アイ・コンタクト


「俺、一個下の奴に、その・・・」
玖翔は何も言わない。それどころか、俺を見てもくれない。
「部活終わりに部室でオナってるの見られて、それでしゃぶらせて、しゃぶらされて、それから・・・」
玖翔がまた俺の方を向いた。
「そんなことしてるんだ」
玖翔が口を開いた。
「え?」
「部室でオナニー」
「う、うん」
玖翔は俺を見ている。あの目が俺を見つめている。あの目で見つめられながら、俺は全裸で勃起させている。
「それで、ケツに・・・入れられて」
だんだん声が小さくなっていった。
「時々・・・そいつに使われてる」
俺は両手を前に突いた。
「ごめんっ」
頭を下げる。玖翔は相変わらず何も言わない。そのまま、頭を下げたまま時間が過ぎる。
「なんで謝ってるの?」
ようやく玖翔が口を開いた。
「だって、俺・・・玖翔の・・・」
自分から、玖翔の物だと言うのは少し抵抗を感じた。でも、言わなきゃならない。顔を上げる。玖翔が俺を見ていた。その目を見る。言える。
「俺は、玖翔の物だから」
目と目を合わせて言った。ちんこが脈打つ。俺の体が熱くなる。
でも・・・
「ふうん」
それだけだった。玖翔は大して興味なさそうに、またスマホをいじり始めた。
「お、俺、お前以外の奴とそういうことしちゃったんだよ?」
当然、何か言われると思っていた。怒られるか、責められるか。
「なんか言えよ」
でも、玖翔は何も言わない。また時間が過ぎた。
「なんか・・・言ってよ」
俺は小さな声を絞り出した。

玖翔が俺を見ていた。俺の前に立って、俺を見下ろしていた。俺は顔を上げていた。玖翔の目を見ていた。二人ともそのまま動かない。
と、玖翔がベッドの上に戻った。俺に背を向けて横になる。
「そいつ、連れてきて」
それだけ言った。その日はそれで終わった。俺がどんなに待っても、それ以上は何も言わなかったし、いつものようにオナニーをすることもなかった。



俺は中野を玖翔の家に連れて行った。もちろん、中野は俺と玖翔の関係、俺は玖翔のティッシュペーパーだ、ということは知らない。
いつものように玖翔はベッドに横になってスマホをいじっている。俺はいつもとは違って服を着たままベッドの横にあぐらをかいていた。中野は俺の後ろの方の壁際に立っている。
そのまま時間が過ぎる。
「なにか用があるんじゃなかったんすか?」
やがて、中野がしびれを切らして口を開いた。でも、俺も玖翔も何も言わない。また時間が過ぎる。
「なにもないなら、僕、帰るっす」
中野が帰ろうとした。
(俺がちゃんとしないと)
その瞬間、強烈な義務感のようなものが湧き上がった。
「俺は玖翔の物だから」
一気に吐き出すように言った。
「へ?」
中野が驚く。そんな中野の目の前で、俺は立ち上がり、いつものように全裸になって正座した。
「なに、先輩、どういうこと?」
中野が少し笑って俺の股間を覗き込み、俺の顔を見る。俺は顔を伏せない。まっすぐ玖翔の頭を見ている。玖翔がこっちを向いた。目が合った。
「言った通りだ。俺は玖翔の物だ。だから、お前とはもう、しない」
玖翔の目を見ながら言った。
「ふうん、先輩、この人とそういう関係なんだ」
中野が言う「そういう関係」というのがどういう関係なのかは分からない。たぶん、いつも中野が俺にしているよなことをされる関係だと思ったんだろう。
「違う。玖翔はなにも言わないし命令もしない。俺がしたいからしてるだけだ」
すると、中野が誤解した。
「先輩、タチりたいってこと?」
「違う」
俺は中野を見た。中野の目を見た。
「俺は、自分から、玖翔の奴隷になってるってことだ」
自分に言い聞かせるように区切りながら言った。

「先輩が、サッカー部のエースが、奴隷?」
中野は言う。
(お前だって、俺を玩具にしてるくせに)
「俺は玖翔の物だ。それだけだ」
中野がベッドに近づき、片足をベッドに掛けた。そして、俺達に背を向けていた玖翔の体を無理矢理こちらに向けさせた。
「こんなだっさいメガネに、なんで先輩が」
俺は中野の手を掴んで玖翔の体から引き剥がす。
「そんなことは関係ない。俺がそう決めたんだ」
「ははっ 先輩、こんな奴が好みなんだ。そういうフェチだったんすね」
「違うって」
中野の手を引いて、座らせる。
「なんて言うか、相性というか・・・」
「なに、そんなにケツの締まりがいいんすか?」
おっさんみたいなことを言う奴だと思った。
「そんなことじゃない」
「じゃ、ちんこがめっちゃデカくて気持ちいいとか?」
「だから・・・そういうんじゃないって」
「じゃ、どういうの?」
そう聞かれて答えに詰まった。
「俺は・・・その・・・」
俺が答えられずにいると、玖翔と目が合った。
「その、玖翔の目が・・・」
「目?」
中野が玖翔に近づいて顔を合わせる。目を見ているのだろう。
「目がどうしたの?」
やっぱり、俺以外の奴は、玖翔の目の力を感じないようだ。
「玖翔の目に見つめられると、俺、おかしくなるんだよ」
(また誤解されそうだな)
一息吐いて、ちゃんと説明することにした。
「玖翔の目を見ていると、俺の中の欲望が疼きだすんだよ」
落ち着いて話そうと努力する。
「その欲望っていうのが、その、エロいことで・・・玖翔の目にはそういう力があるんだよ」
「僕はなにも感じないっすけど?」
「たぶん、俺だけ・・・だと思う、その力を感じるのは」
ちらりと玖翔を見る。俺達を見ている。
「だから、俺は、玖翔の目から逃れられない。あの目が好きなんだ」
少し体が熱くなる。
「だから、お前とはもうしない」
「それが言いたくて僕を呼んだんだ」
俺は玖翔を見た。中野を呼べと言ったのは玖翔だったから。
すると、玖翔が口を開いた。
「君、沖君犯してるんでしょ? 今、ここでやって見せて」
俺と中野が顔を見合わせた。

