ホントの気持ち

7.日曜日の出来事

「洋輔とうまくいってないの?」急に祐ちゃんにそう言われて、ちょっとどぎまぎした。
「なんで?」
「べつに。ただ、なんとなく・・・」
祐ちゃん、なにか知ってるのかな、そう思った。あの、始めてお互い好きだって気づいたキャンプのときから、祐ちゃんたちはずっと僕ら二人を見守ってくれていた。康弘がいなくなっても、祐ちゃん達は僕らを守ってくれていた。べつになにかしてくれたってわけじゃないけど、祐ちゃんなりに、僕らに気を使ってくれていたことは知っていた。
「べつにうまくいってないことはないんだけど・・・最近・・・公彦と仲が良いみたい」公彦の名前が言い辛かった。
「けんかしちゃったとかってことじゃないの?」
「そんなことはぜんぜんないけど・・・大丈夫だよ。ちゃんと電話もしあってるし」
「なら、いいんだけど・・・最近、よく見かけるよ、あの二人」
「洋輔と・・・公彦?」また、言いにくい名前。
「うん。なんかまずいこと言っちゃったかな?」ちょっと気まずそうな祐ちゃん。
「そんなことないって。僕達あいかわらずだから。心配してくれてありがと」そういいながらも、また僕の中の不安が少し大きくなった。公彦と二人でいるんだ。二人で・・・何してるんだ? 祐ちゃんに聞きたかったけど、聞けなかった。

ほんとは、最近あんまり電話していなかった。電話するのが怖くなっていた。以前は洋輔の方から、毎日といっていいくらいあった電話も、最近はかかってこなくなっていた。

僕は、はっきりと、洋輔に対して疑いを持つようになっていた。

次の土曜日の夜、思いきって久しぶりに洋輔に電話した。電話の向うの洋輔の声は、いつも通りだった。洋輔を疑ったことが、なんだか情けなかった。
「明日、どっかいかない」誘ってみる。
「ごめん、明日はちょっと用事が・・・」
ついさっき、情けないと思ったはずなのに、また疑いが頭をもたげる。公彦と会うの? そう聞きたかったけど・・・聞けない。
「そっか・・・」
「ごめんね。また、今度誘って」
「わかった。じゃ」それだけ言って、電話をきった。その夜は眠れなかった。

インターネットにつないで、電子メールをチェックしてみる。康弘からメールが来ていた。「相変わらず、愛し合ってる?」って。「僕達はあいかわらずです」って返信する。なんだかむなしかった。

日曜日、家にいても洋輔のことばかり考えてしまうので、一人で服を買いに行くことにした。よく一緒にいった店に行ってみる。半日うろうろしたけど、結局なにも買わなかった。そろそろ帰ろうかなって思ったとき・・・

洋輔がいた。隣には公彦がいる。楽しそうに笑ってた。手をつないでいた。僕は走り出した。走って家に帰った。洋輔の言っていた用事って・・・もう、何もかも信じられなかった。

月曜日、僕は学校を休んだ。家で、ずっと一人でいた。誰にも会いたくなかった。

        


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