あれから数日。孝典は、毎日ユウの家に入り浸るようになっていた。あの悪夢の不安を少しでも和らげるため。そして、もう一つの理由・・・
家に行くと、大抵、ユウはそこにいた。顔を合わせるのとほとんど同時に、孝典はユウに抱き付いた。最初こそ「不安だから」と言い訳した。が、そんなことは自分の性癖を知っているユウに対しては必要なかった。
初めての時は、ユウからキスしてきた。服を脱がされ、体を撫で回される。
「気持ちいいでしょ?」
聞かれるまでもなかった。孝典は体を撫で回されると気持ちがいい、ということをユウは知っている。もちろん、孝典が感じる部分はユウが感じる部分だ。そして、勃起したペニスを舐められる。孝典はユウの頭を抱える。その口に腰を押し付ける。腰を動かす。ユウの口から音がする。
自分自身と抱き合うことは、奇妙な感覚だ。何も言わなくても気持ちいいことをしてくれる。何も言わなくても次にされたいことをしてくれる。ユウの前ではペニスもアナルも全て曝け出す。3つの歳の違い以外、ほとんど変わるところはない。ユウの手によって、ペニスの皮が剥かれる。亀頭の先が露出する。そこを舐め回される。ペニスを持ち上げ、玉も舐められる。床に押し倒され、アナルを舐め回される。やがて、ユウが孝典の顔の上にしゃがみ込む。目の前のユウのアナルに舌を伸ばす。そこを舐める。そして玉を舐める。すると、ユウは体を倒し、ペニスを顔に押し付けてくる。孝典の口に入ってくる。孝典より少し大人のペニス。3年後の孝典のペニス。それを咥え、舌を這わせる。ユウも孝典のペニスを口に含む。まるで孝典に見本を見せるように、そこにねっとりと舌を這わせ、鈴口を刺激する。孝典も同じようにする。そして、やがて、ユウの口の中に射精する。
「これって、オナニーだよね」
孝典はユウであり、ユウは孝典だ。つまり、自分でしているということ。フェラだって、自分のモノを自分でしているだけだ。
「まあ、そう言えなくもないかな」
あの不安から逃れるため、と言い訳しながら、孝典は有り余る性欲を満たす悦びを知った。そして、彼等は徐々にその本能に溺れていくことになる。

「入れていい?」
ユウが孝典に尋ねる。ユウの尻の下でそのアナルを舐めていた孝典は、頷いた。すでに彼のアナルにはユウの指が2本入っている。ユウはその指を動かしながら、孝典にアナルを舐めさせていた。
「入れて」
孝典が呟く。二人は一旦離れる。そして、孝典はユウの前で四つん這いになった。
「これ、使う?」
ユウが縄を見せる。孝典は頷く。

