-2-

「あっ」
そいつは慌ててシーツを頭に被った。僕は動けなかった。男の人も腰の動きを止める。そして僕の顔を見る。
「お前等、ひょっとして友達か?」
僕は首を横に振る。
「違う」
そいつもシーツの奧で答えた。
「じゃ、まぁいいか」
男の人はまた動き出す。
「あ、やめてっ」
そいつが言った。でも、男の人はやめなかった。さっきより激しく動いている。
「やめてって・・・あっ」
「いくっ」
男の人が腰を押し付け、やがて息を吐いた。ゆっくりと、そいつのお尻の穴からちんこを引き抜いた。
「ほら、見てみろ。掘られて中出しされたケツマンコだ」
それをまともに見ることはできなかった。でも、横目でちらっと見る。穴が広がっていて、ピンク色の身体の中が見えている。そして、そこから白い精液みたいなものが垂れていた。すぐに、そいつはシーツを身体に巻き付けた。
「友達じゃないならいいだろ」
男の人がシーツを剥ぎ取ろうとする。でも、そいつは抵抗する。
「どういう関係なんだ?」
僕に尋ねた。
「同じ学校の」
「言うな!」
そいつが大きな声を出した。
「いいだろ、ここまで見せたんだから」
でも、そいつはシーツに包まったまま、身体を丸めてしまった。
「どういう関係?」
僕は答えて良いものかどうか迷った。
「ここではっきりしておかないと、明日から気まずい思いをするんじゃないか?」
それはそうかもしれない。
「同じ学校の、クラスは違うけど、同じ学年です」
「友達って訳じゃないんだ」
「友達じゃないです。顔は知ってるってくらいで」
男の人が、そいつのシーツを剥ぎ取ろうとした。
「やめろ」
「ちゃんと顔見せて話しておかないと、明日から辛いぞ」
「やだ。もう学校行かないし」
僕も同じ意見だ。僕は何も見られてないけど、あいつのセックスを見てしまった。学校で顔を合わせるくらいなら、休みたいと思う。
「ったく、駄々っ子じゃあるまいし・・・」
三人とも何も言わなかった。沈黙が気まずかった。
「君、君には何もしないって約束だったけど・・・」
男の人が、少し低い声で言った。
「できれば、この子に君のオナニーしてるところを見せてやってくれないか?」
「ええ?」
「この子は恥ずかしい姿を君に見られた。だから、君の恥ずかしい姿も見せてやって、それであいこってことに出来ないかな」
さっき、僕もオナニーしたいって思った。服を脱ごうとした。でも、あれはあの勢い・・・セックスしてる最中だったから出来そうだった。けど、今はもうあの勢いはない。これから一人でするのは恥ずかし過ぎる。
「恥ずかしいから・・・」
小さな声で言った。
「だったら、俺はシャワーを浴びてくる。その間に、この子にだけ見せてあげるっていうのはどうかな」
それなら・・・それでも恥ずかしいけど、なんとか出来るかもしれない。
「・・・やってみます」
すると、男の人は笑顔になった。
「じゃ、俺はゆっくりとシャワー浴びてくるから、その間に二人きりで」
そして、バスルームに入っていった。

僕はそいつと二人、部屋に残っていた。
「あ、あのさ」
そいつに声を掛けた。
「2組・・・だよね?」
そいつは何も言わない。
「僕・・・1組」
でも、何も答えない。
(はぁ・・・どうしよう)
僕は、ベッドの隅で、背中を壁にもたれて座っていた。
「早くやれよ」
そいつが言った。
「え?」
「早くオナニーしろって」
(やっぱりそうか)
バスルームではシャワーの音がしている。僕はズボンのチャックを下ろして、ちんこを出した。

