輩君も。
「それなのにこんなことになった。他になにかきっかけがあったんじゃないか、なぁ」
そして、僕に鞭が振り下ろされた。
「ひっ」
その痛みの中で思い出した。
『今度、その後輩も連れて来て』
そうエビラにLINEしたのは僕だ。後輩君を呼び出して、後輩君の目の前で僕等の関係を見せつけたのも僕だ。僕が、あんなことをしたから、後輩君は・・・
「なにか思い当たることでもあるのか?」
男が僕を見ていた。
「べ、別に」
鋭い痛みが走る。
「隠し事は良くないな」
男がまた鞭を振り上げる。
「やめろっ」
エビラが叫ぶ。でも、それが僕の体を打つ。
「ぐあぁ」
更にもう1回。
「どうだ、正直に言えばやめてやる」
エビラが僕を見ている。後輩君もきっと僕を見ている。でも、僕は後輩君を見ることは出来なかった。怖かった。ホントは、こんなことになった本当の原因は・・・・・
「ぎゃあぁ」
また痛みが襲いかかる。今度は1回、2回じゃない。痛みが続く。体が切り刻まれるみたいに痛む。そうだ、僕が・・・
「僕が悪いんです」
その痛みに押し出されるように僕は声を絞り出した。
「ほお」
男が鞭を振るう手を止めた。
「ななちゃん、なに言ってるの」
隣でエビラが言う。
「だって、あの時、後輩君を家に呼んで」
「やめろっ」
エビラが僕を止めようとした。
「あの時、僕が後輩君に見せつけたから・・・」
鞭が僕を襲う。
「あの時、僕がそうしたから」
また痛み。
「僕が、あんなことしたから」
まるで雨のように、鞭が僕に降ってきた。
鞭の雨が止んで、僕は荒い息を吐いていた。
「そうか。つまり、お前が一番悪いんだな」
男が鞭の柄で僕の顎を持ち上げる。
「僕が・・・悪いんです」
「違う、ななちゃんは悪くない!」
エビラが叫んだ。
「お前はどうなんだ?」
男が後輩君の前に移動した。
「だから言ってるだろ、全部そいつが悪いって」
「そうか」
男が嬉しそうに笑った。
「じゃ、お前が全部悪いんだな」
男が僕に言った。
「違うっ! 中原があんなことしたから」
男がエビラの前に立つ。
「あんなこと?」
エビラは息を大きく吸った。
「僕は、ななちゃんと付き合ってたのに、中原が・・・」
「なにをしたんだ?」
「そ、その、僕に、キスを」
男が後輩君の前に移動する。
「お前は、大滝組長の愛人でありながら、こいつと浮気をしていたのか」
「してないっ」
後輩君が叫んだ。
「こいつはお前にキスされたって言ってるぞ」
「あれは、その・・・浮気じゃない。それに・・・」
「それに?」
「あの時は、エビラ先輩が、こいつと付き合ってるなんて知らなかったし」
男は笑った。
「じゃ、お前はどうなんだ」
エビラの前に立っている。
「お前はなにも悪くないのか?」
「僕は・・・なにも・・・」
エビラが小さな声で言い掛けた。その言葉に後輩君が被せるように叫んだ。
「僕を好きになってくれなかったじゃないですか!」
「僕は、ななちゃんが」
「エビラ先輩が僕を選んでくれなかったからこうなったんじゃないか!」
広い部屋に男の笑い声が響き渡った。
「お前等、ホント、面白いな」
腕を組んで僕等に言った。
「お前等にチャンスをやる。お前等三人の中で誰が一番悪いのか、お前等で相談して決めろ」
他の男達に合図をする。僕等三人とその男を残して、他の男全員が建物から出て行った。
「一番悪い奴は、一番酷い死に方で殺してやる。そして、他の二人は解放してやる」
男は笑顔だ。
「悪い奴一人の命で、他の命二つが助かるんだ。いい条件だろ」
男が腕時計を見た。
「今から1時間、お前等三人だけで相談して、誰が一番悪いのか決めろ。一時間後にまた来る」
男が出て行った。
その後ろ姿を見送った僕等は、誰も口を開かなかった。
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