(ヒロ)(カズ)


今年のクリスマスは、僕は家で家族と一緒にクリスマスディナーを食べることになっていた。
そして、そのパーティーには僕の友達、ヒロちゃんを招待していた。

「こんにちは」
玄関のドアを開けるとヒロちゃんが立っていた。普段、僕はヒロちゃんの学生服姿しか見たことがない。そんなヒロちゃんが、なんだか少し大人っぽい格好をしている。
「いらっしゃい」
僕は少し面食らいながらヒロちゃんを迎え入れた。
「いらっしゃい」
リビングにいたお母さんとお父さんが声を掛けた。
「さすがは堯宰家の息子さん、素敵なお洋服ね」
ヒロちゃんの格好を見て、お母さんが言った。
「お母さん」
家のことは言わないでって言っておいたのに、いきなりこれだ。
「いいよ。家の者が失礼のないようにって選んでくれました」
僕が見ても分かる、なんだかたぶん、ちゃんとした格好。僕等のような普通の家のパーティじゃなくても、そういうちゃんとした場所に合いそうな服だ。
「かっこいい」
僕は小さく呟いた。
「なんだよ」
ヒロちゃんが少し照れた。そして、お父さんに向き直って言った。
「初めまして。堯宰尚洋と言います。今日はお招き頂き、ありがとうございます」
「こちらこそ。いつも和成がお世話になってます」
お父さんが言った。
「お世話にはなってないって」
僕が小さな声で呟く。お父さんはそれを聞き流して、ヒロちゃんに言った。
「でも、我が家のパーティはそんな堅苦しいものじゃないんだから、上着は脱いで、気楽に参加してくれればいいよ」
お父さんがそう言いながら、ヒロちゃんに手を伸ばす。
「ありがとうございます」
ヒロちゃんは上着を脱いで、お父さんに渡した。その上着を僕に渡す。
「お前の部屋のハンガーに掛けておきなさい。皺にならないようにね」
僕がそれを受け取って僕の部屋に行こうとしたら、ヒロちゃんが僕の腕を取った。
「一緒に行ってもいい? 和くんの部屋、見てみたい」
「いいよ」
「ちょっと待って」
お母さんが呼び止めた。
「えっと・・・堯宰君、着替えとか持って来てる?」
「下着とかなら」
お母さんが僕に言った。
「堯宰君、その格好じゃ少し窮屈でしょうから、和成の服、貸してあげたら?」
「いえ、大丈夫です」
ヒロちゃんがいう。
「いいよ」
僕はそう言って、ヒロちゃんの手を引いた。
「で、では、後ほど」

「堅苦しいって」
僕の部屋で、クローゼットのハンガーにヒロちゃんの上着を引っ掛けながら言った。
「そうかな・・・」
ヒロちゃんは自分の着ている服に目を落とす。
「ヒロちゃんには普通なんだろうけど、ウチじゃなんていうか・・・そんなに気を遣わなくてもいいって」
「そうなのか・・・ごめん」
ヒロちゃんが頭を下げた。
「謝るようなことじゃないよ。むしろウチの親の方が気を遣っちゃいそうだからさ、学校で友達同士でいる感じでいいよ」
「うん、分かった」
僕はクローゼットから、適当に服を取り出した。ロンTとパーカー、下はハーパン。家の中は暖房が効いてるから、それで十分だ。
「ほら、着替えて」
ヒロちゃんが僕の前で着ていた服を脱ぎ始めた。躊躇なくパンツ1枚になって、まずロンTを着て、ハーパンを履いて、そしてパーカーに袖を通す。
「おんなじような格好だね」
クローゼットの中の鏡に自分の姿を写し、僕と見比べている。確かに意識した訳じゃないけど、僕と同じ格好で、色違いなだけだ。
「家ではいつもこんな格好なの?」
「そうだよ」
そして、脱いだ服をクローゼットに片付ける。
「なんだか、もう楽しいんだけど」
ヒロちゃんが笑顔で言った。僕は何も答えなかった。でも、僕の笑顔で気持ちは伝わったと思う。

「あなたたち、まるで兄弟ね」
僕等の姿を見るなりお母さんが言った。
「どっちが兄でどっちが弟?」
「もちろん、堯宰君がお兄さんよね」
「そうだな」
僕の質問にお母さんが答え、お父さんが同意する。そんな僕等のやり取りをヒロちゃんが笑顔で見ている。
「僕が弟かよ」
「和くんが弟か」
まぁ、確かに見た目はヒロちゃんの方が落ち着いてるように見えるというか、大人っぽい。
「下のお名前は?」
お母さんが尋ねた。
「尚洋です。堯宰尚洋です」
「じゃ、尚さんね」
「すっごい違和感」
思わず僕が言った。
「和成はいつも、なんてお呼びしてるの?」
「ヒロちゃん」
「じゃ、ヒロ君ね」
「はい」
なんだろう、この和む感じ。学校でもいつも一緒にいるし話もしてるのに、こんなに・・・なんていうか、馴染む感じは初めてだ。
「じゃあ、あなた達兄弟で、これをテーブルに運んで頂戴」
「はい」
ヒロちゃんも楽しそうだ。
(普段、親の手伝いとかそういうことしてるのかな?)
でも、その動きは初めてという感じはしない。
そして、準備が整った。僕の家で、ヒロちゃんと一緒にパーティの始まりだ。