初めは勃起してなかった。それを握って、ゆっくりと皮を剥き下ろす。亀頭が出て来る。
そいつは、シーツにくるまったまま身体の向きを変えた。僕のすぐ前で、シーツの間から目だけ見えている。その目が、僕のちんこを見ている。
(見られてる・・・)
そう思うと勃起してしまった。オナニーしてるんだからそれでいいんだけど・・・でも、やっぱり恥ずかしい。恥ずかしいけど、僕はゆっくりとしごき続ける。
「脱げよ」
シーツの中で言った。僕はズボンのベルトを外して、腰を浮かせてズボンとボクブリを膝の少し上くらいまでずり下げた。ちんこと、玉と、毛が丸見えになる。それを見られている。
(恥ずかしい)
でも、なんだか身体が熱くなってくる。少ししごくスピードが早くなる。
「全部脱げよ」
またそいつが言った。
「え?」
「なんでお前だけ服着てするのかな」
シーツの間から、目が僕を見つめている。
「脱げよ、全部」
「そうしたら、そっちもシーツ取ってくれる?」
すると、そいつは身体に巻き付けていたシーツを外してベッドの下に落とした。
(やっぱり2組の)
「えっと・・・荒木君・・・だっけ?」
「早く脱げよ」
僕は脱ごうとした。荒木君が全裸で僕を見ている。僕がちんこを勃起させて、服を脱ぐのを見ているんだ。
全身が熱くなる。やっぱり・・・恥ずかしい。
「ご、ごめっ、やっぱ無理」
僕はベッドの上で立ち上がってボクブリとズボンを引っ張り上げた。そのままベッドから飛び降りて、椅子を乗り越えた。バスルームの前を通ったのと、そのドアが開いたのがほぼ同時だった。
「お、おい」
男の人が僕を呼び止めようとした。でも、僕はそのままドアを開けて、部屋から外に出た。エレベータの方に小走りで向かう。振り返らなかった。あいつか、それとも男の人が追いかけてくると思った。エレベータのボタンを押す。ちらっと部屋の方を見る。誰も出てきてない。僕はエレベータに乗り込んだ。

エレベータが動き出して、ようやく少し落ち着いた。あわてていたので、ズボンのチャックが開いたままだった。それをエレベータの中で引き上げる。
(勝手に飛び出して来て、あの人はきっと怒ってるだろうな)
すると、スマホが震えた。見てみると、あの人からのメールだった。
『大丈夫? 約束破ってごめんね』
それを見て、少し後悔した。あの人は怒っていない。むしろ、僕にごめんって言ってくれている。でも、もう今更さっきの部屋には戻れない。
『ごめんなさい。やっぱり恥ずかしくて僕には無理でした』
ホテルを出てすぐ、僕はそう返信した。

でも、どきどきしていた。
家に帰る途中、ずっとあいつ・・・確か、2組の荒木君の裸やセックスを思い出していた。ズボンのポケットに左手を突っ込んで、中で勃起しているちんこを押さえながら歩いた。同い年で、同じ学校で、同じ学年で、隣のクラスのあいつが、あんなことをしていて・・・そして、僕もあのお尻の穴に指を入れたんだ。
右手の人差し指の臭いを嗅いでみた。少し匂いがした。
(あいつの匂いだ)
あいつのお尻の穴の匂い。あの中は暖かかった。
(明日、どうしよう)
学校で会ったら、普通じゃいられない。こうして思い出すだけで、ちんこはぎんぎんになるし、身体が熱くなる。でも、それだけじゃない。僕の勃起したちんこも見られてる。普通に制服着た僕を見たら、あいつはなんて思うだろう。
(ダメだ。絶対、顔合わせらんない)
学校に行きたくないと思った。たぶん、中学に入って初めてだ。

