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あれから3週間、何もなかった。
何もしなかった訳じゃない。荒木君とは話をしようとしたけど、避けられてるというか、逃げられてるというか・・・とにかく、話ができるチャンスがなかった。
(LINEくらい交換すれば良かったかな)
でも、たぶん、荒木君はそういうの、拒否しそうな感じだ。もし仮に教えてくれたとしても、既読無視ばかりされそうだ。あいつはきっとそういう奴だ。
でも、学校で見掛ける荒木君は友達と一緒に笑ってたりふざけ合ってたりもしている。そういう姿は何度も見かけた。でも、僕が見ているのに気が付くと、一瞬真顔に戻る。そして、僕を無視してまた笑顔に戻って友達と話をする。そんな荒木君は僕が知ってる荒木君より幼く見える。いや、たぶん、そっちが年相応なんだろうな。僕だって友達とふざけてたりすると、ガキっぽく見えるんじゃないかって思う。ただ、僕と荒木君はお互い友達には見せていない、秘密の一面を知っているんだ。
僕はその関係をもっと・・・何て言ったらいいのか・・・もっとしたいって思ってる。でも、荒木君はどうなんだろうか。
荒木君はあの男の人としているらしい。だから、それで満足しているんだろうか。だから、僕とは別にしたいとは思わないんだろうか。荒木君はあの人が好きなんだろうか・・・
(いやいや)
僕は頭を振る。なんだか僕が荒木君を好きになってるみたいだ。違う。そうじゃない。僕はただ、荒木君とああいう・・・秘密?をもっと共有したいんだ。そう。人に言えない秘密の共有。僕は荒木君とはそういう関係になりたいと思ってるんだ。
でも、そのためにはどうすればいいんだろうか。
家に来てくれるかどうかについては、「別にいいけど」って言ってた。だから、また来て欲しい。でも、その話をしたいと思ってても荒木君には無視されている。僕は荒木君に嫌われてるんだろうか。やっぱり自分がセックスしてるところを見られるのはそんなに嫌なことだったんだろうか・・・

そんな悶々とした日はあっけなく終わりを迎えた。
「今日、行ってもいい?」
荒木君にそう言われたのは、朝、教室に入る直前だった。突然声を掛けられた僕はびっくりしてしまって、少しの間固まってた。そもそも荒木君が近くにいたことにすら気が付いていなかった。後ろからやって来た荒木君が、僕を追い抜いた瞬間、僕の横でそう言ってきたんだ。
でも、その日は運悪く火曜日だった。

僕のお父さんは毎日帰ってくるのは夜かなり遅くなってからだ。だから、お父さんのことは別にどうでもいい。問題は、お母さんだ。
「え、きょ、今日はお母さんいるし」
とっさに出てきたのがそんな答えだ。
「いいよ、それでも」
荒木君らしく、ぶっきらぼうに答える。
「え、でも、できないよ、お母さんいたら」
すると、荒木君は真面目な顔をして答えた。
「お前、なにするつもりなんだよ」
そうだ。別に「家に来る」イコール「セックスする」って訳じゃない。そんなことは当たり前だ。友達だったら。
でも、荒木君は友達じゃない。荒木君とは普通の関係でもない。荒木君が家に来たら、一緒にゲームをしたり、昨日のテレビのことであれこれ話をしたり、なんてことはしない。あり得ない。僕と荒木君はそういう関係じゃないんだ。荒木君がウチに来るってことは・・・
「そ、それは・・・」
僕は口ごもった。周りに何人かいる。少し離れているけど僕の友達もいる。僕が今、言おうとしたことはそんなところで言えるようなことじゃない。
「別にいいけど」
どうやらそれは荒木君の口癖みたいなもののようだ。
「じゃ、いつならいいの?」
僕のお母さんは、水・木・金とパートに出ている。だから、僕は答えた。
「明日なら」
「わかった」
そして、荒木君は何事もなかったかのように背を向けて自分の教室に入っていった。
(結局、何しに来るんだろう)
戸惑っている僕を残して。
その日はオナニーはやめておいた。荒木君が何をしにウチに来るのかよく分からないけど、一応、念のためだ。そして、次の朝を迎えた。

