ななちゃん


「ななちゃん」
エビラが僕の病室に顔を出した。
「あ、はい」
あれからエビラの事についてはあんまり深く考えないようにしていた。というよりも、エビラはエビラだって思う様にした。実際、その通りなんだし。すると不思議なことに、ちょっとした言葉の端々に、仕草にエビラを感じられるようになってきた。
(やっぱりエビラはエビラなんだな)
そう思える事が少し嬉しかった。でも、だからこそ逆に、エビラと先生を区別するように心掛けた。
先生に呼ばれて診察室に入る。その日は診察室の奧の、横になれる台がある部屋に入るように促される。
(昼寝だ)
それを僕は昼寝と呼んでいた。台の上には枕がある。普通の、ちょっと硬めの枕。その左右の側面にダイヤルとかLEDとかいろいろ付いていて、更にモニターに繋がっている。これは「電気枕」って呼んでる。台に上がって横になり、電気枕に頭を乗せる。先生が電気枕を何か操作する。そのまましばらく経つと、僕は眠くなる。
この治療、エビラに聞いたところ、僕の頭と身体が上手く機能しているか、拒否反応が出ていないか、そういうのをチェックして調整するものらしい。これが結構気持ち良くていつも眠ってしまう。僕が眠っている間に「調整」は終わっている。
そんな治療を受けたりして、実際に退院出来るようになるまでにはまだしばらく時間がかかった。

そして、退院の日が来た。

その日、エビラはわざわざ休みを取ってくれた。休みを取って病院に来て、僕を退院させて、エビラの家に行くために車に乗せてくれた。
「先に少し寄り道したいんだけど、いいかな」
エビラが助手席に座った僕に言った。
「うん。ちょっと街も見てみたいし」
エビラは車を発進させる。そのまま街を走る。僕にとっては知らない街だった。地震の後、街は大きく変わったらしい。やがて、街はずれで車を停めた。エビラが僕の顔を見た。
「エビラ、ありがとう」
僕にはここがどこで、なぜ先にここに連れてきて来てくれたのかが分かった。
「少し歩くけど、大丈夫?」
僕はうなずいた。車には折りたたんだ車椅子も積んである。でも、僕は自分で歩きたかった。ここまで回復したことを見てもらいたかった。
そんなに距離はなかった。僕とエビラは無言で歩く。時々エビラが方向を指し示してくれる。そしてそこに到着した。僕の両親のお墓だ。
お墓には花が供えてあった。かなり新しい花だ。エビラの顔を見る。
「時々報告に来てたんだ」
「ありがとう」
僕はお墓の前でしゃがんで手を合わせた。目を覚ましたこと。エビラが助けてくれたこと。後輩君の身体をもらったこと。エビラと後輩君のお陰でこうして生きていること。退院出来るまで回復したこと。成長が止まったこと。そんなことを報告する。
隣でエビラもしゃがんで手を合わせていた。
「全部、エビラのお陰だし、これから一緒に暮らすんだよ」
これは声に出して報告した。
「きっと、両親も感謝してるよ」
エビラはうなずいて立ち上がった。僕も立ち上がる。一緒にもう一つのお墓に向かう。後輩君のお墓だ。そこでも手を合わせる。
(君のお陰で僕は今、こうして生きていられるよ。ありがとう)
車に戻る。そして、エビラの家に向かった。


