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あの学校のトイレでのオナニーがきっかけだったかもしれない。
もちろん、あの二人のセックスを見せてもらったのが始まりなのは間違いない。また見せて欲しいっていう気持ちはある、すごく。でも、今、僕が毎日思って毎日悩んでいることはそれじゃない。
僕が毎日考えていることは、荒木君のことだ。
あれから、友達とか、友達じゃない奴とか、とにかく同じ学年の奴を見ると、あのお尻がどうなってるのかとか、ちんこがどんなんだろうとか、そういうことばかり気になるようになった。もちろん、前から興味はあった。でも、なんていうか・・・前はズボン越しのお尻の形とかズボンの前の膨らみとか、そういうのを見て、その奧が見てみたいって思うくらいだったんだけど、今は・・・
例えば、友達が僕の前を歩いていたとする。僕はそのお尻をずっと見ている。その奥にあるお尻が見えてくる。きれいな形をしたお尻。それを手で広げると、その奧にお尻の穴がある。そこに顔を近づけると、あの臭いがする。勃起しそうになる。
そんなことを、誰のお尻を見ても想像してしまうようになった。もちろん実際に見たことがあるのは荒木君のお尻だけだ。だから、想像の中のお尻は荒木君のお尻だ。そして、また荒木君に見せて欲しいって思うんだ。でも、見せてって言っても見せてくれないだろう。だって、僕は見せなかったんだから。なんであの時見せなかったんだろう。あの時もっと荒木君を見ておくべきだった・・・とか考え始めてしまう。
今はあの男の人と荒木君のセックスより、荒木君を見たかった。あのお尻やお尻の穴や、あのちんこをもっと見てみたい。でも、そのためには・・・
悪いことも考えた。
「あの人としてること、学校で言いふらしてやる」
とか言って、荒木君を脅迫する。そして、荒木君をどこかに呼び出して、裸にさせる。四つん這いにさせてお尻を突き出させて、そこを開いて穴に鼻を押し付けて・・・別に友達じゃないんだし、それでも良いかもしれない、なんて。
でも、ただ言いふらすってだけじゃ、だめだよな。脅しにならない。あの時、写真でも撮っておいたら良かった。本気でそんなことを考えてみたりもする。でも、やっぱりダメだ。言いふらしたとしたら、何で僕がそんなことを知ってるのか、写真があったとしたら、どうやってその写真を手に入れたのか、説明できない。印刷して黒板に貼っておく、なんてことも考えたけど、そもそもそんな写真は持ってないんだから、意味がない。荒木君がこんなことをしてたってビラをまいても、文だけじゃ悪戯とかで片づけられる。
そして、そんなことをしたのは僕だって荒木君にはすぐに分かるだろう。そうなったらもう二度と・・・・・
やっぱりそんなことは出来ない。
だったらどうするか・・・
(やっぱ、見せるってことかなぁ)
いきなり家に呼んで、荒木君に見せて欲しいって頼んでみても相手にされないだろう。そもそも家に来るか?って感じだ。でも、この前見せるからって言ったんだから、その約束を実行するために家に呼ぶってのは有りだと思う。

問題は、僕が本当に見せられるかってことだ。
もし家に来てもらえたとして、その時も「やっぱ無理」じゃ終わりだ。つまり、絶対に荒木君の前でオナニーしなきゃならない。それか、もう、見せてもらうのを諦めるか、だ。
あの男の人にもう一度セックスしてるところを見せて欲しいって頼むのも有りかもしれない。でも、それも頼みにくい。この前、あの人が見せてやってくれって言ったのに、僕は見せずに逃げ帰ってきたんだから。
(やっぱ、やるしかない、か・・・)
何度考えてみても、結局たどり着くのはそこだった。

僕は毎日2回、オナニーしている。朝、起きてベッドから出る前に1回。夜、お風呂で2回目。それを毎日してるし、時々、寝る前にももう1回するときもある。
(そうだ、オナ禁したら)
オナニー禁止。でも、荒木君の前でなら、しても良い。そういうルールを自分の中で決めた。そういうルールなら、荒木君の前以外ではオナニーできないし、荒木君の前でオナニーするのが恥ずかしいって気持ちよりも、オナニーしたいって気持ちが勝つくらいまでオナ禁すれば、きっと見せられるようになると思った。

