僕が目覚めた時、ななちゃんはまだ隣で眠っていた。
「ななちゃん」
少し小さな声で呼んでみた。でも、起きる気配はない。頭の横を覗き込んでみる。BCP(Brainwave Control Pillow)のインジケータは消えている。
(ってことは、もう書き換えは終わったんだ)
そっとベッドから抜け出して、僕の部屋のPCを確認しに行く。特にエラーは出ていないようだ。ベッドに戻る。ななちゃんの隣で横になる。
「もう、なにも考えなくてもいいからね」
そっとななちゃんに言った。
目が覚めた。隣でエビラが眠っている。その寝顔を見た途端、僕の中で何かが弾けた。体が吹っ飛ばされたみたいな気がした。もちろん、僕の体はベッドの上で動いてない。でも、僕の心は何か大きな衝撃を受けた。
「エビラ・・・」
声が震えている。手を顔の前にかざす。指もブルブルと震えている。
(僕、どうなったんだ・・・僕はどうなるんだ)
慌ててエビラの体を揺さぶった。
「ああ、ななちゃん、おはよう」
エビラは寝ぼけ眼で僕に言う。
「エビラ、僕・・・僕、なんか変」
手をエビラの前に突き出す。その指が震えてる。エビラがその手を見る。僕を見る。
「ああ、大丈夫だよ」
そう言いながら、僕の体の一点を見つめる。その視線の先で、僕は勃起していた。それに気付いて目を上げた僕の前に、エビラの勃起したちんこがあった。
「舐めろ」
エビラが僕に命じた。
「はい」
僕は口を開く。また喉奥を犯されるのを覚悟した。
「全部飲めよ」
口の中が暖かいもので満たされた。その臭い・・・エビラのおしっこだ。
(嬉しい)
すぐにそう思う。エビラの放尿は長い時間続く。寝ている間に溜まっていたんだろうか。僕はそれを喜んで飲み込む。
(ああ、エビラのおしっこ飲んでるんだ)
心が震える。満たされる。でも、喉が波打つ。
「がはっ」
僕はエビラのおしっこを吐き出してしまった。ベッドが汚れ、おしっこの臭いが立ちこめる。
「なにやってんだ」
エビラが大きな声を出した。
「ごめんなさい」
僕はおしっこまみれのベッドの上で土下座した。
「ななちゃんのくせに、僕のおしっこが飲めないって言うの?」
「ごめんなさい」
僕は震える声で謝ることしか出来ない。
「ったく、せっかくどMにしてあげたのに役立たずなんだから」
また僕は謝る。エビラに許してもらえるまで頭をおしっこ臭いベッドに押し付け続けた。
「ごめんなさい、もう一度飲ませてください。今度はちゃんと飲みますから」
エビラが僕の髪の毛を掴む。頬を平手でぶたれる。それを何度も繰り返される。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
僕の体をベッドから引きずり下ろし、床にひざまずかされる。
「ど変態のくせに」
そして僕のちんこを踏みつける。その時初めて気が付いた。僕のちんこはずっと勃起している。ずっと先走りをだらだらと垂れ流している。
「ああ、エビラ・・・もっと」
何をもっとなのか自分でも分からない。でも、もっと・・・もっとされたい。息が荒くなっている。
「ったく、このど変態が」
エビラが僕の顔の前にちんこを突き出した。
「ああ・・・エビラ」
そのちんこ。エビラのちんこ。自然に口が開く。それを咥える。また僕の口の中にエビラがおしっこを出す。それを飲む。何も考えずに飲む。エビラのおしっこを飲む、ということに興奮する。心がときめく。嬉しくなる。そんな気持ちの反面、胃の中がぐるぐるする。
(エビラのおしっこなんだから、僕はエビラのおしっこ飲みたいんだから)
そう体に言い聞かせる。言い聞かせ続ける。だけど、体は僕の言うことを聞いてくれなかった。