いつも通り、学校じゃ、みんなの前では僕と荒木君はほとんど言葉を交わさない。それどころか目も合わさない。友達じゃないんだから当然だ。
でも、放課後、僕等は校門のところで待ち合わせる。僕が先を歩き、少し後ろを荒木君が歩く。そうして、僕の家に到着する。

鍵を開けて家に入る。何も言わなくても荒木君も入ってくる。
「お邪魔します」
荒木君はそう小さな声で言う。荒木君が入ったら、内側からドアの鍵を掛ける。そのまま僕の部屋に行く。部屋のドアにも鍵を掛ける。荒木君は無言で床に座る。僕はベッドの端に座る。
「今日は、なに?」
喉が渇いていた。舌が乾いた口の中にくっついて、なんだかしゃべりにくい。
「またオナニー見せてよ」
少しだけ意外だった。
「前見せたから、次は荒木君の番でしょ」
思ったことをそのまま伝える。
「人のセックス見ておいて、あれで済まそうっていうの?」
僕は前に考えていたことを思い出した。
「セックスしてるとこ見られるのって、そんなに嫌だった?」
「嫌に決まってる。オナニーの100倍恥ずかしいし」
「あの時、荒木君はなんて言われてたの?」
「見たいって人がいるからって言われて」
「荒木君はいいとか嫌とか言わなかった?」
「こっちの気持ち関係なしだったから」
(そうなんだ)
僕はてっきり荒木君も同意して見せてくれたんだと思ってた。でも、あの男の人が勝手に決めたみたいだ。だったら・・・本当に恥ずかしかったんだろうな。
「分かった。でも、次は荒木君見せてよね」
荒木君が頷いた。僕はシャツとTシャツを脱いで上半身裸になった。荒木君が僕ににじり寄る。
「あんまり見つめないでよ、恥ずかしいから」
そう言いながら、セックスしてるのを見られてた荒木君は、もっと恥ずかしかったんだろうな、と思う。
ズボンのベルトを外し、腰を浮かせてズボンを脱ぐ。ボクブリに手を掛ける。でも、そこでちょっと躊躇した。前にオナニーしてるとこを見せたとは言え、やっぱりちょっと恥ずかしい。そんな僕を、荒木君は無言で見つめている。手は股間に当てている。そこは明らかに勃起している。それを両手で押さえているんだ。
(やっぱり、荒木君も見たいんだ)
「ね、勃起してるんでしょ? その手、どけてよ」
荒木君は手をどける。やっぱりそこは盛り上がっている。僕もボクブリの奧で勃起する。それを荒木君が勃起させながら見ている。その視線を感じながら、腰を浮かせてボクブリをずり下げ、そこを荒木君に晒した。
前にした時よりは、少し余裕を感じる。勃起したちんこの根元を持って、荒木君を挑発するようにちんこを揺らしてみる。ゆっくりと円を描くように動かしてみると、荒木君の目が明らかにそれを追いかけている。
「触る?」
「えっ」
荒木君が少し驚いたように僕の顔を見た。そんな荒木君の表情は初めてだ。
「触りたい?」
荒木君がこくっと頷いた。
「いいよ、触っても」
荒木君が手を伸ばしかけた。伸ばしかけて、止める。
「いいよ。触りたいんでしょ?」
僕がそう言ってやると、荒木君が手を伸ばした。もう少しで触れそうなところで、また手を止める。僕を見上げる。