早速、その日の夜から僕はオナニーをやめた。

思っていたよりも、オナニー出来ないというのはきつい、ということがすぐに分かった。
翌朝、ベッドから出る前、僕はいつものように勃起したちんこを握りしめた。
(あ、だめだって)
そう思ったけど、止められない。いつものように頭の中に荒木君が現れる。その荒木君の体を見ながら、僕はしごく。
(だめだって)
数回しごいて、これからってところでなんとか手を止める。そのまま着替えて顔を洗いに行く。朝ご飯を食べる。そして、学校に行く。
授業中、ほとんど勃起しっぱなしだった。それをズボンの上からぎゅっと手で押さえる。そのまま押さえ付けて、なんとか落ち着かせる。休み時間はそうやって乗り切った。家に帰ってからもずっと勃起している。少し外に走りに行ったりしてごまかす。夕食を食べ、お風呂に入る。体を洗う。勃起する。お風呂から出る。体を拭く。勃起する。
(くそっ オナニーしたい)
勃起しながらベッドに入る。俯せになって、布団にちんこを押し付ける。
そんな調子で、僕のオナ禁は3日が限界だった。それでもなんとか頑張って、5日間耐えた。ちんこが爆発するんじゃないか、そんな気がした。

昼休み、僕は荒木君を探していた。廊下から隣の教室を覗き込んでみたけど、姿がない。屋上に行ってみた。見つからない。
(ああくそっ どこ行ったんだよ)
別に荒木君が悪い訳でもなんでもないのに腹が立つ。そのまま昼休みが終わってしまう。午後の授業が始まった。その間、僕はずっと小刻みに足を動かしていた。動かしていないと耐えられない。授業が終わる。教室を飛び出す。荒木君は・・・
(いた!!)
荒木君が、友達らしい二人と教室から出てきた。
「あ、荒木君」
僕は声を掛ける。荒木君は怪訝そうに僕を見た。
「なに?」
そんな荒木君の腕を掴んで、僕は引っ張った。そのまま屋上に連れて行く。
「なに?」
荒木君は少し怒った様な声だ。でも、僕も必死だ。昼休み以外は屋上には人はあまり上がってこない。荒木君の腕を掴んだまま、角のところに行く。フェンスに背を当てた荒木君の前に立つ。
「だから、なに?」
「あ、あの、あの・・・」
でも、荒木君を目の前にすると、言えなかった。別に何も難しいことじゃないのに・・・
「何だよ、お前」
荒木君がフェンスから離れようとした。
「きょ、今日、ウチに来て」
ようやく言えた。荒木君が僕の顔を見る。
「だ、ダメかな・・・」
風船がしぼんだように、僕の気持ちもしぼんでいく。急にそんなこと言われて、荒木君はどう思っただろう。荒木君はしばらく僕の顔を見ていた。いや、睨んでいたと言う方が正しいかもしれない。
「・・・別にいいけど」
しばらくして、そう言った。
「え、え、あ、じゃ、放課後、校門のところで」
「分かった」
そして、荒木君は教室に戻る。僕はそのまま屋上に一人残った。勃起していた。
(やった・・・)
ほっとした。何をどうほっとしたのかはわからないけど、とにかくほっとした。
と、授業開始の時間になった。僕はまた、勃起したちんこをぎゅっと押さえ付けて、教室に戻った。さっきとは違う意味で、ドキドキしながら体を小刻みに動かしていた。

