ひみつの隠れ家
−2−


(最近・・・どうしたんだろう)
斜め前の窓際の席で、ぼんやりしながら窓の外をながめいる毅彦のことが気になった。
(前は授業中にあんなぼぉっとしてたことなんてなかったのにな)
その横顔を見つめながら、繁樹は思った。毅彦の横顔は・・・
「こら、なにぼっとしてるんだ」
急に先生が繁樹の頭を教科書で叩いた。
「あ、いて」
教室の中に笑いの輪が広がる。
「授業中だぞ。ちゃんと集中しろ」
先生が声をかける。そのまま黒板の方に歩いていく先生の背中を繁樹は目で追った。あちこちでクラスメイト達が繁樹を見ては何事かささやきあって笑いあっていた。
(ぼんやりしてるのは俺だけじゃないのに・・・)
毅彦はそんなささやきや笑いには加わっていない。まるで感心がないように、あいからわず窓の外を見つめいていた。

休み時間になっても、毅彦は誰とも話をしていない。サッカーが得意で活発な繁樹の周りには、いつも数人の友達が寄ってくる。繁樹はそんな友人達との話に適当に相づちを打ちながら、席に座ったままの毅彦をちらちらと気にしていた。そんな毅彦に慎輔が近づく。一番仲のいい友達。親友っていってもいい友達が、毅彦の前の席に後ろ向きに座る。毅彦が顔を上げる。何事か話してる・・・
「おい、聞いてんの?」
友達が繁樹の目の前で手をひらひらさせる。
「あ、うん・・・」
繁樹はあわてて視線を戻す。
「窓の外になにかあるの?」
ちょうど毅彦の席が窓際だったから、みんな窓の外を見ていたと思ったらしい。
「あ、いや、別に」
(よかった・・・)毅彦を見つめていたことがばれなくてほっとした。
「それでさ、そのあと3人抜いてシュート!」
友達が興奮気味に話していた。
「それで決まればかっこよかったのにね」
「思いっきりゴールの上越えてったもんね」
みんなは楽しそうに話し、笑う。繁樹も相づちを打って笑顔を作る。でも、その視線は毅彦に戻っていた。そして、毅彦と仲良さそうに話す慎輔に・・・

繁樹は毅彦が好きだった。その気持ちをはっきり感じたのはもう半年くらい前になる。頭はいいけど運動がいまいち苦手な毅彦を初めはあんまり好きではなかった。でも、そんな毅彦のことが気になりだした。体育の授業で2チームに分かれて対戦するときは、だいたいいつもどっちかのチームのキャプテンになる繁樹は、必ず自分のチームに毅彦を入れた。下手なサッカーでボールを何とかコントロールしようとしている姿が健気に見えた。そして、そのまま足をひねって転ぶぶざまな毅彦。繁樹は駆け寄って、毅彦の足を見る。肩を貸して保健室に連れていった。体育の先生に信頼されている繁樹のいつもの役割だった。
(俺、こいつ、守りたい)
毅彦の体温を感じながら、繁樹はそう思った。繁樹の肩を借りて、よたよたと保健室に向かって歩く毅彦を心配そうに見つめている慎輔に、一瞬だけ優越感を感じた。
「ありがと」
保健室のベッドに横たわった毅彦が繁樹に言う。
「へたくそなくせに無理するからだよ」
本当はもっと優しい言葉をかけたかった。けど、繁樹の口から出てくるのはいつもそんな言葉ばかり。
「そうだね・・・僕、へたくそだから」
少し落ち込んだような声で言う毅彦。そんな毅彦を抱きしめたかった。
「俺がそのうち教えてやるよ」
そう言って繁樹は保健室を出て、走って校庭に戻る。そうでもしないと、毅彦にむりやりキスをしてしまいそうだった。

でも、毅彦との距離はそれ以上縮まらなかった。

毅彦には慎輔がいた。いや、べつに二人が恋人同士ってわけじゃない。ただの友達・・・いや、親友・・・幼なじみ。それが二人の関係にぴったりの言葉だった。よく二人は一緒にいる。一緒に学校に来るし、帰りもよく一緒に帰っている。そんな二人の関係が繁樹にはうらやましくもあり、くやしくもあった。だから、毅彦のことは好きだけど、冷たくあたってしまう。慎輔に至っては・・・嫌いだ。