意外だった。荒木君なら平気で触ると思ってた。だって、あの男の人のを触り慣れてるだろうし。でも、荒木君は今、躊躇して僕を見上げている。なんだか少し可愛く感じる。僕はそんな荒木君を見下ろして言った。
「いいよ」
そして頷いた。荒木君の手がゆっくりと伸びて、僕のちんこに触れた。
「あっ」
荒木君が大きく息をしたのと同時に僕が声を出した。ほんの少し触れられただけなのに、体中にビリッと電気が走る。そのまま荒木君の手が僕のちんこをなで上げる。
「ああっ」
そして、掴まれる。ゆっくりとしごき始める。僕は上半身をベッドに倒して、両手を横に広げた。荒木君が立ち上がり、ベッドに上がって僕の横に座り込んだ。
「熱い」
荒木君が僕のちんこを握りしめながら呟いた。息が荒くなっている。
「もっとしごいて」
僕の言う通り、荒木君がしごいてくれる。
「体撫でて」
荒木君が左手で僕の胸の辺りを撫でる。そのまま乳首を軽く抓り、お臍をなぞり、そして毛に指を絡める。
「ああ、気持ちいい・・・」
自然にそんなことを言っていた。荒木君の右手が少しずつ早くなっていく。僕は右手で荒木君の太ももを撫でる。荒木君が僕の顔を見る。目が合った。
荒木君が僕に顔を近づけた。僕はその顔に手を添えて、口を寄せた。荒木君が僕に唇を押し付ける。一旦離して、もう一度。今度はじっくり時間を掛ける。そして舌が入ってくる。僕も舌を絡める。手を荒木君の背中から腰に滑らせる。股間に手をねじ込む。ズボンの上から固くなっている荒木君を握る。その間、ずっと舌を絡め合ったままだ。
「ああ」
荒木君が喘ぐ。僕も喘ぐ。ちんこをしごく手がますます早くなる。僕は再び手を広げ、荒木君の顔に寄せていた頭をベッドに預け、大の字になる。荒木君の左手が僕の体を這い回り、右手が僕をいかせようとしている。僕は自分の体の全てを荒木君に任せた。
荒木君は時々手を休めながら、ずっと僕をしごいてくれていた。やがて、僕はいきそうになる。
「ああ、いきそう」
そう言うと、僕を握る手が強まり、更に激しくしごかれる。
「ああ、いくっ」
荒木君はぎゅっと握ってくれる。僕は体に力を込める。そしてまもなく、僕は射精した。
「ああっ」
精液が僕の頭を越えてシーツを濡らした。僕の顔、胸、お腹にも飛び散る。
「すごい・・・」
荒木君はそう呟きながらしごく手を止めない。体の力を抜いて、また荒木君に体を任せる。荒木君は右手で僕をしごきながら、左手で僕のお腹に垂れている僕の精液をすくい取った。それを自分の口に運ぶ。2,3回そうした後、同じように僕の口にも運んだ。僕はそれを舐める。荒木君の指に舌を絡め、吸う。
「ああ、またいくっ」
今度は僕は腰を突き上げた。さっきと同じように精液が飛ぶ。少し前屈みになっていた荒木君の顔に精液が飛び、滴る。すると、荒木君は僕のちんこに顔を近づけて、僕の精液を顔面で受けようとした。でも、もうそんなに精液は飛ばなかった。ちんこの先からどろっと滴り、荒木君の手から僕のお腹に垂れていった。

