「長かったわね」
お風呂上がりに、お母さんが冷たい飲物を準備してくれた。
「やっぱり兄弟みたいね」
僕のパジャマ代わりのジャージを着たヒロちゃんを見て言った。二人で飲物を飲み干す。火照った体にひんやりとした感触が拡がっていくようだ。
「さっき部屋に布団運んどいたから、あんまり夜更かししないのよ」
「はい」
ヒロちゃんが答えた。その様子が何となく兄っぽかった。
「分かってるよ」
僕も答える。
「じゃ、部屋行こ、兄ちゃん」
そう言ってみた。冗談のつもりだったけど・・・なんだか少し、それも有りかな、みたいなことを感じた。
「ヒロちゃんって妹がいたんだっけ?」
僕の部屋にはベッドの横に布団が一組敷いてあった。その上に、ベッドに背中をもたれかけて二人並んで座っていた。
「うん。和くんは一人っ子だよね」
それくらいは前に話したことがある。
「ヒロちゃんと兄弟みたいって言われて、初めはないないって思ったけど・・・」
その先は少し恥ずかしくて言えなかった。
「和くんが弟かぁ・・・悪くないかな」
「やっぱやだ」
僕はそう言って、本棚に置いてあったゲーム機を手に取り、コントローラをヒロちゃんに手渡した。
「やったこと、ある?」
ヒロちゃんは首を左右に振る。
「全然?」
今度は縦に振った。
「全く?」
「だから、そう言ってるだろ」
「してみる?」
ヒロちゃんは頷いた。
それから1時間くらい、僕等は一緒にゲームをした。意外なことに、ヒロちゃんは結構ゲームが上手かった。僕でもたまに負けるくらいに。
「ホントに初めてなの?」
ゲームをしながらヒロちゃんに尋ねる。
「うん」
ヒロちゃんも画面を見たまま言う。
「ヒロちゃんとするの、楽しい」
ヒロちゃんも頷いた。
「でも、ちょっと疲れた」
ヒロちゃんがコントローラを脇に置いた。そりゃそうかもしれない、初めてなんだから。
「ね、漫画見てもいい?」
僕が頷くと、ヒロちゃんが本棚から僕の漫画を手に取った。
「ふうん・・・こういうの、読むんだ」
それは大人気連載中の漫画だ。僕等の年代なら、たぶん誰でも知ってる。
「それ、知ってる?」
「聞いたことはあるけど詳しくは知らない」
そして、1巻から読み始めた。
ヒロちゃんが真剣な顔をして漫画を読んでいる。その顔を僕は見ていた。いや、別の漫画を読んでるフリをしていたけど、ホントはヒロちゃんの顔を見ていたんだ。今まで何度も見た顔。でも、こうやってずっと見るのは初めてだ。眉毛と目の間にほくろがあるのに初めて気が付いた。それに、耳たぶが小さいような気がする。髪の毛が、目の上の一部分だけちょっと茶色かったり、鼻は低いけどきれいな形をしている。
「何見てるの?」
ヒロちゃんに言われて我に返った。いつの間にか、ヒロちゃんの顔に見とれていた。
「ヒロちゃんの顔。こんなにじっくり見たの、初めてだ」
正直に答えた。別に嘘を吐く必要なんてないんだから。すると、ヒロちゃんが漫画を横に置いた。
「じゃ、僕も和くんの顔見る」
そのままじっと僕の顔を見た。僕は恥ずかしくて顔を背ける。
「こっち見て」
「恥ずかしいって」
「和くんはさっきまで見てたでしょ。今度は僕の番だ」
僕は顔をヒロちゃんに向ける。そのまましばらく、僕とヒロちゃんは見つめ合う。
「やっぱ恥ずかしい」
また顔を背けた。すると、急にヒロちゃんが僕を布団の上に押し倒した。そのまま肩を押さえ込まれて、顔を近づけられる。
「僕を見て」
ヒロちゃんに言われるまま、ヒロちゃんの顔を見る。
「和くん、明るい茶色の目してるんだね」
自分の目の色なんて気にしたこともない。でも、そう言われて僕もヒロちゃんの目を見る。
「あれっ」
光の加減か、ヒロちゃんの目が赤っぽく見えた。
「ヒロちゃんの目、赤い」
「そうだよ。僕の家はみんな目が赤っぽい茶色なんだ」
僕の肩を押さえていた手をどけた。
「鏡ある?」
机の上に置いてある小さな鏡を手渡した。ヒロちゃんはそれで自分の目を見た。
「やっぱり」
「なにが?」
すると、ヒロちゃんが僕に鏡を差し出した。
「目の色、見てみて」
言われるままに鏡で自分の目を見てみた。
「あれっ」
