また周りが明るくなっていく。
と同時に、僕は気が付いた。僕は牧野君に抱き付いたままだ。牧野君の体の感触も、暖かさもそのままそこにある。
(ええっ ひょっとして、ヤバいんじゃ?)
明るくなった。目の前に、牧野君の体もある。
つまり、僕は全裸で、同じく全裸の牧野君のお尻の穴に入れたまま次の場所に移動してしまったんだ、ということをようやく理解した。
「お前、どっから湧いて出た」
そんな僕等の頭の上から声が降ってきた。
驚きと、そしてその声に悪意を感じた。
「え?」
僕は顔を上げた。最初に目に飛び込んできたのは、ナイフだった。僕はゆっくりと辺りを見回した。何か、古い倉庫のような場所。そこに男が3人いた。奧にも誰かがもう一人。
(なんで、こんなところに)
牧野君も同じように周りを見回している。
「で、お前等、なにしてんだ?」
もう一度男を見上げる。ナイフを見る。
ようやく、パニックが僕に襲いかかってきた。
「ひ、ひぃぃ」
僕は男から後退る。お尻が何かに擦れる。手を床に突く。コンクリートの床。目の前にナイフを握った男が立っていて、その足下に牧野君が動けないでいる。別の男が牧野君に近づいて来た。何かが僕の腕に触れる。
「ひい」
僕は頭を伏せ、体を丸める。
その何かが、僕の腕にまとわりつき、引っ張られた。
気が付くと、僕も牧野君も縛られていた。全裸のまま。
「で、お前等、何者だ?」
ナイフを持っていた男が言った。
「ぼ、僕は・・・」
(サンタクロースの代理人だなんて言っても、絶対、こいつは信じない)
そう確信していた。
「そ、その・・・気、気が付いたら、ここにいて」
嘘ではない。実際、周りが暗くなって、そして明るくなって、ここにいたんだから。
「そいつら、急に現れましたよ」
僕の後ろから声がした。
「俺、見てました。なんにもない所に急になんか影みたいなのが出てきて、それがこいつらになって」
「ほお」
ナイフの男だ。
「つまり、瞬間移動のようなものか?」
「さあ。そこまでは俺には分からないですよ」
ナイフの男が僕に近づき、しゃがんだ。
「お前、超能力者か?」
僕は首を左右に振る。
「そっかぁ、残念だな。瞬間移動出来るなら、俺達が逃げるのにも役立ちそうだから生かしておいてやってもいいと思ったんだがな」
男が立ち上がる。
「で、お前等。裸でなにしてたんだ? ケツに入ってたよなぁ」
今度は牧野君に近づいた。縛られた牧野君を床に突き倒す。その上に馬乗りになった。
「男同士でセックスでもしてたのか?」
手でお尻を開く。さっきしていたときのローションで少しヌメヌメしている。
「おい」
僕に呼び掛けた。
「お前、こいつとセックスしてたんだよな?」
嘘をつける状況ではない。僕は素直に首を縦に振る。
「そうか。ガキ同士でやってたのか。時代も変わったな」
僕は別の男に抱え上げられて、牧野君の横に運ばれた。
「ほら、やって見せろよ」
僕を牧野君に押し付ける。
「む、無理です」
「なんでだ?」
「その・・・」
僕のちんこが完全に萎んでいた。普段より縮こまってる感じだ。男が僕を見る。
「萎えてるのか」
男が僕の股間に足を入れてきた。靴で僕のちんこの辺りをグリグリと踏みつける。でも、僕は勃たない。
「ふん、なら、そのままじっとしてろ」
男はそう言うと、僕の背中を床に押し付け、その僕に覆い被さってきた。
「うぐっ」
僕のお尻の穴に何かが当たる。
「いいぃ」
それが僕に入ろうとしていた。僕のお尻の穴を押し開こうとする。
「おい、今はまだ止めとけ」
ナイフを持った男が言った。僕に覆い被さっていた男が立ち上がる。
「お前等がここに現れた理由は、こいつか?」
ナイフの男が奥に歩いて行き、そこにいた誰かの顔を上げさせた。そいつは、どうやら僕や
牧野君と同じように縛られているみたいだ。服は着ているけど。