「この道って」
エビラが運転する車の助手席で、僕は窓から外を見ていた。その景色にほとんど見覚えはない。でも、ところどころ何となく、記憶の中のそれと繋がるものを感じる。
「そうだよ、ななちゃんの家があった所に向かってる」
すぐに、僕の家があった場所に着く。そこには別の家が建っていた。その前で車を停めた。
「やっぱり・・・潰れちゃったんだ」
僕の家。あの時、エビラや後輩君と一緒にいた家。その家はもうない。
「ここはななちゃんのご両親の土地だった。だから、今はななちゃんがこの土地を相続して、ななちゃんの土地になってる」
車から降りて、家のドアの鍵を開けた。
「そして、ここはななちゃんの家だよ」
その土地に建っている家にエビラが入る。
「だから、いらっしゃい、じゃなくてお帰り、だよ」
僕を玄関で迎え入れた後、エビラは車に戻って荷物を運び込んだ。
「この家は、ななちゃんの土地にななちゃん名義で僕が建てたんだ。僕はそこに住まわせてもらってることになってる」
エビラが何か差し出した。通帳だ。僕の名前になっている。
「毎月、賃借料を振り込んでる」
開いてみた。結構な桁の数字が並んでいる。
「それから、ななちゃんには国から補助金が出てる。それも全部その口座に入れてある」
パラパラとページをめくってみる。時々大きな金額が振り込まれていた。
「だから、ななちゃんは結構お金持ってるし、僕もいるからなにも心配しなくていいからね」
僕が自分のこの先に不安を感じていることを知っているエビラが、僕を安心させようとしてくれている。何もかもかもエビラには感謝しかない。
「ありがとう」
小さな声で言う。そのままエビラにしがみつくようにして抱き付いた。
「そんな抱き付かれたら」
僕のお腹の少し下辺りに熱い物を感じる。
「エビラ、今までずっと我慢してた?」
エビラは何も言わなかった。僕が言ったことを気にしてるんだろうか。僕にとって、今のエビラはエビラじゃないって言ったことを。
「あれから、やっぱりエビラはエビラなんだって分かった。僕は・・・」
エビラを見た。
「やっぱりエビラが好きだ」
エビラの前にひざまずいた。目の前のエビラの股間が少し盛り上がっている。そこに手を添える。
「いいよ、無理しなくても」
エビラが言ったけど、僕はそれを無視した。ベルトを緩めてズボンの前を開く。手を入れる。ボクブリの上から硬くなっているエビラを撫でる。
「あの時とは違うね」
そこは大きく、太く、硬かった。
「中学生だったからな」
ボクブリをずり下げる。エビラのちんこが跳ね上がる。僕は唾を飲み込んだ。
「ね、ななちゃん」
エビラを見た。
「その・・・しゃぶって欲しい」
エビラが少し照れた顔で言う。なんだか中学生のあの時のエビラの顔を思い出す。
「分かった」
人のちんこをしゃぶる。フェラチオ。知ってはいるけどしたことはない。でもエビラがして欲しいというのなら、してあげたい。いや、僕はエビラをしゃぶりたい。
エビラのちんこを握って、亀頭の先をチロっと舐める。
「あっ」
エビラが一瞬腰を引く。
「舐められたことないの?」
「あるけど・・・ななちゃんが舐めてくれてるから」
(そっか。誰かとはしてたんだ)
口を開いてエビラを咥える。大きいちんこを喉まで入れる。それでも、3分の2位しか咥えられない。奥まで咥えるのはあきらめて、頭を動かす。
「はぁ」
エビラが溜め息を吐く。気持ちいいんだろうか。
(気持ちいいなら嬉しいな)
僕は懸命にしゃぶる。
「ななちゃん、もう、いいよ」
でも、僕は止めない。
「ななちゃん、もうヤバいって」
(やっぱり)
エビラの息が少し上がっている。頭の動きを大きく、早くする。
「ヤ、ヤバい」
僕の頭を押さえて口からちんこを抜こうとした。僕はエビラの腰に腕を回してちんこを奥まで咥える。
「ななちゃんっ」
口の中でエビラが射精した。喉の奥に精液を感じる。それを飲み込む。エビラが僕の頭を押す。今度は素直にエビラのちんこから口を離す。
「ななちゃん」
エビラもひざまずく。そのまま僕を床に押し倒す。
「ななちゃん」
僕にキスをする。服の上からちんこを撫でられる。
「エビラ」
僕の上にエビラが覆い被さる。熱くて硬い物が僕に押し付けられる。僕は目を瞑って力を抜く。
「ななちゃん」
エビラにズボンを脱がされる。ボクブリも。そして、ちんこを直接握られた。
「んっ」
思わず声が出た。

あの頃、中学の頃は、僕がエビラのちんこを握って、僕のちんこは握らせなかった。それどころかちんこを見せてもいない。だけど、今、エビラに脱がされて、ちんこ見られて、握られている。病室で見られた時は勃起してなかった。今は勃起している。それを握られている。恥ずかしい。いや、違う。見られたい。見て欲しい。握られたい。握って欲しい。目の前のエビラはあの時のエビラじゃない。でもエビラはエビラだ。間違いない。僕が好きなエビラ。僕を好きなエビラ。見た目は大人と中学生だけど、心は二人ともあの時のままだ。
あの時、僕はエビラが好きだった。好きだったけど、その気持ちに気付いていたけど、気付かないふりをしていた。ゲイじゃないからって言ってた。でも、ずっとエビラのちんこを握ってた。そんな中学生の僕。
あれから15年が経っている。僕の中では数ヶ月。その間に僕の周りは大きく変わっていたし、エビラも変わっていた。
僕はどうだろう。今のエビラを知って、話をして、気持ちが変わっていないことに気付いた。エビラは15年もずっと僕を見ていてくれた。その気持ちに応えたいという僕の気持ち。もちろん、それだけじゃない。
そう、僕はエビラが好きだ。
今のエビラも好きだ。
あの時は僕が握っていたけど、今は僕を握って欲しい。僕を抱き締めて欲しい。そして、僕を支えて欲しい。