「ぶほっ」
また吐いてしまった。エビラの顔を見るより先に土下座する。頭にエビラのおしっこが掛かる。エビラは何も言わずに放尿し続ける。
(怒ってよ、エビラ)
エビラのおしっこを浴びながら、僕は右手で自分のちんこを握っていた。エビラのおしっこを感じながらそれを扱く。
「ああ・・・」
扱きながら顔を上げる。顔におしっこが浴びせられる。口を開く。口の中が満たされる。飲む。体が震える。おしっこが止まる。
「お前は僕のおしっこ飲めて幸せなんだからな」
僕もそう思う。大好きなエビラのおしっこなんだから。
「お前もそう思うだろ?」
「はい、そう思います」
また土下座して答えた。
「まぁ今日は最初だから許してやる。ベッドとシーツ、それからこの部屋きれいにしておけ」
「はい」
そのまま土下座し続ける。しばらく時間が経ってから頭を上げると、エビラはいなくなっていた。
ベッドからシーツを引き剥がす。それを洗濯機に入れる。
「どうしよう」
きれいにしておけと言われたけど、どうすればいいんだろう。とりあえずマットレスを抱えてみた。ぐっしょりとおしっこが染みこんでいるのか、すごく重い。それをなんとか引きずって二階のバルコニーまで運ぼうとする。引きずるだけでも大変だ。これを二階まで運ばなきゃならない。僕が悪いんだからやらなきゃならない。シーツも洗って乾かさないといけない。部屋もなんとかしないといけない。階段の下までなんとかマットレスを引きずって、そこでしゃがんで少し休憩する。
階段に座る。頭を垂れる。
(僕は駄目な奴だ)
エビラの言うことをちゃんと出来ない。だから、体がおしっこまみれだ。体中からその臭いがする。エビラのおしっこの臭い。目を閉じてその臭いに集中する。どきどきする。ちんこが勃起する。それを握る。息が早くなる。
(エビラのおしっこ・・・)
その臭いを嗅ぐだけでエビラに抱き締められているような気がする。まるで、僕の頭の中に入り込んで、脳に直接ちんこを擦りつけられてるみたいだ。
(ああ、エビラ)
なのにちゃんと飲めなかった。なんでだろう。心はこんなにエビラのおしっこが欲しいのに、体はエビラのおしっこを受け入れようとしない。心と体の違い。違和感。僕の心と後輩君の体だからだろうか。でも、お尻に入れられたあの時は気持ち良かったし、嬉しかった。何が違うんだろう。お尻にちんこを入れられて射精されるのと、口におしっこされて飲むのと。
手がちんこを握っている。それをゆっくり扱く。エビラのおしっこの臭いを感じながら扱く。マットレスに鼻を押しつける。息を吸う。肺の中がエビラのおしっこの臭いで満たされる。
「ああ、気持ちいい」
扱く手が早くなる。だけど自分ではイきたくない。イクならエビラにイかされるか、それともエビラに使われながらイきたい。手を離す。拳を握る。立ち上がってマットレスを抱える。階段を一段ずつ登る。マットレスを引っ張り上げる。
二階に着いた時には汗だくになっていた。その汗はエビラのおしっこの臭いだ。それに包まれながらマットレスを引きずる。バルコニーに通じる部屋のドアを開ける。部屋の中はカーテンが閉まっているのか、暗い。部屋の隅の方にいくつかLEDの光が見える。ここはエビラの部屋だ。初めて入る。でも、マットレスを干して乾かすためにバルコニーに出ないといけない。
「エビラ、ごめん、入るよ」
いないのは分かっているけど、そう声を掛けてから入った。暗い部屋の中にいろんな物が置いてあるようだ。あんまりそういう物をじろじろ見たり触ったりはしない方がいいだろう。マットレスを引きずり、窓の横に立て掛ける。窓の鍵を外すために、カーテンを開けた。