授業が終わって、ホームルーム。その時間がやたら長く感じた。ようやくそれも終わる。友達の一緒に帰ろうっていう声を背中で聞き流しながら、僕は急いで教室を出た。廊下を早足で歩いて、靴を履き替えて、小走りで校門の所に向かう。まだ荒木君は来ていない。ドキドキしながら待つ。
(何をドキドキしてるんだろう)
オナニーできるからドキドキするんだろうか、荒木君が本当に来てくれるかどうか不安だからだろうか、それとも、荒木君の前でオナニーしなきゃならないからなんだろうか・・・その答えが出る前に、荒木君が一人で歩いてきた。
「あ、あ・・・」
ありがとうって言うつもりだった。誘いに乗ってくれてありがとうって。でも、言葉が出なかった。そうこうしている間に荒木君が僕の横に立った。
「どっち?」
僕は何も言えないまま、家に向かって歩き出した。荒木君が僕の後に付いて来るのを感じる。あの荒木君が・・・僕の家に来るんだ。そう思っただけで勃起する。二人とも一言も言わないまま、やがて僕の家に着いた。
僕の部屋に入るまでの間も、僕等は何も言わなかった。今日は木曜日だから、お母さんはパートの日だ。だから、家には僕と荒木君以外誰もいない。そういう意味でも、今日はチャンスだ。
「で、なんなの?」
僕の部屋に入って床に座った荒木君が言った。
「あの、約束だったから」
僕は少し俯き加減で、上目遣いに荒木君を見る。
「ああ、オナニー?」
「うん・・・」
覚えていたのが少し意外だった。確か、あの時は別にいいとか、見たくないって言われたのに。
「あの、あの・・・さ・・・」
「なに?」
しばらく沈黙。
「あれからも、あの人とは・・・してるの?」
聞いてしまってから、それが気になっていたんだって気が付いた。
「そんなのお前に関係ないだろ」
「そうだけど・・・」
それ以上、何も言えない。だったら・・・僕はベッドの端に座る。シャツのボタンを外す。シャツを脱いで、軽く丸めて横に置く。Tシャツを脱いで、上半身裸になる。荒木君が僕を見つめている。視線は合わせられない。合わせる勇気がない。足を上げてソックスを脱ぐ。それを横に置く。ベルトを外す。口の中がからからになっている。そういや、お茶も出してない。
「な、何か、飲む?」
かすれた声で聞いてみた。
「いらない」
荒木君の声は少しうわずっている様に感じた。荒木君も興奮してるんだろうか・・・表情はいつものままだ。股間は・・・服の皺でどうなってるのか分からない。でも、もし、荒木君が僕を見て興奮しているのなら・・・僕はジッパーを下ろした。腰を少し上げて、ズボンを脱ぐ。そして、ボクブリだけになる。その真ん中はすでに突っ張っている。荒木君が唾を飲み込む音が聞こえた。間違いない。荒木君も興奮しているんだ。
ボクブリに手を掛ける。荒木君が僕を見つめている。今、僕は荒木君の前で、自分で全部脱ごうとしてるんだ。興奮してくる。少しだけボクブリをずらす。ギリギリ毛が見える手前まで。荒木君を見る。荒木君が顔を上げる。初めて視線が絡み合う。僕はそのまま荒木君を見つめる。荒木君は顔を下げて、僕の股間を見る。
「見せて」
荒木君が言った。
「見たい?」
僕は尋ねる。荒木君は無言で頷く。僕はボクブリを一気に足首まで下ろした。僕の勃起したちんこが荒木君の目の前に晒された。それを見られている。僕は足を開いて、ゆっくりと手を股間に近づけた。
ちんこを握る。ゆっくりと手を上下に動かす。荒木君がそれを見ている。間違いなく荒木君も勃起している筈だ。ベッドの端に座ったまま、上半身をベッドに倒す。足を持ち上げて、ベッドの端に下ろす。たぶん、荒木君に、僕のちんこと玉とお尻の穴が見えている筈だ。僕は全部を荒木君に晒しているんだ。手が少しずつ早くなる。目を閉じる。そのままちんこをしごく。徐々に気持ち良くなってくる。少し息が荒くなる。時々足を持ち上げる。きっと荒木君は僕をずっと見ている筈。その視線を感じながらしごき続ける。
「ああ」
声を出す。いや、自然と声が出た。いつもは声なんて出した事はなかった。でも、今は“いつも”とは違う。荒木君に見られているんだ。
目を開く。荒木君が僕の股間のすぐ近くに来ていた。すぐ近くで勃起させながらしごいている僕を、僕のちんこを、玉を、お尻の穴を見ている。また足を持ち上げる。荒木君にお尻の穴を晒す。見られる。見てもらう。興奮してる。凄く、興奮してる。
「あ、いきそう」
僕は荒木君に見られながらいきそうになっていた。荒木君は何も言わない。ただ、僕を、僕のちんこを見つめている。
「ああ、いくっ」
そして、僕は射精した。一回目は僕の顔にまで飛んできた。そのまま、2回、3回とお腹の上にぶちまける。荒木君が立ち上がって、上から僕がいったところを見ていた。僕のちんこから精液が出る所を見ていた。僕がいくときの顔を見ていた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
荒い息。精液の臭い。荒木君に見られた恥ずかしさ。荒木君に見てもらった満足感。5日ぶりの射精の気持ち良さ。そういうものが全部混じった高揚感。僕はしばらく動けなかった。その間も荒木君はすぐ近くで僕の体を、僕の精液をじっくりと見ている。はっきりと、荒木君の股間が盛り上がっている。
「ティッシュ、取ってくれない?」
僕は机の横にぶら下がっているティッシュの箱を指差した。荒木君がそれを取りに行くのを見つめる。あのお尻がそこにある。ティッシュの箱を渡される。そこから4、5枚抜き出して、顔と体に飛び散った精液を拭き取る。でも、まだ勃起したままだった。
「あの人と、した?」
体をティッシュで拭いながら、僕はもう一度聞いた。
「してる」
僕を見つめたまま、荒木君はそう答えた。僕はまた勃起したままのちんこを握った。
「入れられてるの?」
「うん」
それだけで充分だった。目を閉じて、荒木君がお尻に入れられていた時のことを思い出す。手が早くなる。荒木君のお尻の穴に太いちんこが出入りしている。
「いくっ」
5日間のオナ禁の成果なのか、さっきとあまり変わらない量の精液が、今度はちんこの先からどろっとお腹に滴った。
今度は何も言わなくても、荒木君がティッシュを数枚渡してくれた。