そんな慎輔が風邪をひいて学校を休んだ日にそれは起きた。

クラスに風邪が流行っていた。今日も欠席者が目立つ。「このままいったら学級閉鎖?」そんな噂が流れて、クラス中が変な期待感で盛り上がっていた。
慎輔も数日前から授業中にゴホゴホと咳をしていたが、今日はついに休み。それを先生に伝えたのは毅彦だった。
繁樹の友達も何人か欠席していた。休み時間もいつもほどのやかましさはなく、どことなくクラス全体が「次は誰が休むか」を探っているような感じだった。
毅彦は相変わらず窓際の席でぼんやりしていることが多かった。こないだのテストでは、いつもトップか2番目、悪くても3番目の成績だったのが、なんと10番目近くまで落ち込んでいた。そんな毅彦の変化を慎輔は心配していた。そして、繁樹も気になっていた。
毅彦は机に頭を突っ伏していた。
(寝てるのかな・・・それとも風邪ひいて調子わるいのかな)
繁樹も自分の席で座ったまま、毅彦の方を見ていた。休んでいる者が多いため、珍しく繁樹の周りには誰もいなかった。そして、毅彦の前の席・・・休み時間の慎輔の指定席には誰も座っていなかった。繁樹はあまり音を立てないように立ち上がった。そっと移動して、毅彦の前の席に後ろ向きに座った。いつも慎輔がそうしているように。
(顔、上げるかな)
そう思った。それを期待しているのか、そうならないことを期待しているのか、繁樹自身にもわからなかった。そもそも、なぜこの席に座ったのかすら、わからなかった。繁樹は毅彦の頭を見つめた。毅彦の髪の毛・・・耳・・・そして、頬。こんなに近くで見たのは初めてかもしれない。あの時、あの体育の授業で足をひねった毅彦を保健室に連れていったときは、こんなふうに見つめたりはしなかった。あの時と今とでは、繁樹の毅彦に対する気持ちが変わっていたのかも知れない。
(さわってみたいな。寝てるからさわっても大丈夫かな・・・)
そっと毅彦の髪の毛に触れてみた。毅彦はなにも反応しない。眠っているようだった。頭をなでるように髪の毛に手を滑らせる。なめらかで気持ちいい。そして、人差し指で耳たぶを触ってみる。
「んん・・・」
毅彦がその手を払いのけようとした。あわてて繁樹は手を引っ込めた。そのはずみで、机の上に置いてあった毅彦の携帯が落ちそうになる。繁樹はそれが床に落ちる前に片手でキャッチした。毅彦は携帯が落ちそうになったことも気付かずに眠ったままだった。
繁樹は携帯を机に戻そうとした。戻そうとして・・・・・

単なる好奇心だった。別に盗み見るとか、そんなつもりじゃなかった。でも・・・
繁樹は毅彦の携帯を開いた。そして・・・

初めは何か分からなかった。でも・・・
自分が生唾を飲み込む音が聞こえた。それは教室中に響いたんじゃないかと思うほど大きかった。
そこには、全裸で縛られ、勃起させている少年の画像が表示されていた。顔のところにちょうど時計が表示されているけど・・・・・あわてて携帯を閉じて机に置いた。そして、席を立つ。トイレに向かう。どきどきしていた。さっき見た画像・・・顔がちょっと隠れてたけど・・・でも、間違いなかった。確信があった。あの顔は毅彦だった。毅彦自身が、全裸で縛られている画像だった。それを、毅彦自身が自分の携帯の待受画像にしていた。トイレの個室に入る。目を閉じる。さっきの画像を思い出す。
(間違いない、あれは毅彦だ)
ズボンを下ろし、勃起したペニスを握りしめる。
(あんな画像・・・なんで・・・)
そして、しごき始める。
(あんなことしてるなんて・・・あんなこと・・・)
すぐに射精した。
後始末をすませて繁樹が教室に戻ると、毅彦はすでに目を覚ましていた。目を覚まして、いつもの通り、頬杖をついてぼんやりと窓の外を見ていた。机の上にはあの携帯が置かれていた。
(あの毅彦が、あんなこと・・・)
さっき出したばかりなのに、また勃起していた。
(慎輔は知っているんだろうか・・・)
繁樹の心に嫉妬心がわき上がった。
(もしかしたら、慎輔と、あんなこと・・・)
どきどきした。怒りに似た感情がわき上がる。どうしたらいいのか分からなかった。授業中も、全く先生の声が耳に入らなかった。