何も言わなくても荒木君はティッシュの箱から何枚かティッシュを取り出して僕の体を拭いてくれた。頬にはまだ僕の精液が付いている。
「顔、付いてる」
僕が言うと、そこをティッシュで拭う。でも、まだ少し残っていた。僕は体を起こして荒木君の顔に顔を寄せた。舌を伸ばして、荒木君の頬に残っていた精液を舐め取る。その後、少しだけ見つめ合って、もう一度口を重ねる。そのまま僕はまたベッドに体を倒す。荒木君は僕の体のまだ拭き取れていない精液を舐めてくれた。

「精液って不味いんだね」
全裸でベッドに寝そべったまま、隣で同じように横になっている荒木君に言った。
「慣れるとそうでもない」
もちろん、荒木君は服を着ている。
「そんなに飲んでるの?」
「たまに」
「そうなんだ・・・」
さっき、僕は荒木君が指ですくい取った僕の精液を舐めた。それは僕に取って初めてのことだった。もちろん、人の精液なんて舐めたことはない。でも、荒木君は僕の精液を舐めてくれた。
「僕の精液、なんで舐めたの?」
しばらく待ってみたけど、荒木君は何も答えなかった。
「セックスするときは、相手の精液はいつも飲むとか?」
「中に出されたりとか飲んだりとか」
あのセックスのときのことを思い出した。荒木君が男の人に入れられた後のお尻の穴。そして、そこから滴る男の人の精液・・・
また僕のちんこが勃起し始めた。
「なに考えてんだよ」
それを見て荒木君が尋ねた。
「この前の・・・」
少し言いよどんだ。
「お尻に入れられて、その後、穴から」
「帰る」
急に荒木君が体を起こした。
「ええっ」
僕も慌てて体を起こす。
「あ、変なこと言ってごめん」
あの時のことを言ったから、荒木君が怒ったのかと思った。
「水木金ならいいんだよね?」
「え、あ、うん」
僕は前と同じように、床に落ちているボクブリやTシャツを拾いながら答えた。ボクブリに足を通す。Tシャツを着る。ズボンを履く。荒木君は、今回は僕が服を着るのを待っていてくれた。
「今度は荒木君見せてよね」
「気が向いたらね」
でも、僕が服を着終えるとさっさと部屋から出て行く。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
その背中を追いかける。
「ね、LINEのID教えてよ」
荒木君が立ち止まった。そして振り向く。
「友達じゃないし」
それだけ言って、今度は立ち止まらずに玄関に向かった。
「じゃ、僕等って、何なんだ?」
靴を履いている荒木君に向かって尋ねた。
「セクフレかな」
そうかもしれないとは思っていた。でも、それは・・・
「お前、俺としたいの?」
そう。僕はそう思っていても、荒木君は違うかもしれないって思ってた。
「まあ、ね」
そして、ドアを開けて出て行った。僕はドアが閉まるのを見ていた。
(まあ、ね、か)
がちゃんとドアが閉まる。
(ってことは、荒木君も僕としたいんだ)
自分の部屋に戻る。たぶん、精液の臭いがする部屋に。
ドアを開くとやっぱり精液の臭いがした。僕は呟いた。
「セクフレ、かぁ・・・」
ズボンのジッパーが開いたままになっているのに気が付いた。そのまま部屋に入る。開いたままのジッパーからちんこを引っ張り出す。ちんこはもう半勃ちだ。ベッドに寝転がる。目を閉じる。あの時、荒木君のお尻の穴から白い精液が溢れ出てきたのを思い出す。ちんこをしごく。すぐに固くなる。ベルトを外し、腰を浮かせてズボンとボクブリを下ろす。
「ああ・・・」
荒木君の顔。
(僕は荒木君とどうなりたいんだろう)
ちんこを左手に持ち替える。いつもと少し感じが違う。荒木君に握られていたときの感覚とダブる。
(僕は・・・荒木君の・・・)
3回目の射精をした。さすがにもう勢いよく飛ぶことはなかった。お腹に垂れていた精液を指ですくう。それを口に運んだ。
「うえっ不味っ」
やっぱり嫌な味だ。でも、荒木君はそれを舐めてくれた。
(荒木君のだったら、もうちょっと舐められるのかな)
目を瞑る。
(ホントに・・・荒木君とどうなるんだろうな)
たぶん、また来てくれる。その時は・・・
(それまでオナ禁かなぁ・・・)
少し楽しみで、少し不安だ。
(でも、もう1回だけ)
4回目の射精。その精液の味は少し薄い感じがした。
 
      


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