まあ、パーティ、クリスマスディナーと言っても普通に食事するだけだ。部屋の隅には大きくはないけどクリスマスツリーがある。その下にはいくつかプレゼントが置いてある。本当は今日の朝にプレゼントを交換するんだけど、今年はヒロちゃんが泊まりにくるから、特別にプレゼント交換はディナーの後でってことになっている。テーブルの真ん中にはケーキがある。そのケーキに2本だけ、ろうそくが立っていた。
「何で2本?」
お父さんがマッチでそのろうそくに火を点ける。部屋の照明が消える。僕等はろうそくの暖かい光で顔を照らされている。
「ヒロ君と和成の二人だから2本」
お母さんが言い、そしてお父さんが続ける。
「さあ、君達二人でろうそくを吹き消して」
僕等は軽く目配せし、椅子から少し腰を浮かせて同時にろうそくを吹き消した。
「メリークリスマース」
お母さん、僕、お父さんで一斉に言った。
「メ、メリークリスマス」
ヒロちゃんが少し遅れて言った。僕はヒロちゃんを見た。ヒロちゃんも僕を見る。目が合う。自然に笑顔になる。
「なんだか、嬉しい」
ヒロちゃんが少し小さな声で言った。そして、立ち上がった。
「今日はありがとうございます」
ヒロちゃんが両親に頭を下げる。
「そういうのはいいの。今日はクリスマスなんだから」
すでにお母さんとお父さんはシャンパンを飲んでいる。僕等はジュースだ。ケーキを切り分けると、それを片付ける。空いたところにローストビーフが運ばれてくる。
「チキンじゃないんだ」
「何でもいいのよ、美味しければ」
既にヒロちゃんには取り分けられている。ヒロちゃんがそれを口に入れる。僕がそれを見ているのに気が付くと、少し恥ずかしそうにする。
「どう、美味しい?」
すると、お母さんはもちろん、お父さんもヒロちゃんに注目した。
「美味しいです」
ヒロちゃんが笑顔で答えた。
「そりゃ、そう言うしかないよね、この状況だったら」
「そんなことないよ。ホントに美味しい」
ヒロちゃんが2つ目に手を出す。
「それに、楽しい」
いろいろと料理が運ばれてくる。チキンじゃなくて唐揚げとか、ポテトサラダで作った小さなクリスマスツリーとか。
確かにどれも美味しかった。ゆっくりといろいろ食べながら、そしていろんな話をしながら時間が過ぎていく。やがて、テレビで映画を見始める。これは毎年同じだったりする。お父さんが好きな映画で、ゴーストが出て来るやつ。僕はもう毎年見せられてるからほとんど内容を覚えてる。でも、ヒロちゃんは面白そうに見ている。僕はそんなヒロちゃんの横に座って一緒に映画を見る。それはそれで楽しい時間だ。
やがて、映画が終わるとお父さんが僕等をツリーの前に呼んだ。
「ホントは今日の朝なんだけど、今年は特別だ」
そして、ヒロちゃんに箱を手渡した。
「これからも、和成と仲良くしてやってください」
僕も同じような大きさの箱を渡される。
「開けていいよね?」
お父さんが頷く。僕は箱の包み紙を引き裂いた。
「なんか見たことある」
その様子を見ていたヒロちゃんも、僕と同じように包み紙を引き裂いた。ヒロちゃんには青い色の、そして僕には緑色の手袋が入っていた。
「おそろいだ」
ヒロちゃんが言った。なんだか少し恥ずかしい。でも、嬉しい。すごく嬉しい。
「ありがとう」
そして、僕は小さめの箱をお父さんに渡す。その中身はネクタイだ。お母さんにもプレゼントは準備してある。こうしてプレゼント交換をして、その日のパーティは終わりになった。