残念ながら、学級閉鎖には至らなかった。
翌日には、それまで欠席していた何人かが学校に出てきて、それまで学校に来ていた何人かが欠席した。それでも出席者は昨日よりは数人増え、クラス中の誰もががっかりした。相変わらずぼんやりと窓の外を見ている毅彦を除いては。
昨日までとの違いは、時々咳をしている、ということ。昨日は休んでいた慎輔が出てきた代わりに、今度は毅彦が風邪をひいていた。そして、繁樹もなんとなく熱っぽかった。
(昨日、あんなの見たからだ)
そう繁樹は思っていた。めったに風邪なんかひかない繁樹は、体のだるさはあの画像を思い出しながら何度も何度もオナニーしたことが原因だと思っていた。

体育の時間、見学者がたくさん出るだろうと思っていた。が、以外にも見学者はたった一人、毅彦だけだった。昨日まで風邪で休んでいた者は、見学するどころか、むしろ体を動かすことが楽しいような様子だった。
繁樹の不調は明らかだった。いつものように動けない。動かない体がいつもより重く感じた。顔が熱い・・・ついに授業中に校庭に座り込んでしまった。
「おい、大丈夫か?」
先生が近寄って、繁樹の額に手をあてる。
「熱があるじゃないか。すぐに保健室に行きなさい」
そして、繁樹は二人目の見学者になった。

(保健室に行く前に水飲みたい)
靴を履き替えながらそう思った。喉が乾いていた。水を飲もうと歩き出す。少し頭がふらふらしていた。なんとなく、教室に戻りたいと思った。教室に戻ったら、毅彦がいる。毅彦と二人っきりになる。
(俺がこんなんだったら、心配してくれるかな)
そんな期待もする。その先のことなんか考えられなかった。とにかく、今は教室に戻ることしか考えなかった。
教室に入ろうとして、ドアを開けようとした。ドアの窓ごしに何かが動いていた。ドアに伸ばした手を止めて、教室の中を見た。

教室の真ん中より少し前の机のところに毅彦が立っていた。机の前から、その机にしがみつくようにして体を動かしていた。
(毅彦・・・なにしてんだ?)
繁樹が見ていることに気付かないまま、毅彦は椅子にかけてあるズボンに手を伸ばす。そのズボンの股間のあたりをまさぐり、そしてそれを自分の顔に押し当てる。体を伸ばす。ズボンを顔に押し当てたまま、少し上体が後ろに反る。まるで深呼吸をしているかのような・・・
しかも、下半身はなにも着ていなかった。勃起したペニスを慎輔の机に押し付けたまま、腰を動かしていた。
(あ、あいつ・・・)
繁樹は動くことが出来なかった。夢でも見ているような気分だった。頭がふらふらする。顔が熱い。そして、股間も熱く脈を打っていた。

毅彦は慎輔のズボンの股間の辺りを舌で舐めている。そして、下半身裸のまま慎輔のズボンをはく。ズボンの上からペニスを握り、しごく。チャックをおろしてペニスを引っ張り出す。繁樹が見ているなんて全く気付きもせずに、手でしごき、机に押しつけている。その間、片手を自分の尻に回している。繁樹はそっと教室の前のドアの方に移動した。同じようにのぞき込むと、毅彦がお尻のあたりで手を動かしているのが見えた。何かをお尻に入れているようだ。それを引っぱり出して、また押し込んでいた。
「ん・・・」
毅彦のあえぎ声が教室の外まで聞こえた。繁樹はまた後ろのドアに戻ってのぞき込んだ。やがて、毅彦のペニスから精液が慎輔の机に飛び散る瞬間を見た。