さっきのヒロちゃんの目の色と似ている気がした。僕の方が茶色っぽいけど、少し赤みがかっている。
「似てるね、色」
もう一度、ヒロちゃんの目を見てみた。やっぱり、似ている。
「さすが、兄弟だね」
ヒロちゃんが言った。
それからいろいろと僕等は話をした。こないだの好きな女子の話の続きとか、ヒロちゃんの許嫁のこととか、家のこととか、友達のこととか。
ヒロちゃんには、僕と共通の友達以外、友達といえる奴がいないってことを知った。それはやっぱりあの家のことがあって、あんまり友達を作る機会がない、というか、話を聞く限り、何となくヒロちゃんの家が、ヒロちゃんに友達が出来ることをあまり良く思っていないように感じた。それをそのまま正直に伝えてみる。
「確かにね。家の格とかいうの、気にする人達だから」
「ヒロちゃん・・・息苦しくない?」
「僕はそれが普通だから。むしろ、和くんとかとあんまり遊べないの、ごめんね」
隣に座るヒロちゃんの肩に手を回す。
「これからもたまには泊まりに来てよ」
「うん、出来ればね」
「そろそろ・・・寝る?」
「うん」
そして、僕は僕のベッドをヒロちゃんに譲り、僕は床の布団に横になる。
「今日は楽しかった」
二人、横になったけど、電気は点けたままもう少し話をした。
でも、僕はいつの間にか、少しうとうとしていた。
「ん・・・」
声がした。うとうとしかけていた僕は身体を起こす。ベッドの上でヒロちゃんがもぞもぞと動いていた。
「どうしたの?」
すると、ヒロちゃんが寝返りを打つようにして身体を僕に向けた。パジャマ代わりのジャージの、股間のところに手を当てていた。
「勃ってる」
僕を見て、僕に言った。
「人のベッドでオナるなよ」
冗談だと思った。
「和くん、このベッドでしてるんでしょ?」
まあ、その通りだ。何気なく僕は頷いた。
「和くんがしてるところで、僕もしてる」
ヒロちゃんの手が動き始めた。
「何してんだよ」
すると、ヒロちゃんがジャージのズボンを下着ごとずり下げた。
「なにしてんだよ」
そこにはヒロちゃんのちんちんがあった。もちろん、それは勃起している。勃起したちんちんを握って扱いている。
「和くんのベッド・・・和くんの匂いがする」
息が荒くなっている。
「やめろって。人のベッドで」
「じゃあ、一緒にしよ」
ヒロちゃんが身体を起こしてベッドから下りた。僕の前に立って、僕の目の前で扱いた。
目の前にヒロちゃんの勃起したちんちんがある。ヒロちゃんは僕の目の前でそれを扱いている。ヒロちゃんは二人だけになると少しエロい話とかもするけど、こんなことになるなんて思いもしなかった。
「和くんの、見せて」
手を止めて、座ったままの僕の前にヒロちゃんがしゃがみ込んだ。
「一緒にしよ」
そして、僕の頬に手を添えた。
「和くんのこと、好きなんだ」
そのまま顔を寄せてきた。何故か身体が動かない。声も出ない。僕は呆然とヒロちゃんの顔が近づいて来るのを見ていた。そして、唇に触れる感触。僕の、初めてのキス。
ヒロちゃんは顔を離すと、そのまま右手を僕の首の後ろに回して僕を抱き締めた。左手が動いているのが伝わってくる。ずっと扱き続けてるんだ。
「好きだったんだ、和くんが」
ヒロちゃんの手が僕の股間を弄っている。布団に押し倒される。ズボンを脱がされる。でも、僕は何もできない。いや、何も抵抗しない。されるがままだ。ドキドキしていた。本当に起きていることだとは思えなかった。ヒロちゃんが僕のことを好きって言って、僕のちんちんを触ろうとしてるなんて・・・
ヒロちゃんが僕を握った。人に握られるなんて初めてだ。
「和くん、太いね」
お風呂で見た時は、そんなに僕とヒロちゃんの大きさに違いはなさそうだった。でもあの時は勃ってなかった。今は勃ってる。それを直接握られてる。そして、扱かれている。
「ああっ」
声が出た。ヒロちゃんが僕を見る。
「気持ち、いい?」
僕は頷く。
「僕も」
そしてまた僕に覆い被さりキスをする。ヒロちゃんが身体の向きを変える。布団に横になっている僕の頭の両脇で膝を突く。そして僕のちんちんを握って扱く。
「僕のも、触って」
目の前のヒロちゃんのちんちんを握ってみる。熱い。そして固い。
