約束
−3−


あのホテルでの出来事以来、僕は掲示板は見なくなった。掲示板を見なくても、亮さんからのメールは毎日来ていた。僕はメールで命令されていた。
『学校でオナニーしろ』とか、『好きなやつがいるなら、そいつの机に精液塗りつけろ』とか・・・
その好きなやつの名前まで言わさせられた。涼君が好きだなんて、人に言うことなんかないって思ってた。そんなことまで言わさせられて、僕はなにもかも亮さんたちに知られていった。初体験の話も、今までの経験も、好きなプレイとか嫌いなプレイも全部・・・


「1日早いけど・・・誕生日、おめでとう」
金曜日の塾の帰り道、僕は涼君にプレゼントを渡した。
「サンキュー」
涼君がそう言って笑う。涼君の笑顔はすごくかわいい。
「明日、家に来るでしょ? そのときくれればいいのに」
明日、涼君の家でパーティーするのは分かっていた。もちろん、僕も行くつもりだった・・・先週までは。
「ごめん、明日、ちょっと用事あるんだ」
そうしたら、涼君が急に悲しい顔をする。
「なんだよ・・・約束したじゃん」
「ごめん」
理由なんか言える訳がない。あのホテルに行って、男の人達におもちゃにされるなんて・・・
絶対言えなかった。
「どうしてもだめなんだ、明日は」
涼君は少し不機嫌そうな顔をして、背中を向けて黙り込んでしまった。
「明後日の日曜日、一緒に遊ぼ」
僕はあわててそう言った。でも、涼君は黙ったままだった。
「ねぇ・・・ほんと、ごめん」
そうしたら、急に涼君が振り向いた。振り向いて・・・がばっと僕を抱きしめた。
「慎ちゃん・・・好きだから」
そして、僕を突き放すようにして、走り出した。
「涼君・・・」
僕は動くことができなかった。なにが起きたのか理解するのに1分くらいかかったと思う。理解した瞬間、僕は真っ赤になっていた。ホテルに行くのをやめて、涼君と一緒にいたいと思った。
そのとき、携帯が鳴った。亮さんからのメールだった。
『明日、楽しみだな。来ないとどうなるか分かってるな』
まるで僕の心の中が分かってるみたいなタイミングだった。
『はい』
それ以外に返信できる言葉が見つからなかった。

夜、涼君にメールを送った。
『ホントは明日行きたいんだけど・・・ごめんね』
すぐに返信が来た。
『さっきはごめん』
どきっとした。抱きしめられたこと、好きだって言われたこと・・・
でも、その後の男からのメールと明日のことが気になって、そのことをちゃんと考えてなかった。
『あれって・・・本気?』
そう打つ指先が少し震えていた。送信ボタンを押すのに少しためらった。
返信は、さっきみたいにすぐには来なかった。
『ごめん・・・でも、本気。嫌いになったよね、僕なんか』
考えて、考えて打ったのがこの返信なんだろな・・・僕もなんて返信すればいいのかなかなか思いつかなかった。
『本気なんだったら・・・うれしい』
送信してから、もうちょっとましな返信できなかったのかな、とか思った。でも、これ以上思いつかない。
『ずっと好きだった』
今すぐに涼君に会いたかった。今すぐ会って、今度は僕が涼君を抱きしめたかった。
『僕も涼君が好き。日曜日、遊びに行くから』
今度はすぐに返信が来た。
『嫌われたと思ったからすっごくうれしい。日曜日はおじいちゃんの家に行くから、次の日曜日に遊ぼう』
僕もすぐに返信した。
『僕も嫌われたと思った。次の日曜日、約束ね』
すごくうれしくて、少しほっとした。
でも、明日は・・・




「よう」
家を出て、堤防沿いの道を歩いていたら、声をかけられた。僕のすぐ横に、黒い車が止まっていた。久夫さんだった。
「迎えに来たぜ」
僕は言われるままに車に乗り込んだ。助手席で、僕は膝の上で手を握りしめ、そしてずっとその手を見つめていた。

ホテルのあの部屋には、亮さんと久夫さんの他にもう一人、太った人がいた。太った人は、一目見て怖い、と思った。
「こいつか、ケツの穴でいけるガキってのは」
太った男が言った。久夫さんが黙ったまま、部屋のテレビのスイッチを入れた。そして、つないであったビデオカメラのスイッチも入れる。青い画面のあと、あのときの僕が映し出された。

「に、西村慎也は・・・変態・・です」
ビデオの中の僕が言う。お尻の穴に指が出入りしている。ぐちょぐちょという音も聞こえてくる。
「気持ちいいんだろ? え?」
「き、気持ちいいです!」
ビデオの中で僕は射精していた。それは、僕の顔面に飛び散った。