人が射精するところは初めて見た。ましてやそれがクラスメイトで、しかも自分が好きな毅彦だなんて・・・今までに何度か想像してみたことはあった。まさか、それを本当にこうして見ることができるなんて。しかし、想像ではない、本物の毅彦の行動は繁樹の想像を上回った。毅彦は慎輔のズボンをはいたまま、慎輔の机の上に飛び散っていた精液を舌で舐め取っていた。お尻に入れていたものを抜き取って、それも舐める。そして、それを慎輔の机から取り出したペンケースに戻す。そう言えば、あの色に見覚えがあった。えんぴつだ。
(毅彦は慎輔のえんぴつをお尻に入れながらオナニーして、そのえんぴつをそのまま慎輔のペンケースに戻したんだ)
繁樹の体操服の股間が突っ張っていた。服の上から股間をなで、そしてにぎっていた。

繁樹はまたトイレでオナニーした。そして、保健室に向かった。
保険の先生は、繁樹を一目見てすぐに横になるように命じた。先生の連絡を受けて、繁樹の母親が迎えに来た。繁樹は母親に連れられて学校をあとにし、その後、3日間休んだ。



(あいつ、やっぱり慎輔が好きだったんだ)
家のベッドで横になったまま、繁樹はずっと考えていた。
(やっぱり、あれも慎輔としてたのかな)
あの画像みたいなことを二人でしているのかと思うと、気が狂いそうだった。自分がこうして学校を休んで寝ている間にも、あんなふうに二人でしているのかと思うと、いても立ってもいられない感じだった。焦燥感が繁樹を襲う。
(慎輔から毅彦を奪い取りたい。毅彦を自分のものにしたい)
3日間、それだけを考えていた。

ようやく風邪が治って学校に行っても、あの二人のことだけしか目に入らなかった。なんとか毅彦を手に入れたい、なんとか慎輔を遠ざけたい、そればかり考えていた。しかし、考えても考えてもいいアイデアは思い浮かばなかった。
ただ一つ思いついたのは・・・二人がしてるところの写真を撮って、二人を脅すくらいだった。でも、どうやって二人がしているところに忍び込むか・・・慎輔の家でしてるかも知れないし、毅彦の家でしてるかもしれない。家に忍び込むのは無理かもしれない。でも・・・なにもしないよりはましだと思って、一緒に帰る二人のあとをつけてみることにした。

二人はなにか話しながら歩いていた。その少し後ろを繁樹は歩いていた。毅彦は笑顔だった。慎輔の笑顔は見たくなかった。でも、二人は仲良さそうに笑いながら一緒に歩いていた。
(くそっ・・・)
二人が楽しそうなのが気に入らなかった。
(どうせ、このあとあんなことするくせに)
繁樹は父親のデジカメを勝手に持ち出していた。けっこう望遠も撮れるやつ。これで、窓からしてるとことか撮れるかもしれない、とかすかな期待を抱いていた。
「じゃ」
しかし、二人はあっさりと別れる。それぞれが、それぞれの家の方に向かって歩き出した。
(あれ・・・今日はしないのかな)
繁樹は迷わず毅彦のあとを追った。
(ひょっとしたら、一度家に戻ってから、また会うのかも・・・)
とにかく、今日は徹底的に毅彦のあとをつける決心をしていた。


毅彦の携帯にメールが来ていた。
「いつもの時間に二人」
(今日は二人か・・・)
最近は男達にされることを期待するようになっていた。縛られ、惨めに犯されるのが楽しみになっていた。あの洋館の前で、少しだけ周りを見渡した。そして、その門をくぐった。