「あなたたち、お風呂入っちゃいなさい」
お母さんが言った。僕の心臓が一瞬変に波打った気がする。僕はヒロちゃんの顔を見た。ヒロちゃんが頷く。それがなんだかすごくゆっくりと見える。
「着替えは持って来てるから」
二人で僕の部屋に行く。クローゼットを開く。ヒロちゃんが持って来ていた鞄から下着を取り出した。黒いボクサーブリーフだ。僕も自分の替えの下着を取り出す。同じような、黒いボクブリ。
「寝るときの服って持って来てる?」
「あ・・・」
ヒロちゃんは忘れていたようだ。
「僕ので良ければ貸すけど?」
「うん。和くんの、貸して」
クローゼットの中の引き出しから、僕がパジャマ代わりにしている長袖のTシャツとジャージの上下を出す。ヒロちゃんにはもう一組の、洗い替え用のジャージを渡した。
「じゃ・・・行こうか」
それを持って、バスルームに向かう。
バスタオルを取り出したりして僕がぐずぐずしている間に、ヒロちゃんはパンツ一枚の裸になっていた。さっき、ヒロちゃんが来てすぐのときにパンツ姿は見ていた。でも、今はなんだか違うものを見ているような気がする。
僕も脱いでいく。ボクブリ1枚になる。ちらっとヒロちゃんを見た。ヒロちゃんは僕を見ていた。僕を待っているようだ。そして、二人揃ってパンツを下ろした。

先にバスルームに入ったのはもちろん僕だ。僕の後ろからヒロちゃんが入ってくる。ちらっと後ろを見る。ヒロちゃんは隠していない。ちらっとしか見てないからよく見えなかったけど。
僕はなんとなく左手でちんちんあたりを隠しながら、シャワーでざっと体を流す。シャワーをヒロちゃんに手渡すと、ヒロちゃんも同じようにする。そのシャワーの音を聞きながら、お湯の温度を確かめて湯船に入ろうとした。すると、僕の後ろからヒロちゃんも一緒に湯船に入ろうとした。
「ちょ、ちょっと」
後ろを振り向いてヒロちゃんに言った。そして、なんとなく下の方を見る。ヒロちゃんのちんちんが目に入った。
「え、だめなの?」
片足を湯船に入れていたヒロちゃんが、足を上げる。ちんちんが丸見えだ。
「だめじゃないけど・・・狭いし」
「そうかなぁ・・・二人入れるんじゃない?」
何となく手でちんちんを隠したまま、僕は湯船から出た。
「じゃ、ヒロちゃん先に入って」
洗い場で身体を洗おうとした。
「いいじゃん。一緒に入ろうよ」
(誰かと一緒にお風呂入りたいのかな)
そう思ってヒロちゃんの方を見た。ヒロちゃんは湯船の縁に僕の方を向いて座っている。
(丸見えだ)
急にどきどきし始めた。僕は立ち上がってヒロちゃんの横の湯船の縁を跨いだ。
「分かった」
僕の背中でヒロちゃんが立ち上がったのを感じた。二人前後に並んで湯船の中に座る。
「やっぱ、狭いよ」
僕の家の湯船は普通の大きさだ。二人で入るにはやっぱりきつい。入れないことはないけど、でも、それは・・・
「入れるよ。ほら」
僕の背中にヒロちゃんが身体をくっつける。
(おおっ)
身体が密着する。その感触。
(あれっ)
なんだかドキドキして体がじんじんする。
(あれっ)
股間に手を添えた。
(な、なに、これ)
すると、股間を覆っている僕の手に、ヒロちゃんが手を重ねてきた。
(ええ?)
「はぁ・・・気持ちいい」
僕の背中でヒロちゃんの体重を感じる。背中にヒロちゃんの鼓動が伝わってくる。
「先に体洗うね」
慌てて僕は立ち上がった。

