「明日、いい?」
荒木君からそう言われたのは、あの時から2週間後の火曜日だった。
「えっいっいいけど」
少しどもりながら僕は答えた。
「今度は・・・見、見せて・・・」
「さあね」
荒木君は卑怯だ。答えをはぐらかして、そのまま背中を向ける。
「どうなんだよ」
僕はその背中に向かって少し大きな声で言った。答えは期待していなかった。
「お互いね」
背中を向けたまま荒木君が言った。そして、自分の教室に向かって歩いて行く。僕は廊下に一人で立っている。
(お互いって・・・)
その意味を頭が理解する前に、体が理解していた。それに気が付く前に、もう、勃起していたんだ。
一応、オナ禁はしていた。でも、あれからずっとって訳じゃない。だって、荒木君はあれから何にも言わないし、いつ、次があるのかも分からなかったから。だから、まぁ基本はいつ何かあっても良いようにオナ禁っぽくしてるけど、絶対禁止って訳じゃない。実は昨日したところだ。昨日したのが大体一週間ぶりくらいだ。
あの荒木君が僕の精液を舐めてくれたときから、結局3回オナニーしてる。3回とも、自分の精液を舐めてみようと思ってた。いく前は。でも、いってしまうと、あの精液の不味い味を思い出して、舐められなくなっちゃう。荒木君のようにはなかなかできない。
でも、明日、荒木君がまたウチに来る。今度はお互い見せるんだ。僕がオナニーしてるとこも、荒木君がオナニーするとこも。
その日は朝から興奮していた。もちろん、昨日からオナニーはしていない。授業中もずっと勃起していた。昼休みもずっとポケットに手を突っ込んで、勃起したこんこを押さえてた。そして今、荒木君は僕の後ろを歩いてる。荒木君もポケットに手を突っ込んでる。
(僕と同じように押さえてるのかな)
聞いてみたかったけど、聞かなかった。だって、そんなこと聞かなくても、これから荒木君がするところを見れるんだから。
部屋に入る。いつものように僕はベッドの端に座る。目の前に荒木君があぐらをかく。お互い手を股間に当てている。僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
「お互い・・・見せ合いってことでいいんだよね」
荒木君はコクリと頷いた。僕は勃起したちんこを押さえていた手をゆっくりと下ろす。
「立ってる」
荒木君が小さな声で言った。そして、荒木君も手を下ろした。
「荒木君も」
息が荒くなっている。僕はベッドの端から降りて、荒木君に近づいた。そこに手を伸ばす。固くなった荒木君にズボンの上から触れる。荒木君は少し恥ずかしそうに俯いた。
僕は立ち上がって、上半身裸になる。
「あ、荒木君も」
荒木君はゆっくりとシャツのボタンを外す。僕はベッドの端に座り直す。もう勃起して盛り上がっているズボンの股間を隠さなかった。荒木君も上半身裸になった。
「じゃ・・・脱ぐよ」
荒木君が頷く。僕はズボンのベルトを緩め、腰を上げて膝まで下ろした。ボクブリの真ん中が盛り上がってシミが出来ている。荒木君は立ち上がって、同じようにズボンを下げた。荒木君の股間も僕と同じ。
「ああ、すげっ」
僕は自分のボクブリの盛り上がった頂点を親指の腹で撫でながら、荒木君の盛り上がりを見ている。そこには僕と同じようにシミができていて、それが急に広がっている。僕も同じだろう。荒木君はボクブリに手を入れて、その中でちんこをしごき始める。僕も同じようにする。ベッドの横で、僕等二人はボクブリだけの裸で向き合って、ボクブリの中でしごいているのを見つめ合っていた。
「見せてよ」
荒木君の声が少し震えている。僕はボクブリに指を掛けて、一気に下ろした。ちんこが反動で跳ね上がる。荒木君の喉仏が動く。
「見せて」
僕の声がかすれる。でも、荒木君にはちゃんと伝わっている。荒木君もボクブリを下ろした。
「うわっ」
初めて見る訳じゃない。その筈なのに、初めて見るような気分だ。いや、荒木君が僕に見せてくれるのは初めて、と言ってもいいのかもしれない。今、目の前で荒木君がボクブリを脱いで、勃起したちんこを見せてくれたこと。それに凄く興奮している。
「先走り、すごい」
荒木君に言われて自分の股間を見てみた。ちんこの先から透明の先走りが床まで滴っていた。
「すっごく興奮してる」
鼻息が荒くなっている。荒木君に先走りが出ているのを見られながら、ちんこの皮を剥く。そして、その皮を戻して亀頭を包み込み、親指と人差し指でつまんでグニグニと動かす。くちょくちょと音がする。その音は荒木君にも聞こえている。その証拠に荒木君も同じように、皮で亀頭を包んでグニグニし始めた。