毅彦が洋館の前に立ち止まったとき、繁樹は反射的に横の道に身を隠した。そして様子をうかがう。毅彦が洋館の中に消えた。
(こんなとこに寄って、なにするつもりなんだろ・・・)
繁樹は洋館の入り口に近づいてみた。ひょっとしたら入り口に毅彦が立っているかもしれないので、見つからないように注意しながら。
入り口に毅彦の姿はなかった。中に入ったようだ。繁樹はその前で身を潜められるところを探して、そこに隠れた。
(きっと、そのうち慎輔も来るんだろう)
そう考えて、そのまま待ってみた。しかし、しばらく待っても慎輔は来なかった。
(どうしよう・・・入ってみようか)
少し考えて、そして繁樹はその洋館に足を踏み入れた。

「ん・・・」
声が聞こえた。毅彦の声だった。
「ほら、しっかりくわえろよ」
別の声がした。大人の声だった。
繁樹は声がしたほうに向かった。足音を立てないように気を付けながら。

そして、毅彦を見つけた。あの画像と同じだった。あの画像のように縛られた毅彦と、全裸の男がその部屋にいた。
「奥までくわえろって言ってるだろ」
男がそう怒鳴って、毅彦の頭を押さえつけていた。毅彦は縛られたまま男の前にひざまづいていた。男が毅彦の頭を股間に押さえつけた。毅彦が口を開いて男の股間にそそり立つペニスを口に含んだ。そのまま男が毅彦の頭を引き寄せる。毅彦がむせるが、男はやめなかった。
(こ、こんな・・・)
全く予想外だった。毅彦は慎輔としているとしか思っていなかった。まさか、こんな男にされてるなんて・・・
でも、毅彦は勃起していた。デジカメを構える。ズームアップする。モニター画面の中で、毅彦は涙を流しながら男のペニスをくわえていた。シャッターを押す。そして、自分の勃起しているペニスを服の上からさする。
男が毅彦をソファの上に押し倒す。毅彦の体がソファに隠れて見えなくなる。男がソファの上に上がる。
(なにしてるんだ?)
ソファがじゃまだった。
(向こうの部屋に回り込んだら、見えるかも)
繁樹は急いで別の部屋に行こうとする。そっと廊下を歩いて、ドアを音がしないように開き、別の部屋に入る。その部屋のもう一つのドアから、さっきの部屋が見えた。ソファの上で、毅彦が男にアナルを犯されていた。
(すげぇ)
繁樹は興奮した。犯されているのが大好きな毅彦だということが気になる前に、二人の行為に目を奪われた。男が腰を動かすと、毅彦の勃起したペニスが揺れる。それとともに、毅彦の声も聞こえる。
「あ・・・」毅彦のあえぎ声。繁樹はまたデジカメを構えた。
しかし、シャッターを押そうとした瞬間、腕を捕まれた。
「ひっ」
振り向いた繁樹の前に、別の男が立っていた。
「なんだお前は?」
繁樹は動けなかった。声も出せなかった。