二人の間でSMプレイをすることは、ごく自然の流れだった。ユウはSであり、孝典はMだ。それは二人とも自覚している。そして、最も信頼できる相手でもある。自然と孝典はユウの命令に従い、ユウの前で四つん這いになり、ユウの下でアナルを舐め、ユウの前に跪いてペニスを口に含む。その精液を口で受け、飲み込む。そういうプレイを繰り返していた。
「立って」
その命令に従い、孝典はユウの前に立つ。その体に縄が掛けられていく。その間にも、孝典のペニスは勃起し、トロトロと先走りが垂れ始める。ユウがそれを指で受け、その指を孝典に舐めさせる。
「やっぱり、僕は僕だな」
縄をぎゅっと引き、きつめに縛り上げる。すでに孝典の息は荒い。目が少しうつろになっている。
(もし、この瞬間に別の世界に飛んだらどうなるのかな)
縛り上げながらユウは思う。しかし、今はその気配はない。やがて、孝典の上半身がきれいに縛り上げられる。その体を仰向けに横たえさせ、ユウは足を持ち上げる。すでにアナルが口を開け、ユウを待っている。ユウはその体に覆い被さる。その穴に、ユウが入っていく。
「うっ」
最初は痛みがある、ということはユウは分かっている。そして、たぶんそうだろうと孝典も思っていた。でも、相手がユウだから、自分自身なんだから大丈夫だ、孝典はそう信じた。ゆっくりと、ユウが入ってくる。少し痛いと感じると、何も言わなくてもユウは一旦引く。指で解して再び入ってくる。それを数回繰り返すうちに、ユウが孝典の奥まで入ってきた。
「ああ」
最初に声を上げたのは孝典だった。初めての挿入、もちろん、少し苦痛も感じる。でも、その苦痛も含め、ユウが入ってきていることを気持ち良く感じていた。
「動くよ」
孝典は首を上下に振る。ユウが腰を動かす。初めはゆっくり、そして大きく。
アナルにユウを感じる。ユウがゆっくりとアナルの奧に来て、そして入口の方に戻るのを感じる。体の内側がユウとこすれ合う。アナルがユウに占領される。体の中にユウが入ってくる。他の誰でもない、自分同士が一つになる感触。
(満たされるって、こういう・・・)
少しの痛みがなかったら、体がとろけるんじゃないかと思った。少しの痛みがあるから、理性を保っていられるんじゃないかと思った。それくらい、一体感というか、満たされる感覚が強い。
ユウが動いている。奥まで入ってきている。この感触、今まで感じたことがない感触。孝典のペニスから先走りが溢れ出て止まらない。
「ホントに一つになってるみたいだ」
ユウが言う。そして奧を突き上げる。
「ああ、一つにとろけそう」
縛られてなかったら、孝典はユウに抱き付いていただろう。その代わりにユウが上半身を倒し、孝典にキスをする。孝典はその口に貪り付く。舌をユウの口に入れる。アナルでユウが動くように、孝典はユウの口の中で舌を動かす。ユウが孝典の体に手を回し、抱き上げる。ユウに抱きかかえられ、体を揺さぶられる。今まで以上にアナルでユウを感じる。
その奧の方で何かがはじける。
「ああっ」
孝典のペニスからどろっと精液があふれ出た。それをユウが感じ取る。
「初めてでトコロテンしたんだ」
体を揺さぶり続けながら言った。孝典は答えない。目を閉じ、アナルに感覚を集中していた。体がとろける。意識がとろける。その気持ち良さが心と体を支配する。
「ああ・・・」
そして、無意識の中で口走った。
「玉、潰して下さい」
それを聞き、ユウは孝典の体を揺さぶるのを止める。その体を床に下ろし、アナルからペニスを引き抜いた。
「ここまでだ」
床で荒い息をしている孝典が目を開く。
「もっと・・・」
「だめだ」
孝典は足を上げ、それを振り下ろし、その反動で体を起こした。そのままユウににじり寄り、勃起したままのペニスを口に咥えた。
「だめだって」
ユウはその頭を押さえ、引き離す。
「なぜ?」
孝典はユウを見上げた。
「君、今自分が言ったこと、覚えてる?」
孝典はそれを覚えていなかった。無意識に口走ったそのことを。
「少し知っておいた方がいいと思ったからしたけど・・・逆効果だったかもしれない」
「なんのこと?」
ユウはしゃがみ込み、孝典を縛っていた縄を解き始める。
「SMだよ。こういうことには近づかない方がいいって教えるつもりだったけど」
シュルシュルと縄を解く音が続く。
「でも、君は酔っ払ったみたいにあれにハマってた」
「ユウが相手だからだよ」
「違うと思う。君はそういうのが好きなんだよ」
縄が全て解かれた。孝典の体には、その跡がくっきりと残っている。
「だって、僕、Mだもん」
ユウが孝典の両肩に手を置いた。
「それがどういうことか分かる?」
孝典はユウを見つめる。
「それって、SMプレイにハマるってことだよ。つまり・・・」
「つまり?」
「つまり、そういうことされたがるってこと。それは、殺される可能性が高いってことだよ」
孝典の頭にあの不安が一瞬戻ってきた。
「なんで、SMが殺されるってことになるの?」
「君はSMプレイのつもりでそういうことに巻き込まれる。少なくとも、この近くの世界の君はそうだった」
そして、ユウが話し始めた。