「エビラ・・・抱いて」
小さくつぶやいた。もちろん、エビラには聞こえているだろう。
僕を握っていたエビラの手が僕から離れた。目を開くとエビラが僕の顔を見ていた。
「もう一回言って」
エビラが言った。
「恥ずかしいよ」
「いいから、言って」
僕はエビラの目を見た。そして、そのままもう一度言った。
「エビラ、僕を抱いて」
「分かった」
僕はエビラに抱きかかえられた。

そのまま寝室に運ばれ、ベッドの上に下ろされた。
「ななちゃん、脱がせるよ」
僕が返事をする前に、シャツを脱がされ、靴下も脱がされて全裸にされた。
「きれいに繋がってる」
僕の身体を見て言う。
「こんな時に医者に戻るなよ」
「ごめんごめん」
僕が文句を言うとエビラは笑った。
「でも、ちゃんと繋がってるから、ちゃんとななちゃんの身体になってる。それは、ななちゃんと出来るってことだから」
「後輩君に感謝だね」
エビラも全裸になる。股間でちんこが硬くなっている。
「エビラの、でっかくなったね」
「そりゃあ、ななちゃんと出来るって思ったら」
「違うよ。中学の頃のちんこと比べると、大人ちんこで大きくなったってことだよ」
すると、エビラが僕の太ももの上に座った。そして、僕のちんことエビラのちんこを一緒に握る。
「大人と子供だな」
「そりゃそうだよ、僕の身体は15年前のままなんだし」
そのまま扱かれる。
「エビラの、熱い」
一緒に握られ扱かれながらキスされる。エビラを下から見上げる。
「ねぇ、聞いてもいい?」
エビラが僕の顔を見る。
「付き合ってる人とかいないの?」
「いない」
すぐに答えが返ってくる。
「結婚とかは?」
「僕はゲイだから」
「じゃあ、彼氏は?」
エビラが扱く手を止めた。
「そういうの、気になる?」
エビラが僕の隣に横になった。
「ななちゃんも知ってるように僕はゲイだ」
僕の横で言う。
「だから、彼女なんていたことないし、今でも童貞だ」
なんだか悪いこと聞いちゃったかな、なんて思う。
「男とは・・・少しはそういうことしたことはある」
僕の横で天井を見上げたまま、手探りで僕の手を握る。
「でも、あの頃から僕はずっとななちゃんが好きだし、ななちゃんしか好きになれない」
手に力が入った。
「誰かと付き合ったりはしなかったの?」
「その・・・正直に言えば、セックスフレンドみたいな相手はいた」
「いた・・・今は?」
「もう何年も前の話だよ。ななちゃんの手術をする前の話」
つまり、僕がこうやって目覚めるかどうかも分からない時の話なんだろう。
「ごめん、もうその話はいい」
僕は身体を起こしてエビラに抱き付く。
「僕を、エビラの物にして」
そして、エビラの口に吸い付いた。

エビラが僕のお尻の穴を舐めている。僕の穴の周りを舐め、僕の穴に舌を差し込む。僕は少し力を入れてお尻の穴を開こうとする。そこにエビラの舌が入ってくる。
「んんっ」
僕の力が抜ける。でも、お尻の穴は開いたままだ。その入り口の所に舌が入っている。エビラが僕の足を持ち上げる。穴も玉もちんこも全部エビラにさらけ出す。恥ずかしい。嬉しい。気持ちいい。
エビラが僕にキスをしながら手を伸ばし、お尻の穴に指を入れる。エビラの指が僕に入ってくる。僕の身体の中に入ってくる。2本目は微かな痛み。3本目ははっきりとした痛み。
「ちょっと・・・痛い」
そう言うと、エビラは一旦指を抜く、そして、また1本入ってくる。2本に増え、やがて3本目。前ほど痛くない。そのまま指が奥に入ってくる。エビラが僕の中に入ってくる。
「ああ・・・」
声が出る。また指が抜かれる。ゆっくり入ってくる。それが繰り返される。
「ああ、エビラ」
エビラを求めて手を伸ばす。エビラに抱き締められる。キスされる。
「ななちゃん、入れてもいい?」
「うん」
僕はうなずいた。エビラが入ってくる。あの大人ちんこが入ってくる。思ったほど痛みはない。奥まで入ってくる。痛みより、エビラが僕に入っているという嬉しさが勝っている。エビラが動く。僕のお尻から気持ち良さが拡がる。ずっとこれを望んでいたような気がする。中学の時も。そして、目覚めるまでの長い間も。
「ああ、エビラ」
エビラが僕に腰を打ち付ける。それが気持ちいい。
(やっぱり、僕はエビラが好きだ)
身体中でそれを感じた。
「ああ、エビラ」
エビラに入れられながら、僕は射精した。気持ちいい。嬉しい。そしてエビラも僕の中で射精した。


      


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