男の声でソファの上の二人も動きを止めた。
「あっ」
最初に声を出したのは毅彦だった。
「知り合いか?」
繁樹の腕をつかんでいた男が、繁樹を部屋に引きずり込みながら毅彦に聞いた。
「あの・・・」
毅彦は口ごもった。
「答えろよ」
男が毅彦に命じた。
「同じクラスの奴です」
「そうか、お友達か・・・」
男が繁樹の腕を引っ張って、体をソファに突き飛ばす。
「いい趣味してんじゃねーか、盗撮とはな」
繁樹の手からデジカメを奪い取った。
「あ・・・」
繁樹はデジカメに手を伸ばそうとしたが、男がそんな繁樹をにらみつける。
「どういうつもりだ。え?」
男が繁樹の前に立ちはだかった。
「お前、こいつにバラしたのか?」男が毅彦に聞く。
「僕は誰にも言ってません」
毅彦は少しおびえながら答える。
「じゃ、なんでこいつはここにいるんだ?」
男が繁樹の胸ぐらをつかんで立ち上がらせる。
「なにしに来たんだ、え?」
「あ、あの・・・」
繁樹はなにも言えない。言葉が出てこなかった。恐ろしかった。
「まぁ、いいじゃないか」
毅彦を犯していた男が言った。その男は、繁樹の胸ぐらをつかんでいる男よりは優しそうに見えた。
「こいつも一緒に犯せばいいんだし」
そして、その男が笑った。嫌な笑顔だった。
「た、助けてください」
ふるえながら繁樹は言った。しかし、男達はなにも答えない。それどころか、二人の男はあっという間に繁樹の服をはぎ取り、またソファに突き飛ばした。
「男としたことあるのか?」
男が質問する。繁樹は首を横に振る。
「そうか。初めてか・・・」
男が繁樹の横に座った。
「じゃ、初体験だな」
そして、男は繁樹の首をつかんだ。もう一人の男のペニスが目の前にあった。
「ほら、しゃぶれよ」
首をそのペニスの方に強く押される。顔にペニスが押しつけられる。
「い、いやだ」
かろうじてそれだけ言う。が、男は力をゆるめない。
「痛い目にあって無理矢理させられるのがいいか、素直に言うことを聞くか、どっちがいい?」
男が耳元で言う。
「どっちにしろ、お前は犯されるんだよ、俺達にな」
横目で毅彦を見る、毅彦は繁樹を見つめていた。しかし、その表情はなにを考えているのか分からなかった。ただ、毅彦は縛られたまま床に正座していた。
「こいつが助けてくれるとでも思ったのか?」
男が繁樹の視線を追った。
「おい、お手本を見せてやれ」
男がそう命じると、毅彦は繁樹の顔の前に突き出されているペニスににじり寄った。そして、繁樹の目の前でそれを口に含んだ。
「ほら、よく見とけよ。お前の先輩のすることを」
毅彦はそのペニスを口に含み、舌で舐め、根本までくわえ込む。
「た、毅彦・・・」
こんな状態で繁樹は勃起した。
「こいつ、勃起させてるぜ。これから自分がどうなるかも知らずに」
男が笑う。そして、言った。
「さぁ、お前の番だ」
再び男のペニスが繁樹の顔の前に突き出された。それは毅彦の唾液でぬめぬめと光っていた。
「ほら、早くしろ」
繁樹は口を開いた。男のペニスが口の中に入ってきた。

犯される毅彦の横で、繁樹も同じようにされていた。同じように縛られ、同じようにアナルを犯されていた。男達は二人を交互に同じように犯した。しかし、犯される二人には、彼らが漏らす声があえぎ声と苦痛のうめき声という違いがあった。
男達はそれぞれ毅彦と繁樹の中に放出した。そして、毅彦は男に突かれながら誰にもふれられずに射精し、繁樹は無理矢理男の手で射精させられた。お互いの体の上に飛び散った精液を互いに舐めさせられた。そんな二人の行為が、男に犯される姿とともに、繁樹が持ってきたデジカメに記録されていた。

アナルを引き裂かれ、激しい痛みを感じながら、それでも繁樹はどこかで満足していた。慎輔も知らない毅彦の秘密を知り、その秘密を毅彦と共有することにより、結果的に慎輔よりも近い存在になれた満足感があった。

その日以降、客の相手をする少年が二人に増えた。

しかし、繁樹にはまだ不満があった。毅彦が好きなのは慎輔、その事実には変わりはなかった。それならば・・・繁樹は決心した。



洋館で、今日も繁樹は男達に犯されていた。毅彦と一緒に・・・隣に並んで犯されながら、繁樹は毅彦にキスをし、男に犯されて勃起している毅彦のペニスを口にくわえた。奴隷同士、犯され蔑まれる者同士の行為は、男達を喜ばせた。時にはその行為を禁じられ、そしてそれが許されると、繁樹は激しく毅彦を求めた。時には男に命じられ、奴隷同士で犯し合うこともあった。その日も奴隷同士のプレイのあと、男達は奴隷の体をもてあそび、満足して帰っていった。洋館には毅彦と繁樹だけが残り、床に落ちているティッシュを拾って後始末する。二人を縛っていた縄や、いろいろな「責め具」も拾い上げて、ソファの上に置く。そして、いつもならなにも言わずに二人は家に向かう。しかし、その日は少し違った。
「ちょっと待って」
繁樹が毅彦に声をかける。
「なに?」
毅彦は疲れた体でめんどくさそうに聞いた。
「毅彦は慎輔が好きなんでしょ?」
「そうだけど」
このことは、もう二人にとっては当たり前のことだった。
「いつだったか、体育を見学してるとき、慎輔の机でオナニーしてたよね」
繁樹は自分が見たことを毅彦に言う。慎輔の机で、慎輔のズボンをはいて、慎輔のえんぴつをアナルに入れながらオナニーしたこと。慎輔の机の上に射精し、それを舐め取ったこと。そして、アナルに入れていたえんぴつをそのまま慎輔のペンケースに戻したこと。
「だからなんだよ」
いまさらそんなことを言う繁樹の目的が毅彦にはわからなかった。が、部屋のクローゼットが開いた瞬間、毅彦はすぐに帰らなかったことを後悔した。