その夜、僕はオナニーした。もちろん、ネタは荒木君だ。あのシーツから見えていた足。あのお尻。ピンク色の穴。あそこに入れた僕の指。右手でしごいていたちんこを左手に持ち替える。右手の指の臭いを嗅いだ。もう匂いはしていない。でも、あの匂いを思い出す。その指を口に入れてみた。指に舌を絡ませる。
(あいつ、お尻に入れられて気持ち良さそうにしてたっけ)
男の人が入れると、喘ぎ声を出していた。勃起したあいつのちんこ。そして、滴り落ちる先走り。ぽかっと開いたお尻の穴から男の人の精液が垂れてくる。
(ああ、いくっ)
「んっ」
僕は射精した。精液をティッシュで受ける。
「はぁ・・・」
僕は溜め息を吐いた。
(もっとちゃんと見たかったな)
いろいろと後悔する。なんでちゃんと見なかったのか。なんであそこでオナニーしなかったのか。なんであいつの前で服を脱がなかったのか。なんで逃げ出したのか。
(あのまましてたら、あいつと友達になれたかもしれなかったのに)
でも、結局僕はあいつのセックスは見たけど、自分の裸を見せるのは恥ずかしくてできなかった。あいつにしてみれば、卑怯者だって思われたかもしれない。
(やっぱり、学校行きたくないなぁ)
「はぁぁ・・・」
僕はまた、大きな溜め息を吐いた。

翌朝、ベッドから出たくなくてゴロゴロしていたら、あの人からメールが来た。
『気まずいと思うけど、学校にはちゃんと行きなさい。あの子も行くから』
分かってる。分かってるけど・・・
のろのろと起きだして、支度をする。家を出る。少し遅刻する方があいつと顔を合わさないで済むかもしれない。学校に向かう道をいつもよりゆっくり歩いた。でも、残念ながら遅刻はしなかった。
学校では別にあいつと顔を合わせることもなく、普通に1時限、2時限と過ぎていった。

でも、お昼休みの時間、友達とトイレに行こうとしたら、あいつがトイレのそばの階段で待っていた。
あいつは僕を見る。僕はどきっとする。あいつはそのまま階段を上がる。ちらっと僕を振り返る。
(来いってことか)
僕は友達と別れてあいつの後ろから階段を上がる。目の前に、あいつの制服のお尻がある。あの、僕が指を入れた穴がそこにある。ドキドキしている。勃起しそうになる。でも、なぜか立たない。あいつは屋上に出る金属の扉を押し開けた。
校舎の屋上には、何人か生徒がいた。あいつは人が少ない方に歩いて行く。手すりの前で立ち止まって、僕を振り向いた。僕はドキドキしながらその横に立って手すりを掴んだ。
「あの人が約束破ってごめんって」
そいつは言った。
「それだけ伝えてくれってことだから」
そいつはそれだけ言って、戻ろうとした。でも、立ち止まって僕を振り向く。
「昨日のこと、絶対誰にも言うなよ」
そして、僕の返事を待たずに扉の方に歩き出そうとした。
「あ、あの、荒木君」
僕が声を掛けると、荒木君は立ち止まって振り向いた。
「あ、あの・・・」
言葉が出て来なかった。そもそも、僕は何を言おうとしたのか。
荒木君がまた扉の方に身体の向きを変えようとした。
「見せられなくてごめん」
何て言うかなんて考えてなかった。
「次は見せるから」
ただ、言葉が出てきた。
「別にいい。見たくないし」
それだけ言って、荒木君は扉の方に歩き出した。僕はその背中をしばらく見ていた。そして、あのお尻を。

僕は少し遅れて教室に戻った。途中、トイレの前の廊下を見回したけど、荒木君はいなかった。教室に入る前に、隣の教室をちらっと見る。ここに荒木君がいるはずだ。他の奴等は荒木君があんなことをしてるなんて知ってるだろうか。もちろん、知るわけないよな。勃起しそうになる。僕は慌てて教室に入って机に座った。
「どこ行ってた?」
友達が聞きに来た。
「別に」
そして、僕は話題を変えた。

午後の授業の最中、僕はトイレに行きたくなった。お昼休みに行くつもりだったのに、荒木君と屋上で話して、その後すっかり忘れていた。
「先生」
僕は手を上げた。トイレに行きたいって告げる。少し恥ずかしい。
「どうした、三島。珍しいな」
そして、許可してくれた。