「ほら、歩け」
そいつを引きずるようにして連れてくる。
「知り合いか?」
お互い、顔を見た。
(あっ)
心の中で声を上げた。同じ学校の、確か・・・
「鳴瀬」
牧野君が名前を呼んだ。そうだ、たしか、そんな名前だ。
「牧野・・・なにやってんだよ」
鳴瀬君がつぶやいた。
「そうか、知り合いか」
僕等3人は床に座らせられる。そのうちの二人は全裸のままだ。
「なぜここに現れたのかは知らないが、せいぜい利用させてもらう」
ナイフの男が言った。
僕等三人は、壁際に並んで、手足を縛られ、その縛られた手を壁の金具みたいな物に繋がれていた。男達は合計3人。僕等も3人。男は時々タブレットを見たり、スマホで誰かと連絡をしているようだった。
「なにしてんだよ」
鳴瀬君が小声で僕等に尋ねた。
「なにって・・・」
「こいつ、サンタの代理なんだって」
牧野君が言う。
「なにふざけてんだよ」
(まあ、そう思うよな、普通)
「あいつら、なんなの?」
「誘拐、だよ」
牧野君の問いに、鳴瀬君が答えた。
「え・・・誘拐って・・・」
ようやく、僕にも少し事情が飲み込めてきた。つまり、僕が次にプレゼントを渡す筈だった相手、この鳴瀬君は、あの男達に誘拐されてたってことだ。そして、牧野君にプレゼントを渡し終えた僕は、その鳴瀬君が誘拐されて監禁されてる場所、つまりここに移動してしまったんだ。牧野君と一緒に。
「やばいでしょ、それ」
今度の牧野君の問いには、鳴瀬君は答えない。
「誘拐されて、身代金とか要求されるってこと?」
僕の問いには頷いた。
「もう、家には連絡したって言ってた」
「いくら?」
「1億って」
三人とも黙り込んだ。
(1億かぁ・・・)
無理だろ、そんなお金。何となく覚めた頭で僕は思った。
「でも、きっと、お父さんがなんとか・・・」
男が一人近づいて来たので、僕等は口を噤んだ。
「おしゃべりする暇があるんだったら、自分の命の心配してろ」
そう牧野君に告げたあと、僕に向かって言った。
「お前の体の心配もな。まぁ、こっちは心配するだけ無駄だけど」
そして、僕は立たされて、男達のいるところに連れて行かれた。
「お前、あいつと同じ学校か?」
頷いた。
「学年は?」
「同じです」
「そうか」
男達の視線が僕の体を舐めまわすのを感じた。
「こいつは犯ってもいいんだよね?」
さっき僕に覆い被さっていた男が言った。
「ああ。こいつとあいつはどう使ってもいい。なんなら、見せしめにしてもな」
僕と、牧野君を指差した。
「見せしめかぁ」
舌なめずりする。僕の背中に悪寒が走った。
「まあ、とりあえず、そいつ好きにしろ」
「了解」
ちょっとおどけて敬礼する。僕に向き直る。
「抵抗したけりゃしてもいいぞ。どうせお前はここで俺達に犯されるんだからな」
僕の後ろに回って僕を抱き締める。お尻の少し上あたりに、何か堅い物が押し付けられた。
「楽しもうな」
その男が僕の耳元で言った。体中に鳥肌が立った。
僕等の目の前で、三田が男に犯されている。
僕等は壁際で拘束されていた。鳴瀬は彼等を見ないように頭を垂れ、目を瞑っている。
本来なら、誘拐された鳴瀬がそういう目に遭っていたかもしれない。でも、誘拐犯の男達は、三田を犯して人質の鳴瀬には手を出さないでいる。
(そりゃそうか)
鳴瀬は言わば一億円だから。そんな鳴瀬を傷付けたら一億円がフイになるかもしれない。
一方で、僕や三田はあいつらに取ってみれば、突然現れたモノであり、どうなろうと誰も知ったこっちゃない相手だ。
鳴瀬に取ってみれば、自分の身代わりみたいなもんだろう。だから、三田の悲鳴や呻き声が聞こえるたびに、体に力が入っている。それは、ひょっとしたら、本人よりも隣にいる僕の方が感じているかもしれない。
その気持ちはよく分かる。
