3ヶ月が経った。異獣はその間、5回出現していた。が、ロボットは一度も動かない。
「起動のための条件があるはずだ」
そう考えた古代研究所と軍は、何度も会議を重ね、調査を行った。最も可能性が高いのは、何らかの方法での外部からの操縦だ。が、ロボットが起動し、異獣と戦っている間、通常の無線通信等を除いて既知の電波はもちろん、可視光域、それ以外、音波等、人類が知るあらゆる電波は発信されていなかった。有線でのコントロールは考えにくい。ましてやあのロボットが自律的に起動し、戦ったとも思えない。
「どうなっているんだ」
古代研究所のメンバーは困惑し、軍は苛立った。ロボットが現れ異獣と戦ったことは、人々にも知れ渡っている。なぜロボットを戦わせないのかとの人々の声ももう抑え切れないほど大きくなっていた。
「何でもいい。手がかりを探せ」
それが軍の命令だった。もう後はない。
そんな時だった。
「所長」
ある研究員が、古代研究所の警備員を連れて所長室を訪れた。
「ひょっとしたら、何らかの手がかりになるかと思い・・・」
研究員の説明は妙に歯切れが悪かった。
「どんな些細なことでも、関係ないようなことでも構わない」
そう促すと、研究員はメモリーチップを差し出した。
「これは、あの日、警備用のカメラの映像です」
所長はそれを受け取り、デスクの上の端末に差し込んだ。端末の画面に、森の奥の少し開けたところが映し出された。しばらくすると、そのカメラの前を少年と思しき姿が通る。奥の開けたところに入る。すると、少年の前に男が3人現れた。研究員がそこで映像をストップさせた。
「ここから先は少し不快な映像になります。が、あのロボットの戦闘時の映像と時間を合わせて見てみてください」
所長は研究所のサーバからあの時の映像を取り出し、再生する。2つの映像を左右に並べ、時間を合わせる。
森の奥では、少年が男達に押さえ付けられ、上半身裸にされている。異獣の映像の方にはまだロボットは現れていない。
「この後です」
警備員が画面を見ながら言った。
『い、嫌だぁ!!!』
少年が叫んだ。その瞬間、もう一つの画面に突然ロボットが現れた。
所長が研究員を見上げる。
「続きを」
研究員に言われ、画面に目を戻した。
森の映像では、少年が男に足を縛られていたが、その体から男が離れ、少しの間、少年は自由になった。
「ここです」
異獣とロボットの映像に目を向ける。少年が自由になったとたん、ロボットの動きが止まる。そのまま異獣に体当たりされ、ひっくり返る。
少年がまた押さえ付けられる。すると、ロボットが立ち上がった。
さらに映像では少年が男達に何度も犯されていた。その間、ロボットは異獣と戦っている。
「こんなことは・・・」
所長がつぶやく。
「驚くのはまだ早いです」
男達に犯され、ペニスを扱かれている少年の体が上気し、ほんのりとピンク色がかっているのが画面でも分かる。
「ほら、ここ」
もう一方の映像の中で、ロボットの体が光り始めた。
「この後です」
二つの映像に見入っている所長の耳にはその言葉は届いていないかのようだ。
「ここ」
映像の中の少年が叫んだ。
『ああ、い、いく!!』
その瞬間、異獣とロボットの方の映像が赤く染まった。
その後の映像には、去って行く男達とぐったりした少年、そしてロボットしか映っていなかった。そして、少年がようやく体を起こした時、ロボットが消えた。
「これは・・・」
すると、警備員が説明した。
「あの日、研究所敷地内の監視カメラの映像です。ご覧いただきました通り、全くの同時刻です」
「しかも、少年の動きとロボットの動き、シンクロしてますよね?」
研究員も少し興奮しているようだった。所長は椅子に体を預け、腕を組む。
「確かにそう見える。だが、これだけで結論づけられるものではない」
そして、研究員と警備員に命じた。
「この少年と男3人を見つけ出せ。すぐにだ」
「了解しました」
二人は声を合わせた。
「軍にも協力を依頼しておく。最優先で対応してくれ」
二人は部屋を出ていく。所長はもう一度、二つの映像を見比べ始めた。
「1年4組の春田健志君、すぐに校長室に来るように」
授業中、急に放送が入った。しかも、僕の名前だ。
「先生」
僕は立ち上がる。先生が僕を見て頷いた。
「健志、何やったんだ?」
授業中に呼ばれるなんて、よっぽどのことだ。みんなが僕が教室から出ていくのを目で追いかけた。
「ほら、授業に集中しろ」
先生の声が聞こえた。
校長室には、校長先生と、体の大きな少し怖そうな人がいた。校長先生は少し小柄だから、もう一人がやたら大きく見える。
「君が、春田健志君?」
大きい男が僕に尋ねた。
「はい」
僕は短く返事する。
