「そんなにしょげるな。少なくとも起動条件が見つかったから、犯される回数は減るはずなんだから」
監視役の男、黒木は、古代研究所の制服ではなく軍服を着ていた。彼は所属が変わり、そして春田少年の管理者となった。つまり、春田少年はこの黒木の命令に従わなければならないということだ。
小さく狭い部屋で春田少年は全裸だった。部屋の隅には畳んだ軍服が置いてある。それは軍の管理下に入った少年に支給されたものだった。が、少年はそれを着ることを拒否した。
黒木はそれを黙認していた。異獣が出現した際には、どうせ少年は全裸にされ、犯される。それを考えれば余計な手間が省けるというものだ。しかし、ここしばらく、起動条件が見つかる少し前から今まで、異獣は出現していなかった。それが、軍が自分達の都合に合わせて異獣を出現させているのではないかとの噂を呼んでいた。
人類が地球を見捨てるかなり前から、テレビというものは世の中から完全になくなっていた。報道や娯楽はネットから入手するようになっていた。ここでも同じだ。そういったニュースはネットで入手し、噂はネットで広がる。そして、そのネットは実は軍が管理していた。したがって、このような噂を封じ込めることは軍にとってはごく簡単なことだった。が、それをしなかったのは、ある意味『はけ口』が必要だったからだ。噂がネットから拡散することを容認する代わりに、それはフェイクニュースだという噂も流した。異獣との戦いについてもかなり大袈裟な情報がネットには流れていた。実際の戦果はほとんどない。が、軍は勇敢に戦い、ある程度の戦果を上げつつあることが強調されていた。
そして、あのロボットの噂も。
春田少年の日常生活は保証されていた。今まで通り、学校にも通えるようになった。が、その保証の範囲は軍により定められており、そして状況に応じて変更される。それでも少年には拒否権はない。彼があの部屋から出られるのは、軍が許可した時だけだ。それは主に通学時と、起動実験時、そして異獣との戦闘時のみだった。
「時間だ」
黒木がボタンを押して話しかける。狭い部屋ではスピーカーからその音が伝わる。春田少年は動かない。いつものことだった。
「ほら、第73次起動実験だ」
ガラスが上にスライドし、黒木が部屋に入ってくる。少年の腕を掴んで立ち上がらせ、別室に連れて行く。
その部屋には二人の男がいた。すでに相手の人数が増えた場合については、6人までなら検証済みだった。そして、今日は人数が減った場合の起動実験だ。
黒木は、増える方は何人に増えても問題ないが、減る方は起動できなくなるのではないかと予想していた。そして、その起動実験の結果は予想通りだった。
「やはり、思念波の強さは相手の人数にある程度比例するようだな」
すでに、春田少年が発する思念波によってロボットが起動することが分かっていた。麻酔薬で眠らされた状態で犯されたり、麻薬を投与されながら犯されるといった、正常な思念波が発せられない状態で行われた起動試験により、それが証明されていた。そして、思念波があるレベルを超えなければロボットは起動しないこと、そして、その『あるレベル』を超えると、少年とロボットがどれだけ離れていても起動できることも分かった。
次に調べるべきは、その操縦方法だった。どうすればあのロボットはどのような動きをするのか。少年がどうされればあのロボットはどう動くのか。その検証には慎重にならざるを得なかった。古代研究所はすでに軍の管轄下に置かれていたが、その軍であっても先日のような外壁破壊がたびたび発生すると、補修予算が圧迫されてしまうからだ。
だから、軍は異獣の出現を期待した。
「W62地区に異獣出現。付近の住人は直ちに避難してください」
その時が来た。春田少年は教室で授業を受けている最中だった。
校内放送で呼び出された少年は、校長室に向かう途中で黒木に呼び止められた。
「こっちだ。急いで」
緊急車両に乗せられ、古代研究所に急ぐ。学校の窓から彼のクラスメイトが皆、それを見送っていた。
「ほら、早く」
5分ほどで車は古代研究所に到着した。正面入り口ではなく、裏口に車を着ける。そこで職員がドアを開けて待っていた。
「そこの部屋で」
入ってすぐ左側の部屋を指さした。春田少年がその部屋に入ると、すでに見知らぬ男3人が全裸で待っていた。
「早く脱いで」
着ていた学生服を脱ぐ。
「早く!」
古代研究所の職員が急かした。