「この近くの世界に来て、君に出会って、色々と見てきた。そして、SMが引き金みたいだってことが分かった。だから僕はずっと、他の君とはセックス、特にSMはしないようにしてきた。でも、結局君は興味本位でそういうことに巻き込まれ、殺された」
ユウは孝典にティッシュの箱を差し出す。孝典はそこから数枚取り出して、アナルを拭いた。ユウも自分のお腹の辺りに付いていた、孝典の精液を拭き取る。
「だから、この世界の君には、SMを知ってもらった方がいいと思ってしたけど・・・」
そして、孝典を見た。
「君、さっき、玉潰して下さいって言ったの、覚えてる?」
「えっ」
孝典は少し考えた。が、そんなことを言ったという自覚はなかった。
「そんなこと、言ってない・・・と思う」
「言ったんだよ、さっきね」
孝典は、自分の玉を確かめるように股間に手を当てた。
「そんなに影響が出ているとは思わなかった。君は自分が思ってるより、僕が思っていたより危険なのかもしれない」
「でも、それは他の人とSMしなければいいってことでしょ? ユウ以外の人とは」
「でも、僕としていたら、いつかきっと他の人ともするようになる」
「それは分からないんじゃ・・・」
「君のことはよく分かってる。君も分かってるんじゃ?」
二人とも黙り込んだ。
「君はまだ中2だ。そんな君とセックスしたのはやっぱり間違いだった」
「でも、他の世界では、しなくても僕は殺されたんでしょ?」
「うん・・・してないから、してみたいって興味が抑えられずに巻き込まれていったと思ってた」
「だったら、してもヤバい、しなくてもヤバいってことじゃ?」
「そりゃそうだけど・・・」
孝典はユウににじり寄る。手をユウの太ももに当てる。
「ユウがもういいってくらいしてくれたら、そういうふうに巻き込まれることはないんじゃない?」
(それもそうかもしれない)
そうも思う。
「でも、僕だってそんなに経験してる訳じゃないから・・・たぶん、君を、僕を満足させられるまでは出来ないと思う」
ユウが、孝典の手を掴み、太ももから離した。
「結局・・・僕はどうしたらいいの?」
孝典が少しふてくされる。
「興味本位でそういうことをしないこと。怪しそうな人とか、初めて会う人とは特にね」
「ユウだって、初めての時に脱がしてキスしたでしょ」
そう言われると、ユウには反論できない。
「とにかく、最後までしようよ」
ユウのペニスを握る。柔らかかったペニスがすぐに固くなる。そんなペニスをしばらく扱いた後、孝典はユウの前で四つん這いになった。尻をユウに向け、両手で開く。
「ね、早く」
ユウははぁっと溜め息を吐き、孝典の尻に近づく。
「入れるよ」
「うん」
そのアナルにまた挿入する。
「ああ・・・」
ユウが腰を振る。くちゅくちゅと音がする。
「うぅん・・・やっぱり、気持ちいい」
孝典が喘ぎながら言う。
「すごい先走り出てる」
ユウが孝典のペニスを握り、亀頭を親指で撫で回す。
「うくっ」
孝典の体がビクッと動く。
ユウは、孝典の後ろから両手を股間に回す。片手で孝典のペニスを握り、もう片方の手のひらで、その亀頭をなで回す。
「ああ、だめ、ヤバい」
孝典は腰を引く。すると、尻がユウの腰に押し付けられる。まるで自らユウのペニスを奥までくわえ込もうとしているかのようだ。
「奥まで入ってるよ」
後ろからユウが声をかける。
「あああああ」
孝典が体を震わせた。亀頭をなで回していたユウの手に熱い精液が飛び散った。
「ああっ」
それは2度、3度と続く。
「うわっ、締まる」
ユウも声を上げる。射精の度に孝典のアナルがユウのペニスを締め付ける。
「ああ、僕も、いくっ」
ユウが腰を孝典の尻に押し付けた。
「はあっ」
今度は孝典が声を出す。
「いってるの、分かるよっ」
孝典のアナルがぎゅっと締まる。
「中でビクビク動いてる」
孝典が射精しながら言った。
「ああ・・・」
ユウが背中からぎゅっと孝典を抱き締めた。

「気持ち良かった・・・」
孝典はまるで放心しているかのようだった。
「でも、SMじゃないんだよね」
「うん」
ユウは、孝典のその言葉に好奇心を感じる。
「やっぱり、してみたくなった?」
孝典は答えなかった。だが、ユウにはその気持ちがよく分かった。
「気を付けること。知らない人の誘いには乗らないこと。約束してくれる?」
孝典は頷いた。

      


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