「君は4ヶ月前の3月19日、古代研究所の敷地内に侵入した。間違いないな?」
急に心臓がドキドキし始めた。僕が忍び込んだことがバレたんだ。たぶん、言い逃れできないんだろう。僕は素直に頷いた。
「はい」
「そこで、3人の男に強姦された。これも間違いないな?」
僕はその人の顔を見た。何の感情も伝わってこない顔だ。校長先生を見る。校長先生は少し困惑しているようだ。
「そうなのか、春田君」
おそらく、この大きい男には全て分かっているんだろう。でも、はいとは言い難い。すると、その男が1枚の写真を取り出し、僕の前に置いた。そこには、二人に押さえ付けられ、もう一人に犯されている僕が写っていた。
「はい・・・そうです」
僕はうつむきながら答えた。そう答える以外、何と言えばいいのか思いつかなかった。
「私と一緒に来なさい」
逮捕・・・僕の頭にはその二文字が浮かんだ。
「君を不法侵入罪に問うことはしない。その代わり、我々に協力してもらう」
男が言った。
「こちらは軍の方だ。何をしたのかは知らないが、協力して差し上げなさい」
校長先生が言った。この世界では軍の力は大きい。おそらく校長先生が校長先生でいるためにも協力することが必要なのだろう。
「はい」
僕は小さな声で答えた。
男に連れて行かれたのは、古代研究所だった。
(また来るなんて)
古代研究所に続く広大な森を走る車の中で、僕は思った。
僕はもう二度とここには来ないつもりだった。あの日、あのこと。思い出したくない出来事だ。あの日、あれが終わった後、僕は引き裂かれた服を何とか身に着けて宿舎に帰った。宿舎では誰も僕のことなんか気にしない。ここではみんなそうだ。他の人のことなんて気にしない。お風呂に入って、ベッドに横になる。頭に浮かぶのはあの時のこと。体の痛み。お尻の痛み。そして強烈な・・・あれを快感だなんて認めたくはない。あの時のことを思い出すと勃起してしまう。そんな自分が嫌だった。そんなこと、考えたくもない。
『こんなところにいるお前が悪いんだ』
男の声が聞こえた。
(そうだ、あんなところに行った僕が悪いんだ)
僕は布団を頭から被った。ぎゅっと目を閉じて、眠ろうとした。でも、眠れなかった。
古代研究所で、僕は広い会議室に連れて行かれた。大きなロの字に置かれたテーブルの前には、すでに何人か座っている。僕も座らされる。顔を上げる。
「あっ」
目の前に3人、さっきの軍の人とも、ここの職員とも違う服の男が座っていた。その顔は忘れようがない。あの3人だ。僕を犯した3人だ。
僕から見て一番右に座っていた男が、僕を見てニヤッと笑った。僕はあわてて目を逸らし、うつむいた。そのまま僕は顔を上げなかった。
ドアが開く音。誰か、何人かが入ってくる足音。椅子が引かれる音。そして、声がした。
「揃いましたので始めます」
そして、僕の名前が呼ばれた。仕方なく、僕は顔を上げた。
「君は3月19日、この古代研究所に不法侵入した。間違いないな?」
この会議室の正面になるところに座っている3人の、真ん中の人が僕に尋ねた。その人の服装から、おそらく軍の人だろう。右側にいる人も軍の制服を着ている。左側の人は古代研究所の服を着ていた。
「はい」
小さな声で答えた。
「もっと大きな声で、皆に聞こえるように」
「は、はい」
僕は声を上げた。
「そして、君の正面の3人に強姦された。間違いないな?」
チラリと僕の前のあの3人を見た。すぐに目を逸らし、はいと答える。
「事実確認は以上だ。本題に入る」
僕が古代研究所に忍び込んだことも、僕があの3人に犯されたことも本題じゃないってことだ。だったら、なんで僕は連れてこられたのか。そしてどうしてあの3人がいるんだろうか。
「まずは、これらの映像を見てもらいたい」
会議室の正面の大きなモニターにノイズが映し出された後、映像が切り替わった。
二分割された画面の左側には森の中で男達に押さえ付けられている僕が、そして右側には恐竜が映っている。
『こんなところにいるお前が悪いんだ』
男の声が会議室に響く。そして、ボタンが弾け飛ぶ音さえも。
「この後です」
誰かが言った。もう一つ画面が、恐竜が映っている方の下に小さく表示された。そこにはあのロボットが横たわっている。
『嫌だぁ!!』
僕の声だ。耳を塞ぎたくなる。僕はモニターから目を逸らした。
「おお・・・」
会議室に声が沸き上がった。チラリとモニターを見る。恐竜の前にロボットが現れていた。
それからは苦痛の時間だった。僕が男達に犯されている映像が皆の前で流され続けている。一瞬、男達が僕を押さえ付けていた手を離し、僕は自由になった。その瞬間、ロボットの動きが止まる。恐竜に体当たりされてロボットがひっくり返る。また僕は押さえ付けられる。すると、ロボットが動き出す。