「えっ」
部屋の中が明るくなった。思ってた以上にたくさんの物が置かれている。三分の一は僕にも分かる。机だったり、パソコンだったり、ベッドだったり、その他にもいろいろと。三分の一は分からないけどなんとなく病院にありそうな物に見える。
そして、残りの三分の一。
それは見なかったことにした。窓を開けてマットレスをバルコニーに出す。おしっこのシミがある方を外にして、日に当たるように立て掛けた。家の中に戻り、洗面所の洗濯機を見る。シーツが洗い終わっていた。それを取り出して2階に運ぶ。バルコニーに干す。また戻って消臭スプレーを探す。洗面所にあったので、それを持ってまたバルコニーに行く。マットレスのシミになっている面にそのスプレーをたっぷりと掛ける。下の寝室に行く。雑巾で床を拭く。拭き終わると窓を開け、部屋中に消臭スプレーを掛ける。
(これでいいのかな)
僕に思い付くこと全てやったつもりだ。後は臭いが消えてくれれば・・・・・
かなり時間が経っていたので昼食にする。昨日のお皿を見つけて、炊飯器からそこにご飯を盛りつける。その皿を床に置く。少しだけ考える。そして、そのお皿の中におしっこをした。
おしっこに浸っているご飯に顔を突っ込む。おしっこの臭いがするご飯を啜り、飲み込む。エビラのおしっこで慣れたからだろうか、それとも自分のおしっこだからだろうか、前ほどはこの体も拒否はしない感じだ。食べながら勃起していた。先走りが結構溢れている。それを指ですくって舐める。ほんの少ししょっぱい気がする。ご飯を食べ終える。お皿は洗って戻しておいた。
寝室に行ってみる。臭いは少し収まった気がする。もう一度消臭スプレーを拭き掛ける。それを持ったまま二階に上がってバルコニーに出て、マットレスにも吹き掛ける。家に入る。窓の所に座ってエビラの部屋を見渡す。いろいろな物が置かれているその部屋を。
そこにあるいろいろな物の、”残りの三分の一”。それは初めて見る物ばかりだ。でも、僕はそれを知っている。立ち上がってそのうちの一つ、壁に立て掛けてある赤い×印のような物にそっと触れる。それは木で出来ていて、僕の身長よりも少し大きい。表面はなめらかで、×字のそれぞれの端っこに皮か何かで出来たベルトのような物がある。僕はその一つに腕を添えてみた。ベルトは僕の手首を覆い、バックルで固定出来るようになっている。左手を固定してみた。そのまま右手もX字に添える。
(僕を磔にするための物かな)
その他にもいろいろな物がある。手錠、ロープ、鞭。いろいろなディルド。蝋燭。
(SMの道具だよな)
ディルドを一つ手に取る。握ってみる。太い。エビラのちんこより太そうだ。僕のちんこが勃起している。
(エビラはこれで僕を犯したいのかな)
ドキドキする。部屋には他にもいろいろある。ベッドから机の方に回り込んでみた。そこには、犬を飼うような、大きな檻が置いてあった。
(これ・・・ひょっとしたら・・・僕の?)
檻の鉄格子を指でなぞってみる。なぞりながら、机の上を見る。そこにあの電気枕があった。パソコンの横に置いてある電気枕の、LEDが一つ点滅している。近寄ってみた。ノートが置いてあった。
(日誌・・・)
表紙にそう書かれている。少しだけ部屋の入り口の方を見て、そしてそのノートを手に取った。
(見ちゃダメだ)
そう心では思ったけど、僕の手はそれを開き、僕の目はそれを見た。最初のページは僕が退院し、ここに来た時の日付から始まっていた。
『今日から一緒に住む。ついに改造に取りかかる。すでに病院でL3までは済んでいるから、ここではL4からスタート』
(改造って、なんだ?)