体を洗っている最中、ずっとヒロちゃんの視線を感じていた。ちらっと振り返るとヒロちゃんと目が合う。
「なに見てるんだよ」
ヒロちゃんは笑うだけだ。僕は体を少しひねってヒロちゃんに背中を向けた。すると、ヒロちゃんが湯船から出て来る音がした。
僕の背中に何かが触れる。
「背中洗うよ」
僕が使っていたスポンジを僕から奪い取った。それで背中を流す。
「こんなふうに人とお風呂入るの初めて」
ヒロちゃんのスポンジが僕の脇を洗う。
「くすぐったいって」
もがくように体をひねってヒロちゃんのスポンジから逃れる。顔を上げる。目の前にヒロちゃんのちんちんがあった。
「こ、今度は僕がっ」
立ち上がってヒロちゃんの後ろに回る。ヒロちゃんが座る。スポンジを受け取って背中を洗い始めた。
(なんで?)
自分の気持ちと体が分からない。
(見られてないよね)
さっき、僕のちんちんが少し固くなってしまっていた。ヒロちゃんの背中を洗いながら、心を落ち着かせる。
背中を洗い終えて、シャワーで泡を流していると、急にヒロちゃんが僕の方を向いた。
「洗ってよ、前も」
(ええ?)
ヒロちゃんのちんちんも固くなってきているのか、少し上を向いていた。僕は慌ててヒロちゃんに背中を向けて湯船に飛び込んだ。
「自分で洗え」
湯船のお湯でばしゃばしゃと顔を洗う。
(なんなんだ、僕は、なんなんだ)
ヒロちゃんは頭を洗っている。少し落ち着いてきた。と思ったら、ヒロちゃんが頭を洗いながら立ち上がって僕の方を向いた。
「和くん頭洗った?」
急に背中を流されたから、それどころじゃなかった。
「まだ」
「ほら、洗いなよ」
僕の場所を空けるために、ヒロちゃんは立ち上がったのか。
「じゃあ」
僕もお湯から出て、頭を洗い始めた。すると、ヒロちゃんも僕の頭を洗い始める。
「何すんだよ」
顔を上げた。ヒロちゃんの手は今、両方とも僕の頭をわしゃわしゃしている。だから、目の前ではヒロちゃんのちんちんがぷらぷらと揺れていた。
(!!!)
次の瞬間、シャンプーが目に入った。
「痛ててて」
慌てて両手で目を擦る。
「大丈夫?」
ヒロちゃんが僕の顔を覗き込んだ。そして、言った。
「和くんのちんちん丸見え」
僕は目をぎゅっと瞑ってちんちんの上に両手を置いた。と、頭からシャワーが浴びせられる。ヒロちゃんが片手でシャワーを握り、もう片方の手でシャンプーを洗い流してくれていた。
「ほら、目のとこ洗いなよ」
シャワーの下に両手を差し出し、顔を洗う。ようやく目が開けられるようになる。僕の横でヒロちゃんのちんちんが揺れている。
(ま、いいや)
僕もちんちんを隠すのはやめた。相手はヒロちゃんなんだから。
ヒロちゃんは自分の頭のシャンプーはもう洗い流してたみたいだけど、それでも今度は僕が同じようにヒロちゃんの頭にシャワーを当てる。僕の横にヒロちゃんがしゃがんで頭を洗い流している。もちろんちんちんは丸見えだ。
「また一緒に入る?」
僕が言うと、ヒロちゃんは頷いた。そして、今度は僕がヒロちゃんの背中に抱き付くような感じで二人湯船に浸かった。
「はぁ」
ヒロちゃんが溜め息みたいな声を漏らした。
「誰かと一緒っていいよね」
「うん」
僕はヒロちゃんの胸の前に腕を回す。ヒロちゃんを背中から抱き締めているみたいだ。
「温泉とかって行ったことあるの?」
ヒロちゃんに尋ねた。温泉は日本っぽいから、きっとヒロちゃんの家でも行ってるんじゃないかと思う。
「ずっと前に、一度行ったかな・・・たぶん」
「覚えてないの?」
「あんまり」
何となく旅館とか合いそうに思ったのに。
「家族で旅行とか行かないの?」
「行ったことない」
「へぇ」
「和くんは?」
「あるよ。温泉とか、テーマパーク泊まりで行ったりとか」
ヒロちゃんはそれ以上何も言わなかった。僕も何も言わない。でも、やっぱりヒロちゃんが少しかわいそうに感じる。
「そろそろ上がろっか」
「うん」
僕が声を掛けるとヒロちゃんが立ち上がる。
(きれいなお尻なんだ)
ふと、そう思った。

二人で体を拭き合う。もうちんちんを見られても平気だったし、拭くときに手が当たっても気にならなかった。お風呂に入る前よりも落ち着いてヒロちゃんのちんちんを見られた。いや、ちんちんだけじゃなくて、体も。
ヒロちゃんの体は、痩せてもなく、太ってもなく、ちょうどいい感じで、その上に少し筋肉が付いていて、何となく腹筋もうっすらと割れている感じだ。なんていうか、無駄がないし無理がない感じの体型。
一方、僕は・・・ヒロちゃんと比べると少しだけお腹が出ている気がする。でも、たぶん全然普通だ。他の友達と比べて太ってる訳じゃないし、なんなら痩せてる方かもしれない。それって普通ってことでしょ? たぶん。
「家で鍛えたりしてるの?」
僕はヒロちゃんの少し割れた腹筋を触りながら聞いた。
「何にも」
でも、その後に付け加えた。
「まあ、鍛えてるっていうか、動かしてはいるのかな。いろいろあるし」
いろいろってのはヒロちゃんの家の事情の部分だろう。それ以上は聞かない。

僕は自分のパジャマ代わりのジャージを着る。ヒロちゃんは僕が貸した僕のジャージを着ている。そして、二人揃ってリビングに戻った。


この物語はフィクションです。
登場する人物・家・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。


      


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