「これは・・・」
誰かの声。そして、視線を感じた。顔を上げる。皆が僕を見ていた。
「君は・・・何をしたんだ」
別の誰かが言った。
「まだです。モニターを注目ください」
また声がする。モニターの中で、僕は男達に代わる代わるアナルを犯されている。
ロボットが恐竜を投げ飛ばす。
そして、僕の体が仰け反り、痙攣する。僕が射精する様子が映し出される。僕は顔を伏せて耳を手で覆った。
「ああっ」
それでも、あの時の声が僕の耳に届いた。
ロボットの体が光り始めた。僕のあの声と同時に画面が真っ赤になった。
そして、その光が収まった時、モニターの右側にはロボットしか映っていなかった。
「最後も注目です」
左側の映像から男達が消えていった。僕は一人、全裸で取り残されている。そして、僕は体を起こして嗚咽を漏らした。
その時、右側の映像からロボットが消えた。
「君は、何をしたんだ」
さっきの人が同じ問いをもう一度投げかけた。皆が僕を見ている。
「ぼ、僕は・・・分かりません」
小さな声しか出なかった。もちろん何もしていない。何も知らない。僕は、ただ・・・
「ただ・・・されてただけです」
声が震えた。
「それで、あのロボットが動き出すというのはどういうことなんだ?」
大きな声がする。
「まあまあ、もう一つ、こちらも見て頂いてからにしましょう」
モニターが一瞬真っ暗になった。次に、さっきと同じ映像。また、僕があの男達に犯されている映像だ。右側に恐竜。そして、その画面の下に黒い帯がある。
映像が始まる。
『こんなところにいるお前が悪いんだ』
またここからだ。
「下のグラフは、この少年の思念波です。その強さを棒グラフで表しています」
画面の下の黒い帯のところに、緑色の棒グラフが表示されている。
『嫌だぁ!!』
僕が叫んだ瞬間、その棒グラフが黒い帯の一番上まで伸びる。ロボットの動きが止まったところでは、緑の棒が消えた。それ以外のところでは、緑の棒が激しく上下していた。
そして、あの瞬間・・・僕が射精する瞬間も、緑の棒は一番上まで伸びた。
「つまり、この少年が性行為で興奮するとあのロボットが動き出す、とでもいうのか?」
その会議室の中で、おそらく一番年上の、一番偉いと思われる人が言った。
「今言えることは、この少年が彼等に暴行された時の思念波の強さとロボットの動きがシンクロしている、という事実だけです」
「ならば、今、ここで試してみるしかないだろ」
「ここで、またこの男達に少年を犯せ、とおっしゃるのですか?」
誰かが言った。
「そうだ。次、いつ異獣が出現するか分からない。我々には時間がないんだ。今、ここで試さないでどうする?」
一番偉い人が言った。僕は自分の耳を疑った。またあの男達に、あんなことを・・・僕の体が震えだした。
「今のところ、残念ながら我々にはあの異獣を倒せる力はない。あのロボットが動かせるというなら、この少年には犠牲になってもらうしかない」
ロの字に置かれたテーブルの真ん中に、緑色のマットが運び込まれた。
「お前ら。この時と同じように、この少年を犯すんだ」
あの3人も少し戸惑っているように見える。
「我々の命令に従うなら、お前らの罪は不問にしてやる」
すると、3人のリーダー格の男が笑った。
「そいつぁいい。またこいつを味わえて、今までのことも帳消しになるんなら」
テーブルを押しのけて、緑のマットのところに出てきた。
「君も入りなさい」
僕の前のテーブルが横に動かされた。でも、僕は動かない。
「嫌です」
小さな声しか出ない。
「やるんだ」
大きな声がした。僕の体がビクッと動く。でも、僕は立ち上がらない。
「嫌です」
声が震える。誰かが僕の腕を掴んだ。体を引っ張り上げられ、立たされ、緑のマットの上に突き飛ばされた。
「嫌・・・もう、嫌だ」
涙が出ていた。
「構わん、やれ」
男3人が僕に襲いかかった。
「嫌だぁ!!」
僕は叫んだ。あの時のように。
会議室にいる人達は、誰も僕を見ていなかった。彼等は皆、モニターを見ていた。そこにはあのロボットが横たわっている映像が映っている。僕がどんなに叫んでも、わめいても、痛がっても、苦しがっても、誰も僕を見向きもしない。
「なぜ動かないんだ」
「もっと無理やり、激しく」
そんな言葉が聞こえてくる。僕を犯している男達が少し手を止めてモニターを見る。
「続けろ、もっと激しく」
男達が僕のアナルを犯す。順番に、何度も何度も犯される。誰も止めてくれない。誰も助けてくれない。
「ああっ」
不意にあの感覚が襲ってきた。男に扱かれているペニスの奥から熱い塊が僕の体を突き抜ける。
僕の体が仰け反る。皆の前で、屈辱に塗れながら僕は射精した。 |