もちろん、よく分かってる。
でも・・・
「うぐあぁ」
男が三田の腰を掴んで、そのお尻に何度も何度も打ち付けている。さっきからもう、どれくらいそうされているだろうか。たぶん、1時間は経っていると思う。あとまだ二人もいる。彼等三人は順番に三田を犯すと宣言していた。そして、僕等の目の前で三田は大人のちんこでお尻の穴を掘られ続けている。
辛いだろうな、と思う。
でも・・・・・
僕と鳴瀬は、両手を頭の上で縛られて、その縛ったところを壁のフックのような物に固定され、逃げることも座ることも出来ずに、ただ目の前で犯されている三田を見ていた。
いや、見ているのは僕だけだ。
鳴瀬は見ていない。
でも、僕は見ている。
男に犯されて、泣き叫ぶ三田を見ている。
そこから目が離せなかった。
男が時々僕等をちらちらと見ているのにも気付いてる。彼等が何を見ているのかも知っている。僕だ。いや、僕のちんこだ。友達が犯されてるのを見て、勃起している僕のちんこをあいつらは見ているんだ。
初めは僕自身気付いていなかった。
でも、男達が時々僕の方を見て、にやっと笑っているのに気が付いた。やがて、僕自身も気が付いた。犯されている三田を見て、僕は勃起させているんだって。
同じクラスの三田が目の前で犯されている。男にお尻の穴に突っ込まれている。男のちんこを咥えさせられている。動画でなら見たことがある。いや、動画でしか見たことがないことが、目の前で、友達がされている。
それに僕は興奮していた。
それだけじゃない。僕はずっと思っていた。
もっと、近くで見てみたい。
そして、早く、僕の番にならないかなって。
三田の方からパンパンと音が聞こえる。ぐちゅぐちゅという音が聞こえる。鳴瀬は顔を背けている。鳴瀬のちんこがどうなっているかは、服を着ているから分からない。
「助けて・・・」
そんな声が聞こえる。
「もう・・・やめて」
三田が弱々しく言っている。そんな三田を容赦なく男達が犯している。三田は、たしか経験はなかった筈。さっき、僕のお尻に入れたのが初体験だった筈だ。それが、いきなり三人にマワされるなんて。
(うらやましい)
そう思っている自分に気が付く。否定はしなかった。少し嫉妬すら感じた。悪意が芽生える。
(僕のあんなところを見たバチが当たったんだ)
友達として最低だと思う。でも、本当にそう思った。本気でうらやましく思っていた。
一人目がやっと三田の後ろから離れた。勃起した男のちんこ。ローションや精液、三田の唾液でヌメヌメと光っている。次の男が三田を跪かせる。口に咥えさせる。三田の頭を掴んで腰を打ち付ける。三田が呻く。嘔吐く。僕等の方を見る。その目が助けを求めている。
(ああ・・・)
体がぞわぞわした。僕もあんな風にされるんだろうか。誰かに助けて欲しいと思っても誰も助けてくれない、そんな風にされるんだろうか。
「はぁ・・・はぁ・・・」
知らず知らずの間に息が荒くなっている。そんな僕を鳴瀬が見た。僕が勃起していることに気が付いたようだ。
「牧野・・・君?」
僕を見た。丁度その時、三田が苦しそうに呻いた。鳴瀬が顔を逸らし、目を瞑る。
「はぁ・・・はぁ・・・」
僕は最低だ。犯されている友達を見て興奮している。
自分もああなりたい、と思っている・・・
少し意識がもうろうとする。
さっきの男に犯されたお尻が痛い。
喉が苦しい。息が出来ない。
視界の隅に、牧野君が見えた。あの、誘拐されていた奴も。二人とも僕を見ている。犯されている僕を見ている。助けて欲しい。でも、無理だってことも分かってる。それでも、この地獄みたいな状況を、誰か、なんとかしてほしい。
(なにかあった時は、このルドルフが君をサポートするからのう)
何度も何度もサンタクロースの言葉を思い出していた。
(助けて、ルドルフ・・・助けてよ!)