異獣が街を破壊する様子が司令室中央の大きなモニターに映し出されている。
「ロボット起動はまだか」
所長が声を荒げる。
「まだです。まだ格納庫のままです」
正面の異獣の映像が映し出されているモニターの左側、小さなモニターには格納庫の様子が映されていた。そして、右側のモニターには別の部屋の様子が映し出されている。3人の男が待つその部屋に、今、まさに春田少年が入ってきた。
「記録開始だ」
所長がマイクに向かって言った。3つのモニターの右下に、赤い丸いマークが表示された。
春田少年が下着だけになったところで、待ち構えていた男3人が彼に近寄る。
「犯ってください」
少年の後から部屋に入ってきた黒木が言った。男達は少年に群がった、
モニターに全裸の春田少年と3人の男達が映っていた。
「早く犯せ」
所長がつぶやく。右のモニターの中で、少年が男達に押し倒された。
「嫌だぁ」
少年の声が、司令室に響く。
「ロボット、起動しました」
所長が左側のモニターに目を向ける。格納庫の映像からロボットが消えていた。ほんのわずかな時間の後、真ん中の一番大きいモニターの中にロボットが現れた。
「ロボット、瞬間移動しました」
男達の荒い息遣いと少年の苦痛のうめき声が聞こえている。
「うぐ・・・」
少年の口の中に男のペニスが差し込まれた。
ロボットが異獣と組み合った。
男が少年の口に腰を押し付ける。別の男が少年の尻を開き、アナルを舐める。
ロボットが異獣を投げ飛ばす。倒れた異獣の上にのしかかる。
「ああっ」
少年のアナルに指が挿入されている。ペニスはすでに勃起していた。
「心は嫌がっていても、体は反応するんだな」
壁にもたれて少年が犯される様子を眺めていた黒木がつぶやいた。
異獣に馬乗りになったロボットが、腕を振り上げる。
男が少年のアナルにペニスを差し入れる。
「ああ!」
ロボットが腕を異獣に叩きつける。
男が少年のアナルで動く。別の男が少年のペニスを扱いている。少年の口にはもう一人の男のペニスが差し込まれている。少年の喉からはゴボゴボと音がしている。
異獣がロボットを押しのけ、立ち上がる。そんな異獣にロボットが体当たりする。
少年を掘っていた男が交代する。さらに激しく少年は犯される。男達が少年の体をおもちゃのように弄ぶ。
「はぁ」
少年の体が仰け反る。二人目の男が少年の中でいき、3人目に交代した。
「あああ」
横になった男の上に少年がまたがり、男のペニスを受け入れている。別の男がそんな少年を背中から抱きしめ、乳首を弄ぶ。首をねじってキスをする。舌を少年の口に入れ、少年もそれを返す。もう一人、一番先に少年の中でいった男が少年のペニスを扱く。
「うぅ」
ロボットが異獣から少し距離を取った。
少年は自ら腰を上下させる。
「あ、ああっ」
ロボットが光り始めた。
「いくっ」
3人の男に弄ばれ、男の手でペニスを扱かれながら、少年は射精した。
中央のモニターが赤く染まった。
少年と同時に男もそのアナルの奥で絶頂を迎えた。3人の男と少年は、快感とも苦痛ともつかないその時を終えた。
中央のモニターの赤い光が消えた。異獣の姿は消えていた。
「時間は?」
所長が尋ねた。
「9分13秒です」
「ということは、ロボットが異獣を消滅させた、ということか」
誰かが拍手をした。それは司令室中に広がった。が、所長は拍手はしなかった。
「すぐに映像を分析に回せ」
まだ中央のモニターの中ではロボットが立っている。が、ただ立っているだけだった。
男が少年から離れた。少年のぽっかりと開いたアナルから、その中の3人分の精液が滴り落ちる。真ん中のモニターからロボットが消えた。次の瞬間、その姿が左のモニターに現れた。
「ご苦労様でした」
黒木が脱ぎ捨てられていた少年の学生服を拾い上げながら、3人に声をかけた。
「学校に戻るぞ」
少年に学生服を差し出す。少年は立ち上がり、服を受け取る。
「では、こちらに」
黒木が3人を連れて部屋から出て行った。少年は一人、部屋に取り残された。
長い時間をかけて、春田少年は学生服を着終えた。
「はぁ・・・」
大きなため息を吐く。
「なんで・・・」
その姿は司令室のモニターにも映し出されている。
「かわいそうに」
司令室で誰かがつぶやいた。
「でも、体仰け反らせて射精してた」
別の誰かが言った。
「結局、気持ち良かったってことだろ」
モニターの中で少年がしゃがみ込んだ。
「腰が抜けたか?」
くすくすと笑い声が司令室に広がった。