パラパラとページをめくってみた。
『L4終了。ななちゃんは気持ち良さそうに眠っている。次はいよいよL5。ここからはまだ誰にも試したことはない。もう少しL4を延長して、ななちゃんの頭と体が慣れてからにするべきか』
どのページにも短い文しか書かれていない。そんなものだろうか、日記じゃなくて日誌なんだし。
その日誌を持って、さっき座っていた窓の所に戻る。
(L3とかL4って、僕の治療のことだろうか)
分からないけど、きっとそういう用語なんじゃないだろうか。でも、まだ誰にも試したことがないらしい。そもそも僕は僕の頭と後輩君の体をつなぎ合わせるという、たぶん世界初かそれくらいの治療をしているんだから、そういうことも必要なのかも知れない。
さらにパラパラとめくる。
『L4が終わってるので、喉を無理矢理使っても従順だ。気持ちいいとすら言っている。元々の性格がそうなのかも知れないが、BCPの効果もかなり高いようだ』
(喉って・・・あのときのやつだ)
あれが治療と関係があったというのに驚いた。あれはセックスの一つで、ずっといろいろ我慢してくれていたエビラが、やっと僕と気持ちいいことが出来るようになったから、ちょっと無理矢理っぽかったけどしたことだと思ってた。
そして、それが辛かったけど気持ち良かった。
それだけじゃない。またされたいとも思っている。
(BCPってなんだ?)
またきっと病院で使う言葉か何かだろう。更にページをめくる。昨日の日付だった。
『今日から餌は床で食べさせる。餌の最中に勃起させてたので、擦りつけてオナニーするように命じた。さすがに嫌がるかと思ったけど、素直に従った。従順に仕上がってきている。食事中にかなり屈辱的に責めてやったがそれでも喜んでいた。ななちゃんの作り変えは順調だし、思った通りになってきている。僕もそろそろ決意しないと。今夜、L5に進めよう』
昨日のこと。あの床でのご飯のこと。それをエビラは餌と書いている。
「従順に仕上がってきている」
その部分を声に出してみた。
「僕の作り変えって」
つぶやいていた。
(エビラ、僕になにをしてるの?)
『明日目を覚ましたら、全部忘れてるさ』
昨日、寝る前にエビラが言っていたことを思い出した。そうだ、僕は不安を感じていたんだ。だけど、今朝起きたときにはそんなことは全然覚えてなかった。覚えてなかったし、エビラを見たときに何か衝撃みたいなものを感じた。
あの時、僕は電気枕で眠っていた。
電気枕でエビラが僕を治療してくれている。それはあの体が動かなくなった時に言ってたし、確かにあのあと体がなんとなく軽くなった気がした。
でも・・・・・
指が震えていた。
(そうだ、電気枕)
立ち上がり、机の上に置いてある電気枕に近づいた。LEDが一つ点いている。目を近づけると、その上に「CHARGE」と書かれていた。ダイヤルを見る。前に見た時は「4」だった。でも、今は「5」になっている。
「これって・・・L5ってこと?」
だとしたら、僕はすでに誰にも試したことがないというL5という設定で治療されている、ということだ。
本当に治療なんだろうか。
少し気が動転している。でも、なんだか腑に落ちたような気もする。僕が前に感じていたこと。確か、違和感。今は感じていない。それから不安。これも今は感じていない。エビラがいるから。エビラが治療してくれているからそういうことは気にならなくなったんだろうと思っていた。
でも、そうじゃなくて・・・・・
改造・・・
作り変え・・・
つまり、僕はエビラの手で、この電気枕を使って、前の僕から改造されているというんだろうか。それを考えるといろいろと疑問が湧いてくる。
本当に、あの地震から15年経ってるんだろうか?
それは確かにそうだ。テレビやネットで目にする日付は間違いなく15年後だ。
じゃあ、あの地震、本当にそんなに大きな被害があったんだろうか。
これも街がすっかり変わってるから、たぶん、かなり大きい地震だったんだろう。
でも、僕の家は潰れたんだろうか。
僕の両親は、本当に亡くなったんだろうか。
そして、そのことに思い至った。
僕は、僕の体は本当に潰れてしまったんだろうか。
後輩君、確か中原君は本当に死んでしまったんだろうか。
胸が苦しくなってきた。手が震える。ノートを取り落とす。
「エビラ・・・信じていいの?」
声が震える。
いや、そもそも・・・・・あの人は本当にエビラなんだろうか。
胸が苦しい。息が出来ない。
僕はその場で床に倒れ込み、動けなくなった。
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