クローゼットが突然開いて、そこから少年が現れた。慎輔だった。慎輔がクローゼットに隠れていて、毅彦と繁樹が今までしていたこと、話したことをすべて見て、聞いていた。
「お前ら・・・なんなんだよ」
慎輔の声は震えていた。
「お前ら、頭おかしいんじゃないの?」
「し、慎輔・・・」
ようやくなにがおこったのかが少しだけ理解できたのか、毅彦が慎輔に声をかけた。と同時に、全裸だった自分の股間を手で隠した。
「変態かよ、お前ら。しかも、僕の机でなにしてたって?」
慎輔が毅彦に詰め寄りかけて、足を止めた。
「あ、あの・・・」毅彦がなにかを言いかけた。
「黙れよ。もう、お前とは絶交だよ。こんな変態を友達だと思ってたなんて・・・」
そして、慎輔は持っていたカバンからペンケースを取り出すと、それを毅彦に投げつけた。
「この、変態が! 2度と僕の物にさわるな!」
そして、二人を残して部屋を出て行く。
「ま、待って、待ってよ」毅彦が後を追おうとした。
「来るなよ。お前みたいな変態、大っ嫌いだ。2度と僕に話しかけるな」
そして、慎輔は出て行った。毅彦は突っ立ったまま、動かなかった。
ソファの上で、繁樹がにんまりと笑った。
「なんで・・・」
毅彦が小さくつぶやいた。
「なんで慎輔がいるんだよ」
繁樹の方を振り向いて、大きな声で言った。
「クローゼットに隠れて待っててってメモを机に入れておいたんだよ」
「なんでそんなことするんだよ」
毅彦は泣きそうな顔をしていた。
「お前が悪いんだよ。お前が慎輔を好きだから・・・だからこうなったんだ」
「お前のせいで俺はこんな目にあったんだから、お前もこうなるのが当たり前なんだよ」
繁樹はそう言って、毅彦に近づいた。
「なんでだよぅ・・・僕がなにをしたって言うんだよ・・・」
毅彦の目から涙がこぼれ落ちた。
「もう、慎輔はお前のことなんか大嫌いだって。お前みたいな変態は大嫌いだってさ」
そして、繁樹はそっと毅彦の頬に触れた。
「でも、俺はそんなお前が好きだ」
そして、キスをしようとした。しかし、毅彦は顔を背ける。
「いいよ、拒むなら拒んでも」
繁樹は毅彦の体をソファに突き倒した。
「やめろ!」
毅彦は抵抗しようとした。しかし、力は繁樹の方が強かった。繁樹は毅彦の上に馬乗りになり、ソファの上の縄で手を縛る。男達が縛っていたのをまねして毅彦を縛る。
「お前は俺のものだよ、毅彦」
そして、毅彦にキスをした。
「お前の体を俺のおもちゃにしてやるよ」
毅彦のお尻を持ち上げると、アナルにゆっくりと舌をはわせた。

今までに奴隷同士で犯し合ったりもした。しかし、今日は違った。繁樹は毅彦を犯した。繁樹に犯されることを拒んでいた毅彦も、やがて繁樹の手の中で射精した。毅彦が繁樹の物になった瞬間だった。

しかし、二人は男達の奴隷であることに変わりはなかった。

     


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