ホントの気持ち
11.真夜中の知らせ |
あれから、洋輔は全然学校にこなかった。祐ちゃんたちが心配して家に行ってみても、洋輔は誰とも会おうとしなかった。僕は祐ちゃんに問い詰められた。でも、なにも答えなかった。答えられなかった。何も答えないまま、涙だけがあふれてきた。祐ちゃんはそれ以上は聞かなかった。ただ、祐ちゃんはこう言った。 「なにがあったのかはわかんないけど、二人のことは、二人にしか解決できないと思う。」確かにそうだと思った、でも・・・今の僕には何もできなかった。 洋輔が学校にこなくなってから3日が過ぎた。公彦は、あいかわらず僕を誘おうとする。あれ以来、僕は公彦とは口を聞かなかった。やがて、公彦もあきらめたようだった。心なしか、寂しそうに見えた。 その知らせを聞いたのは、その日の真夜中だった。みんなが寝静まったころ、急に電話がなった。祐ちゃんからだった。祐ちゃんは電話で僕に言った。 「落ち着いて聞けよ、たっちゃん」 「洋輔が・・・洋輔が自殺しようとして・・・」 それからあとは何も覚えていない。気がついたら、僕はパジャマのまま病院にいた。洋輔が自殺未遂で担ぎこまれた病院。待合室にぼんやり一人で座っていた。はだしだった。 ふと、名前を呼ばれた。祐ちゃんだった。祐ちゃんが、僕に言った。 「命に別状はないって。お風呂で手首切ったんだって。」 「そう・・・」それ以上、言葉が出ない。 「それだけ。そうって・・・それだけか!」祐ちゃんが、僕のパジャマの襟首をつかんで僕の頭を揺さぶった。 「お前、洋輔に何したんだ、洋輔、死のうとしたんだぞ、なにやったんだ!」 看護婦さんがやってきて、静かにするように祐ちゃんを制した。祐ちゃんは僕を病院の外に連れだした。 僕が何も言わないでいると、いきなり祐ちゃんが僕の頬を引っぱたいた。 「ほんとはこんなことしたくないけど。でも、きっと康弘ならこうしてる。洋輔を苦しめてるお前を、きっと康弘なら殴ると思う。」祐ちゃんも泣いていた。 「なにがあったんだよ・・・なんでこんなことになったんだよ・・・」 僕も泣いた。二人して、抱き合って泣いた。でも、僕は何も言えなかった。ただ、祐ちゃんの胸で泣きじゃくった。 祐ちゃんは黙って僕を抱きしめてくれていた。 |