僕は心の中で叫び続けていた。
「今、三田三太が大変な目にあってるのは知ってるよね」
サンタクロースの家のリビングで、大きなテーブルを9人の少年が囲んでいた。
「だから、俺等が緊急招集されたんだろ?」
「え? 三田・・・三太って誰だっけ?」
「あの、おっさんがサンタクロースの代理を頼んだ奴だよ」
「ああ、あいつね」
「あいつがどうしたって?」
「今、誘拐犯に犯されてるんだって」
「今は、こういう状況だ」
ルドルフが指をひと振りすると、まるで立体映像のようにテーブルの上に彼等の姿が映し出された。今、まさに二人目の男が、三田三太のアナルにペニスを突き入れようとしていた。
「ふうん。で?」
「彼がこうなったのは、あのおっさんが代理を頼んだからだってことは分かると思う」
「まあね」
「ぎっくり腰だからね」
「だから、助けに行く必要があるかどうかをみんなと協議したい」
「なんで?」
「いつも僕等がされてることとおんなじでしょ」
「俺等と一緒にしちゃ、三田三太がかわいそうなんじゃ?」
「なんで? だったら僕等もかわいそうじゃん」
「俺等はほら、あのおっさんに飼われてんだし。でも、三田三太はそうじゃないんだし」
「まぁ、要するに、彼にとってはされてるのが普通じゃないってこと?」
「そう。俺等みたく犯されるのが日常って訳じゃないんだし」
「だから、助けるの?」
「それをみんなで決めたいと思う」
皆が口々に言う中で、ルドルフが話を進めようとする。
「なんで?」
「あいつに代理を頼んだのって、あのおっさんでしょ?」
「そうそう」
「だったら、おっさんが助けに行くべきなんじゃね?」
「賛成」
「俺等にその義理はないよね」
「そうそう」
「でも、サンタクロースはぎっくり腰で動けないし」
「そんなの、俺等の責任じゃないし」
「そうそう。ジジイのくせに毎日変態プレイしてるのが悪い」
「俺等のせいじゃないよね」
「やっぱ、助けに行くならおっさんが行くべきであって」
「そう。俺等にはその義理はない」
「そうそう」
「じゃあ、助けに行く必要がないって意見の人は?」
全員が手を上げた。
「分かった。じゃ、俺等はなにもしない、ということで」
「おっさんに伝えるくらいはしてあげてもいいんじゃない?」
「そんな必要ないよ。おっさん、知ってる筈だし」
「むしろ、楽しんでるんじゃないの?」
「有り得る」
「変態だもんね」
「実はこの男、あのおっさんが化身してたりして」
「有り得る」
何人かが笑う。
「ってことで、この件は放置でいい?」
「賛成」
皆が声を合わせた。
「じゃ、以上、解散」
サンタランドの少年達は、それぞれの仕事に戻って行った。
「た、助けて、誰か」
お尻の違和感。喉の違和感。朦朧とする意識。どれだけ頼んでも、誰も助けてくれなかった。
僕をサポートしてくれる筈のルドルフも助けてくれなかった。
(このまま、死ぬんだろうか)
そう思った。そして、すっかり忘れていたことを思い出した。
(そうだ、袋)
犯されながら、目だけでサンタクロースからもらった袋を探す。見える範囲には見当たらない。
(あれには、今、本当に必要な物が入ってる筈)
犯されながら、朦朧とする頭で考える。
(ひょっとしたら一億円とか・・・あるいは、この場から逃げ出すための武器とか・・・)
「ほら、しゃぶれよ」
男が僕のお尻からちんこを引き抜いた。体の向きを変えられ、それを口に突っ込まれた。
「うげっ」
喉の奥まで突っ込まれる。吐きそうになる。でも、それが許される筈もない。僕は男達に玩具のように扱われる。道具のように扱われる。それでも僕は、目の隅であの白い袋を探していた。この場から逃げ出せる、唯一の可能性を秘めた、あの袋を。 |