僕の音と荒木君の音。そして、僕の息遣いと荒木君の息遣い。二人とも少し震える様な息遣いだ。
「触らせて」
そう言ったのは荒木君の方だ。僕は黙って頷く。荒木君が手を伸ばす。今日は躊躇しない。そのまま僕を握る。僕は荒木君の顔を見る。荒木君は頷く。僕も荒木君に手を伸ばし、それを握った。
「すっげぇ」
何がどう凄いのかはよく分からない。でも、凄いと思う。勃起した僕を荒木君が握って、勃起した荒木君を僕が握っている。
「は、あ、あ、あ」
荒木君が絶え絶えに息を吐いた。僕だって同じだ。お互いのちんこをしごく。いつのまにか僕達の距離はすぐ近くまで縮まっていた。
僕の右手は荒木君を握ったまま。左手は荒木君の背中を撫でている。荒木君だって同じだ。荒木君は僕の腰の辺りからおしりにかけて撫でている。相変わらず息は荒い。そして、時々顔を見つめ合って、キスをする。そのまま二人で抱き合う。ちんこは握ったまま、お互いの左手を相手の背中に回してぎゅっと体を抱き寄せる。荒木君の体温が伝わってくる。
(裸で抱き合うのって、こんなに気持ちいいんだ)
僕は荒木君に抱き締められながら、荒木君を抱き締めながら思った。そして、荒木君のちんこから手を離して、両手で抱き締める。荒木君もそうする。二人でぎゅっと抱き合ったまま、僕はベッドに押し倒された。
荒木君が僕を見下ろしている。顔が近づく。そのままキスをする。僕の勃起したままのちんこが荒木君の熱いちんこと擦れ合う。そのまま押しつけるように腰を動かす。二人でちんこを擦りつけあう。
「すっげ、熱い」
荒木君の背中に両手を回したまま、その耳元で囁く。そのまま手を下ろして荒木君のお尻を撫でる。あのお尻・・・男の人に入れられて、中に精液を出されてたお尻。でも、今はそんなことはどうでもいい。ただ、気持ち良い。
荒木君がベッドで仰向けになっている僕の太ももの上に座り込んだ。そのまま、左手で僕のちんこをしごく。右手は自分のちんこをしごいている。
荒木君の顔が、いつもと違っていた。少し笑ったような、でもほんの少しだけ眉間に皺が寄った、なんていうか・・・気持ち良さそうな顔。そうとしか表現できない。たぶん、僕も同じ顔をしているんだと思う。荒木君にしごかれて気持ち良い。そんな気持ち良さそうな顔を、僕の上でしているのが嬉しい。僕は手を伸ばして荒木君の腰の辺りをなで回す。
そして・・・
「ああ、いきそう」
僕は呟いた。すると、荒木君は自分のちんこをしごくのをやめて、左手で僕のちんこをしごきながら、右手を僕のちんこの前にかざした。
「あ、いくっ」
僕のちんこから精液が飛び出した。その精液は、荒木君の手のひらに当たって僕の臍の辺りに滴り落ちる。
「あっ」
何度か体を震わせて、僕は荒木君にいかされた。
そして、荒木君は僕の精液まみれになった右手で自分のちんこを握った。そのまましごく。僕の精液が荒木君のちんこでくちゅくちゅと音を立てる。イヤらしい音だ。そして、少し腰を上げて、上半身は僕に重ねた。
「んっ」
そのまま体を震わせる。僕のお腹の辺りに暖かいものを感じる。荒木君の精液だ。荒木君が僕のお腹に射精したんだ。
「ふぅ・・・」
息を吐きながら荒木君が体を起こす。僕のお臍を挟んで、それより下に僕の精液、上に荒木君の精液だ。二人とも、結構な量を出している。荒木君は右手の人差し指で、まず自分の精液を僕のお臍の辺りにかき寄せる。そして、僕の精液も同じようにする。僕等二人の精液が、お臍の辺りに集められる。荒木君はそれを指でぐるぐると混ぜ合わせた。指で摘まむようにしてすくい上げて、自分の口に入れる。そして、また、指で混ぜ合わせる。
荒木君がどうしたいのか分かった。僕は口を開いた。荒木君の指が僕の口に入ってくる。僕はその指に絡みついた、僕と荒木君の精液を舐め取った。同じようにまた、荒木君が舐める。次は僕。そうやって二人が混じり合った精液を、二人で舐め合った。
不思議と不味いとは思わなかった。
「なんか・・・ちょっと意外」
二人で全裸のままベッドに寝そべりながら、僕は口を開いた。
「何が?」
何て言ったらいいんだろう・・・僕は少し考えた。
「荒木君はちんことか見慣れてるんじゃないかなって」
荒木君が僕の方に顔を向けた。僕も荒木君を見る。
「ほら、僕のでけっこう興奮してなかった?」
荒木君は顔を上に・・・天井に向けた。
「別にそんなに慣れてる訳じゃないし」