「ちょ、ちょっと、なに言ってるんだよ」
俺は慌てて玖翔に言った。
「そういうの終わらせるために、連れてこいって言ったんじゃ・・・」
玖翔と目が合った。心の奥が脈打った。
「訳分かんないっす」
中野が立ち上がる。玖翔の目が俺を支配する。いや、俺の欲望が俺を支配した。
「中野・・・・・」
俺は中野の手を握った。なんだかふわふわする感じ。
「中野・・・犯して」
「はあ? なに言ってんすか、先輩」
自分でもおかしいと思う。いや違う。俺は今、中野に犯されたい。玖翔の目の前で、玖翔に見られながら中野に犯されたいと思っている。心から。
「犯してよ、中野」
手を引っ張り、強引に押し倒す。そのまま覆い被さってキスをする。口を押し付けて舌を入れる。舌を動かすとコポコポと音がする。
「ちょ、ちょっと、先輩、無理だって」
中野は俺を押しのけようとする。そんな中野の腕を掴む。押さえ付ける。また口を押し付ける。シャツを捲り上げて乳首にもキスをする。
「だ、だから、先輩」
そう言いながら、中野の抵抗が少し弱くなる。
「分かった、分かりましたって、先輩」
中野が体を起こした。俺の両肩に腕を置く。
「もう、この、変態」
そのまま押し倒される。玖翔の方を見る。玖翔は俺を、俺達を見ている。
中野が俺の足を持ち上げる。
「そんなに見られながら犯されたいなんて、ホント、先輩は変態すね」
そして、穴に口を押し付けてくる。舌が穴の周りを這う。中野が顔を上げる。
「いつもみたいにくっさい臭いさせて、この、変態が」
玖翔が見ている。俺の中に衝動が沸き起こる。
「俺も、ケツの穴舐めたい」
中野が俺を見た。全裸になって、仰向けの俺の顔の上にケツを下ろす。
「ほら、舐めろよ、沖先輩」
俺は舌を伸ばした。その舌が中野の穴に触れる前に、玖翔を見る。玖翔は俺達を見ている。いや、俺を見ている。俺は中野の穴を舐め始めた。
「ああっ」
中野が声を出す。そのまま舐め続ける。なんだか苦い味がする。
「沖先輩の・・・変態がっ」
中野の穴の入口のところで舌を細かく動かす。
「ああああ」
俺の上で中野が体を反らせる。
「お前も変態じゃん」
そう言ってまた続きをする。手でケツを開いて穴に舌の先を押し付ける。
「くっ やめろよ、この、変態」
中野が腰を浮かせた。そのまま俺の顔から離れる。
「先輩の方が変態だって分からせてあげますよ」
そして、また俺の足を持ち上げる。そして、勃起した熱いちんこを俺の穴に押し付けた。
「はぁ」
「ほら、ちんこ押し付けられただけで気持ちいいんでしょ、変態の沖先輩は」
そのまま腰を押し付けてくる。玖翔を見る。玖翔は俺を見ている。
「ああ、中野、犯して」
口を衝いて出た。
「犯して下さい、でしょ、沖先輩」
また玖翔を見る。その目を見る。俺の体の奥がじんじんする。
「犯して下さい!」
そして、中野が入ってきた。

「ああっ」
俺は声を上げる。玖翔が見ている。いつの間にか、玖翔はズボンをずり下げて、勃起したちんこを扱いている。
(玖翔が、俺を見て、扱いてる!)
純粋に悦びを感じた。その悦びが気持ち良さになって体に拡がる。
(玖翔を、舐めたい)
俺は中野にケツに入れられたまま、少しずつベッドの方に這い寄った。中野は俺を犯すのに夢中だ。そして、俺も時々体が動かせなくなるような気持ち良さを感じる瞬間があった。その瞬間は玖翔も中野も関係なかった。ただ、体の、ケツの内側が熱くてじんじんしてむずむずして、それが体中に拡がる瞬間だった。
(お、俺は・・・)
たぶん、その瞬間は純粋にセックスが、ケツを犯されているのが気持ちいいと感じてるんだろう。
(違う、俺は)
犯されながらベッドににじり寄る。玖翔は相変わらず俺を見ながら扱いている。もう少しで玖翔の体に触れられそうだ。が、中野がそれに気が付いた。
「ダメだよ、先輩。先輩は僕に犯されたいんでしょ?」
そして、俺の足を抱えてベッドから離れる。玖翔との距離が離れてしまう。
「ほら、先輩、僕に犯されて嬉しいでしょ?」
中野が腰を打ち付けてくる。体の奧にそれが拡がっていく。
「ほら、見られながら僕に犯されて、気持ちいいでしょ?」
「は、はい」
思わずそう口走った俺のちんこがビクビクと揺れていた。


      


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