久しぶりの異獣の出現から4日間、異獣は毎日出現した。その度に少年は学校から呼び出され、古代研究所の一室で男達に犯された。春田少年が呼び出され、連れて行かれる様子を毎日見ていて、そして、ネットで異獣の出現とロボットとの戦いを知っていた彼のクラスメイト達の中で、誰がロボットを操縦しているのかについての噂が立ち始めていた。
「春田なんじゃない?」
「まさか」
「でも、あいつ毎日どっかに連れて行かれてる」
「恐竜が出た時間にね」
春田少年には、そんな疑いの目と、そしてあのロボットの操縦者としての羨望の目、それ以外にも特別な存在であるかもしれないということに対する羨望、妬み、色々な目が向けられた。
異獣との戦いにおいて、軍がロボットを投入しているということはすでに公表されていた。が、そのロボットの操縦者については一切伏せられていた。しかし、それはほぼクラスメイトの中では常識になっていた。
春田健志こそが、その操縦者なのだ、と。
あの大きな会議室に人が集められていた。
先日のロボットと異獣の戦い、そして春田少年が犯される様子の映像が並べて流されて、詳細な分析結果が報告された。
「以上から、ロボット起動後の少年とロボットの行動の間には、射精時以外は特別な因果関係は認められません」
皆、資料を見つめている。
「おそらく、ロボットは異獣と戦うようプログラミングされているか、或いは自律制御していると思われます」
「自律制御か・・・」
誰かがそうつぶやいた後、少しの間、沈黙が続いた。
「次の議題に移らせていただきます」
モニターが切り替わる。
「次は、あの少年以外の操縦者の可能性についてです」
皆一斉にモニターを見る。
「ランダムに抽出した13才の少年50人を被験者とし、彼等と面識のない者3人との組み合わせで起動実験を実施しました。その結果」
モニターの表示が切り替わる。
「すべての組合せで起動できた例は一例もありませんでした」
「あの子しかいない、ということか」
「今のところは」
皆、黙り込んだ。
「おそらく、事故防止のため、最初に起動した者の思念波パターンを記憶し、そのパターンを有する思念波でなければ起動しない、ということではないでしょうか」
「セーフティロックという訳か」
「はい」
誰かが机を軽く叩いた。
「一体、誰がそんなことをしたというのか」
その問いには誰も答えられない。
「あのロボットは、一体誰が作ったんだ。古代研究所はそんなことも掴めていないのか」
すると、古代研究所の制服を来た男が立ち上がった。
「今は異獣の影響もあり、調査は進んでいません。が、あの断層、そして彼の地の詳細な調査さえできれば、きっと・・・」
「もういい。とにかく、異獣の出現エリアが徐々に首都中心に近づいてきている。皆にはこれまで以上に迅速な対応を期待する」
そして、会議はなんの成果も得られないまま終了した。
新天地に人類が築いた都市は3つ、その中で最も古く、最も断層に近いこの街が一番大きく、中枢機能が集中していた。つまり、ここが首都として機能している都市だった。異獣が出現する場所が、その都市の中心部に徐々に近づいていた。そして、古代研究所も、春田少年が通う学校もその中心部にあった。
異獣の突然の出現やロボットの瞬間移動、異獣の出現継続時間は676秒を超えることはない、ということについては全く解明が進んでいなかった。いや、人類に解明できることなのかどうかすら見当がついていないというのが本音だ。したがって、異獣の出現予測も全くできない。それが人類にとっての大きな不安材料だった。
そんな中、彼等の不安を大きく煽る事件が発生した。
その日までの数日間、異獣は出現しなかった。春田少年はいつもの通り、学校で授業を受けていた。そんな時だった。突然、大きな地鳴りが起きた。そして、地震のような振動。教室の中で悲鳴が上がった。
「な、なんだ!」
その原因はすぐに分かった。異獣が教室の窓から見えた。学校からほんの数百メートル程度の場所に、異獣が出現していた。
「1年4組の春田健志君、至急」
校内放送の途中で、黒木が教室に飛び込んできた。
「春田、すぐに来るんだ」
そして、少年の腕を掴んで引っ立てるようにして連れていく。
「みんなは避難を」
そして、二人は教室から出ていった。
学校の地下にはいつでも春田少年が古代研究所に急行できるよう、緊急車両が常に待機していた。その車両に春田少年が押し込まれた。