しばらく裸のまま、ベッドに寝そべっていた。荒木君は床に座っている。でも、目は僕の体を見ている。ちんこはしばらくはまだ勃起していたけど、今はもう普通だ。
手をお腹に乗せる。そのまま自分の体を撫でる。下に降ろして毛を撫でる。
「そういや、荒木君って毛が少なかったよね」
同年代の裸を全く見たことが無いわけじゃない。僕の毛の量は、まぁ普通だと思う。あの時、荒木君は毛が少なかったように思った。
「剃られたから」
内心少し驚いた。そんなこと、想像もしてなかった。毛を剃って、どうするんだろう。
「あの時のこと、誰にも言うなよ」
「何をいまさら・・・」
誰にも言える訳がない。それに、僕だって。
「今日、僕が見せたのも誰にも言うなよ」
荒木君は頷いた。
「じゃ、帰る」
立ち上がった。
「え、ちょ、ちょっと」
僕は慌ててどこかに脱ぎ捨てたボクブリを探す。
「もう用は済んだでしょ。帰る」
荒木君はもう部屋を出て行こうとしていた。僕はまだ素っ裸だ。いくら今日は他に誰も居ないとはいえ、素っ裸で家の中をうろうろするのは恥ずかしい。ようやくボクブリを見つけて足を通す。
「ちょっと待ってよ」
ズボンに片足を通し、飛び跳ねながらもう片方の足も通す。Tシャツを拾い上げて、荒木君の後を追う。玄関にたどり着く頃には、一応Tシャツも着終わっていた。
「じゃ」
それだけ言って、ドアを開けようとする。
「あ、あのさ」
「なに」
いつものぶっきらぼうの荒木君に戻っていた。
「また・・・来てくれる?」
「別にいいけど」
それだけ言って、ドアを開ける。
「じゃ、また」
そう言って、荒木君は出て行った。がしゃんとドアが閉まる音。僕は玄関で一人突っ立っていた。
「またって言ったよな」
そう呟く。自分の部屋に引き返す。
(また来てくれるんだ)
途中、キッチンに寄って、水を一杯飲んだ。すると、急に顔が熱くなる。
(全部見られたよな・・・いくところも、お尻の穴も)
顔が真っ赤になっているのを感じた。それと同時に、
「でも、気持ち良かった」
声に出して言った。気持ち良くて、満足していた。
自分の部屋のドアノブを握る。ドアを開くと同時に大きな声で言った。
「気持ち良かったぁ」
部屋に入ったとたん、精液の臭いがした。
 
      


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