「でも、セックスは何回もしてるんでしょ?」
「まあ・・・」
「最近はいつしたの?」
「10日くらい前かな」
僕はちょっと考えた。
「それって・・・この前したすぐ後?」
「あの次の日曜日」
「そっか・・・」
僕は少し黙った。なんだか胸がモヤモヤする。
「同級生のって、見たの初めてだし」
荒木君が口を開いた。
「それも少し意外」
「なに、やりまくりって思われてるの?」
「そう・・・じゃないの?」
「なにそれ・・・」
二人とも少し黙っていた。
「3人・・・かな」
「今までした相手?」
「うん」
「思ったより少ないね」
「なにそれ」
また少し黙る。
「どんな人と?」
「大人の人」
「タメくらいの奴とはないの?」
「ない」
そして、少し時間をおいて言った。
「お前が初めて」
「そうなんだ・・・」
長い沈黙。
「お前とやれて興奮した」
また沈黙。そして、次は僕が口を開く。
「あの人のこと、好きじゃないの?」
「好きだけど・・・たぶん、違う」
「違うって?」
荒木君が背中を向けた。
「分からない。でも、たぶん違う」
(どういうことなんだろう)
誰かと付き合ったことがない僕には、きっと分からないことなんじゃないかと思う。
「でも、付き合ってるってことは、好きなんじゃないの?」
「単純だな、お前は」
そして、言った。
「別にいいけど」
「出た、『別にいいけど』」
僕は笑った。
「何だよ」
「荒木君の口癖でしょ、『別にいいけど』」
僕は少し口まねをした。
「お前、やな奴だな」
「いいじゃん、友達じゃないんだし」
今度は僕が背中を向けた。荒木君がもそもそと体を動かして、こっちを向いたのを感じる。
「別にいいけど」
荒木君が言った。そして、僕に背中から抱き付いてきた。
「うん、別にいいけど」
僕も言った。
「ね、LINE教えてよ」
もう一度聞いてみた。
「教えない」
「友達じゃないから?」
「うん」
やっぱり荒木君は教えてくれない。
「でもさ、僕等セクフレなんでしょ?」
「まあ、ね」
「セクフレってセックスフレンドでしょ? だったら友達じゃん」
「違う。セクフレはセクフレ。友達は友達」
僕は溜め息を吐いた。
「はぁ・・・セクフレでもないじゃん」
そう。僕は荒木君とセックスはしたことがない、せいぜい・・・
「オナフレだし・・・」
「オナフレじゃ不満?」
荒木君にそう言われて少し考え込んだ。オナニーでも充分興奮したし気持ち良かった。だから、オナフレでも別に良い。でも、もし、ホントにセクフレ、セックスフレンドになれたとしたら・・・
「僕達、いつかセックスするのかな」
「さぁね」
「荒木君は、僕としたい?」
「まぁ・・・別に」
(あ、ごまかした)
そう思った。
「どっちなんだよ」
「別にどっちでも」
やっぱりこいつはこういう奴なんだ。
「はぁ」
僕は溜め息を吐く。
「僕は荒木君とセックスしたい。だって、友達じゃなくてセクフレなんだもん」
「別にいいけど」
またあの口癖。
「え、いいんだ」
「別に、ね」
拒否られてる訳じゃなさそうだ。少し、嬉しい。
「同じ学校の同じ学年のセクフレ、なんだか興奮するね」
「まあ、ね」
まんざらでもなさそうだ。このまま荒木君とこういう関係を続けられれば、いつか、あの男の人と荒木君がしていたようなこともできるかもしれない。
「じゃ、帰る」
荒木君はいつも唐突だ。でも、それは例えば僕が荒木君を怒らせたとかって訳じゃないのも最近分かってきた。要するに、荒木君はこういう奴だ。
立ち上がってボクブリを履いている。
「ねぇ」
僕が声を掛けると、履きかけたボクブリの手を止める。
「ねぇ、交換しない?」
僕は自分のボクブリを差し出した。
「変態かよ」
「変態じゃん、お互い」
荒木君が、僕が差し出していたボクブリを奪い取る。それに指を掛けて広げてみて、更にその内側をチェックした。
「シミ付いてるじゃん」
そう言いながら、履きかけていたボクブリを脱ぎ捨てて、僕のボクブリに足を通した。僕は床の荒木君のボクブリを拾い上げ、荒木君と同じように内側をチェックする。
「荒木君のにも付いてんじゃん」
そして、そのボクブリに足を通した。
「じゃ、明日また学校で」
そんな声が掛けられるくらいにはなったようだ。玄関から荒木君を見送る。
「明日も、それ履いて来てね」
荒木君が立ち止まる。
「お互いにね」
もちろん、僕はそのつもりだった。
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