「誰でもいい、すぐに男を適当に地下駐車場に連れてこい」
黒木が無線で誰かと話している。男が何人か、地下駐車場に来た。
「会ったことある奴はいるか?」
黒木が春田少年に尋ねた。教師数名は見たことがあった。その男達を除くと2人しか残っていない。ちょうどその時、一台の車が急発進した。黒木がその車の前に飛び出す。運転席に男が一人。その男を引きずり出す。
「こいつは」
春田少年が首を左右に振った。
「よし、これで3人だ。お前らに軍の権限で命令する。今、ここでこの少年を犯せ」
3人がポカンと黒木を見る。黒木が拳銃を取り出した。
「聞こえなかったのか? 命令だ。この子を犯せ。今すぐに、だ」
そして、地下駐車場の硬い地面の上で、春田少年は押し倒され、犯された。すぐにロボットが出現し、異獣と組み合う。
「早く、射精させるんだ」
男達が少年のアナルを掘り、ペニスを扱く。すぐに少年はその時を迎えた。
そして、異獣が消滅した。
幸い、大きな被害は出なかった。が、この時の異獣の出現は、2つの問題を提起した。
一つは、もう、この首都の中心部が異獣の出現エリアになり得る、ということ。そしてもう一つが、ロボットを起動させるために春田少年を古代研究所に連れて行く時間が取れない場合がある、ということだ。一つ目の問題は、異獣の出現エリアが断層付近から徐々に街の中心部に近づいてきていたことから、時間の問題という覚悟はできていた。二つ目は、少年の日常生活を保証するためにはある程度は制限がかかってしまう問題だった。あまり少年の日常生活を奪ってしまうと、少年の精神状態に影響を及ぼす可能性がある。あの麻薬を使った起動実験で実証されているように、少年の精神状態はロボットの起動に影響を及ぼす。万一ロボットが起動しなくなった時は、すなわち人類の破滅を意味することになる。
「学校に通うというのは、本人の希望であり、唯一の条件です」
少年を退学させ、軍属として古代研究所に勤務させるという案が浮上していた。が、黒木は反対した。
「ならば、どうしろと。反対するなら対案があるんだろうな」
「彼の選択肢は二つ。一つは古代研究所ですが、これには私は反対です。そしてもう一つが、学校です」
黒木の話を聞いていた軍高官が首を傾げた。
「つまり、学校に住まわせ、事が起きた時は、学校で起動作業に入る、という事です」
「ロボットはどうする?」
「ロボットはここの格納庫のままで問題ありません。距離は起動の支障にはなりません」
高官が頷いた。
「分かった。その方向で各方面に手配しよう」
「ありがとうございます」
こうして、春田少年は学校に住み込むこととなった。もちろん、黒木も一緒に、だ。そして、それは異獣が出現した際に、学校で、彼の友人もいるこの校内で犯される、ということを意味していた。
幸いにも、それからしばらく異獣は街の周辺エリアにしか出現しなかった。
春田少年は、学校に住み込むこととなった。校舎の普通の教室から少し離れたところにある古い理科準備室が彼にあてがわれた。その部屋は狭いが窓がなく、彼がロボットの起動の際に何をしているのかを外から覗き見られる可能性はかなり低かった。さらに、その準備室に入るためには理科室を通る必要があるが、この理科室は管理者用の部屋となった。入り口は1箇所のみとされ、厳重なセキュリティが施された。理科室と理科準備室の間の壁が取り払われ、代わりに大きなガラスの壁が設置された。起動時、或いは戦闘時の色々なデータを計測し、記録するための機器も運び込まれた。そして、春田少年を犯す役割を担った男達のための控室も作られた。その男達についても、春田少年とは面識のない男達のリストが作られ、3人一組の組み合わせ、順番、欠員が生じた場合の予備等、しっかりと準備が行われた。つまり、もう春田少年には逃げ場はなかった。
その後の異獣の出現の際も、時間的に余裕がある場合は、春田少年は古代研究所に移され、ロボット起動作業を行なった。古代研究所には、学校の理科室に設置されたものよりも遙かに多種多様で高機能のモニタリング機器、測定機器がある。何より、思念波の測定のための機器は古代研究所にしかなかったからだ。
春田少年は何度も何度も見知らぬ男達から陵辱を受けた。
やがて、彼の心の中には自分が新天地を守るという義務感とも信念ともつかないような思いが生まれ始めた。
例え、それが悪夢のようなものであったとしても。
それは、彼が自分を捨てた瞬間だったのかもしれない。 |