「ああっ」
今度はヒロちゃんが声を出した。
「和くんに握られるの、気持ちいい」
僕はヒロちゃんを強く握り、扱いてみた。
「ああ、和くんに扱かれてる・・・」
ヒロちゃんがちんちんを僕の顔に押し付けてきた。
「舐めて」
「ええっマジで?」
「うん」
そして、僕のちんちんが何か暖かいモノに包まれた。ちょっと頭を上げて見てみる。ヒロちゃんが僕のちんちんを口で扱いていた。
「そんなとこ・・・汚いよ」
「さっきお風呂入ったから」
「でも・・・」
でも、僕も目の前のヒロちゃんのちんちんを舐めてみたいと思った。舌を伸ばして先っちょを舐めてみる。
「ああっ」
ヒロちゃんの身体が震える。
「あ、ゴメン」
「ううん、気持ちいい。もっと舐めて」
僕は覚悟を決めて、ヒロちゃんのちんちんを口に入れてみた。
「ああ、暖かい」
今、僕等はお互いのちんちんを舐め合っている。すごく特別なことだ。他の誰にも言えない僕等二人だけの特別なことだ。自然に手がヒロちゃんの身体を抱き締めていた。
「ああ、和くん」
ヒロちゃんも僕の腰の辺りに手を回していた。僕のお尻を撫でる。僕もヒロちゃんのお尻を撫でる。すべすべで気持ちいい。
「ああ、すごい」
ヒロちゃんが言った。
「なにが?」
「和くんが」
「ヒロちゃんだってすごいよ」
僕等は身体を横向きにする。二人お互いのちんちんを舐め合う。お尻を撫で合う。身体を抱きしめ合う。そして・・・
「あっ」
僕のちんちんの奧からそれが沸き起こった。いつものオナニーとは全然違う気持ち良さ。ヒロちゃんの口の中で僕はイってしまう。人の口の中に出してしまうという後ろめたさのようなもの。ヒロちゃんの口の中に出したいという欲望。ヒロちゃんの口の中なら出したいという気持ち。それらがごちゃ混ぜになって僕の身体を突き動かした。
「ああっ」
僕は腰をヒロちゃんの顔に押し付けた。ちんちんをヒロちゃんの口の奥に押し込んだ。そして、そこで思いっきり射精した。
「ああっ」
腰が勝手に動いた。足がビクッとした。また腰が動く。2回、3回と続いた。
「うぐっ」
ヒロちゃんが呻いた。その瞬間、ヒロちゃんも僕の口の奥にちんちんを押し付けた。そして、それが僕の口の中に溢れた。ヒロちゃんの腰もビクビク動いてる。太ももが痙攣するみたいにヒクヒクしてる。それに合わせて僕の口の中に、ヒロちゃんが溢れた。
お互い身体を離して顔を見つめ合った。まだ口の中にはヒロちゃんの精液がある。ヒロちゃんの喉が動いた。そして、笑顔になって口を開いた。その中から、さっき僕が出した精液は消えていた。僕もヒロちゃんの精液を飲み込んだ。少し喉に絡みつく感じ。あの匂い。そして、あの匂いからきっとこんな味なんじゃないかって想像した通りの味がした。
「飲んだね」
「飲んだ」
二人で言い合う。
「出しちゃった」
「僕も」
どちらからともなく抱き締める。そして、キスをする。
「あの味がする」
「そうだね」
顔を離して見つめ合う。
「僕は和くんが好き。和くんは?」
「僕は・・・」
僕は少しだけ考えた。
「僕も、たぶんヒロちゃんが好き」
「良かった」
ヒロちゃんが笑顔になった。そして、もう一度僕等は抱きしめ合い、キスをした。
結局、僕等は僕のベッドで一緒に眠った。抱きしめ合い、手を握り合い、時にはちんちんを握り、キスをしながら朝まで一緒に寝た。
いや、朝まで二人とも一睡もしなかった。
「お世話になりました」
お昼ご飯を一緒に食べたあと、ヒロちゃんが帰っていく。その背中を昨日までとは全く違う気持ちで僕は見送った。
僕はヒロちゃんの気持ちを知った。
そして、僕は僕の気持ちを知ったんだ。
「また泊まりに来てね」
僕はヒロちゃんの背中に向かって言った。ヒロちゃんは振り向かず、何も言わずに遠ざかっていった。
<洋と和 完・・・そして「和と洋」に続く>
この物語はフィクションです。
登場する人物・家・団体・名称等は架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
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