みんなの注目を浴びながら、僕は教室を出る。廊下を歩いてトイレの方に行く。2組の教室を見る。荒木君の席はどこなんだろう。少なくとも、ドアの小さな窓からは見えないようだ。トイレに入る。小便器の前に立って、制服のズボンのチャックを下ろす。ちんこを引っ張り出す。
(なんであんなこと言ったんだろ)
さっき、荒木君に言ってしまったこと・・・なんで、次は見せるなんて言ったんだろう。そもそも、次って?
僕は荒木君に見られたいんだろうか。次っていうのは・・・もう一度見たい。それは思ってる。でも、見られたいんだろうか・・・小便器の前に立ったまま、隣に荒木君がいるのを想像する。荒木君は僕を見ている。僕の股間を見ている。勃起した。
(僕、見られたいの?)
自分の心が分からない。勃起したちんこをゆっくりとしごく。
(荒木君は僕に見られてどうなんだろ)
荒木君は気持ち良さそうだった。セックスを楽しんでいたと思う。あの人に入れられて喘ぎ声を出していた。
僕は誰もいないトイレで勃起したちんこをしごいていた。もし、今、荒木君が入ってきたら・・・
『脱げよ、全部』
僕はちんこを出したまま、小便器の前から離れて、大の個室の方に歩いた。個室に入ってドアを閉める。鍵を掛けてから、ズボンとボクブリを膝のところまで下げた。
上着とシャツをたくし上げる。それを胸の前で押さえたまましごき続ける。
「ん・・・」
(何してるんだろ)
先走りが出ている。それを指ですくい取って、その手をお尻に回す。お尻の穴にその指を当てる。穴に指の先を入れてみる。
荒木君の穴を思い出す。目を閉じる。荒木君の穴・・・指を鼻の前に持ってくる。あの時と同じ匂いがした。もう一度先走りを指ですくう。穴に指を押し当てる。そのまましゃがみ込んで、少し強く穴に指を入れていた。途中まで入る。服を押さえていた手を離して、その手でお尻を広げるように引っ張る。指をもっと奥まで入れる。奥の方は暖かい。荒木君の中を思い出す。荒木君のちんこを思い出す。
「うっ」
少し指を抜いて、もう一度入れてみる。荒木君の穴に入れたときみたいに、簡単には入らない。あの時はローションがあった。僕は穴から指を抜いて、その指を舐めた。唾液をローション代わりにして、また穴に入れた。奥まで入れる。荒木君にはあの男の人のちんこが入っていた。気持ち良さそうにしていた。お尻の穴が広がっていた。僕は・・・
(入れられてみたい)
僕も荒木君のように、されてみたい。でも、あの男の人は・・・
(デカかったよなぁ)
今、僕の穴は指1本で精一杯だ。荒木君みたいにアレを入れられて、気持ち良くなるんだろうか。指をもう1本入れてみる。痛い。やっぱり2本は無理だ。
(荒木君、凄いんだ)
自分でしてみて初めて分かった。
(荒木君のちんこくらいだったら・・・)
僕は自分のちんこを見る。荒木君もこれくらいの大きさだった。でも、指よりは全然太い。
(ローションあったら入るのかな)
荒木君に入れられるのを想像する。お尻の穴が広がって、荒木君が入ってくる。あの時、男の人がそうしたみたいに、お尻で荒木君が動く。そして・・・
「んっ」
射精した。精液が個室のドアに飛び散り、滴った。
「はぁ」
小さく溜め息を吐く。
(ますます荒木君と顔を合わすの恥ずかしくなったな)
トイレットペーパーでちんこと個室のドアを拭く。指の臭いを嗅ぐ。荒木君と同じ臭いがする指を口に入れる。
制服をちゃんと着て、個室から出た。手を洗って、また指の臭いを嗅いだ。もう臭いはしていない。少し残念な気がした。
(ちょっと遅くなったかな)
教室に戻った。誰も何も言わない。先生が早く席に着くように言っただけだ。思った程時間は経っていなかったのかもしれない。そんな短い時間で、僕は・・・

そっと手を顔に当てて、もう一度指の臭いを嗅いでみた。あの臭いがしている気がした。
 
      


Index