「西村君か・・・変態なんだな」
太った男の人が僕に言った。僕はなにも答えられなかった。
「返事は?」
久夫さんが言った。
「あ、は、はい」
返事と言われても、どう言えばいいのか分からなかった。
「変態なんだなってお聞きなんだ。どうなんだ?」
「あ・・・はい・・・」
僕は変態ですって言えばいいんだろう、とは思った。だけど、言えなかった。
「どうなんだよ?」
久夫さんが僕の胸ぐらをつかんだ。
「まあまあ・・・まだガキなんだから」
太った男がそう言うと、久夫さんは手を離した。
「体が答えてくれるさ」
そう言って、太った男が僕に近づいた。
「うぐっ」
僕は髪の毛を捕まれて、顔を上げさせられた。そして、口をふさがれた。じとっとした、たばこ臭い息が僕の口の中に入ってきた。ぼてっとした舌が僕の口の中をかき回す。吐き気がした。
太った男はそのまま僕の髪の毛を引っ張って、僕をベッドの上に連れていった。亮さんが、今日もビデオカメラを構えていた。
僕はベッドの上で、久夫さんに押さえつけられた。太った男が僕のベルトをゆるめて抜き取った。ズボンとトランクスをまとめて引きずりおろされた。
「手入れがなってないな」
太った男が、僕の股間を見て言った。こないだ剃られたところにまばらに毛が生え始めていた。久夫さんが鞄から道具を取り出す。
「足、広げろ」
太った男に命令された。僕はその命令に逆らうことができなかった。久夫さんが僕の生え始めた毛を剃ろうとしたら、太った男が止めた。
「俺がやる。どけ」
久夫さんは太った男に剃刀を渡す。そして、太った男が僕の股間にしゃがみ込んだ。
「ほら、つるつるに剃ってやる」
そして、剃刀の刃が当てられる。じょりっという音がする。
「これからは、毎日自分で手入れしろよ」
「はい」
太った男の声には、それ以外の答えは許さない、というような怖さがあった。
「ほら、ケツ毛も剃ってやる。向こう向け」
僕は四つん這いになって、太った男にお尻を向けた。太った男は片手で僕のお尻を広げながら、剃刀の歯を滑らせていく。
「まだこっちはほとんど生えてないな。つるつるのきれいな肌してるな」
尻を広げ、なでながら太った男が言った。そして、
「あっ」
指が穴にねじ込まれた。
「変態なら、指の1本くらい、なんにもなしでいけるよな」
太った男がぐいぐいと根本まで押し込む。そして、僕の穴はそれを受け入れる。
「なんだこれは?」
太った男が僕の物を指ではじいた。
「うっ」
勃起していた。
「剃られてる時は立ってなかったのにな。ケツに入れられるとすぐに立つんだな」
穴の中で指が動く。それを感じて、それに合わせるように僕の物がびくびくと動く。
「さすが、変態だな」
太った男がおもしろそうに言った。
「じゃ、楽しませてもらおうか」
太った男が立ち上がった。全裸になったその体中に入れ墨が施されていた。男の物にもそれは入っていた。そして、それは太く、長かった。
「なんだ、そんなにこれが欲しいのか?」
僕の顔を見て、太った男は言った。
そして、僕の穴にローションを塗りつけた。

指2本から始まった。それは簡単に僕の穴に入った。そして3本。徐々に僕の穴が広げられていく。ローションを足して4本。これは少し痛かった。
「ううっ」
僕がうめくと、太った男が言った。
「がまんしろ」
そして、男が四つん這いの僕の背中に覆い被さる。
(犯られる!)
そう思った瞬間に、太った男の巨大な物が僕の中に入ってきた。
「ひっ」
逃げようとする僕の背中を、太った男が平手でぴしゃりと叩いた。
「逃げるな」
そして、両手で僕の腰をつかんで、僕の中に物を押し込んだ。
「うぅ・・・」
あっけなく、僕の穴は太った男のそれを受け入れた。思ったほどの痛みはなかった。
「すんなり入ったか、さすが変態だな」
そして、激しく腰を使い始めた。太さよりも、長さが辛い、というのに初めて気が付いた。根本まで突き刺されたとき、お尻の奥が痛かった。内臓につきさされるようだった。しかし、男は僕のうめき声なんか全く気にせずに、抜ける直前まで腰を引き、腰を打ち付けるように根本まで押し込んだ。
「ぐ、ぐあっ」
うめき声が出る。でも、僕の物は奥までつかれる度にびくびくと揺れていた。先走りがベッドのシーツにシミを作っている。
「ほら、ケツだけでいくまで突きまくってやるからな」
太った男が僕の背中で言った。亮さんは無言でずっとビデオを撮っている。久夫さんもカメラを構えている。
「んっ」
体が熱くなってくる。
「ふあっ」
いつの間にか、僕は太った男の動きに併せて、自分でも体を動かしていた。穴の中の男の物を感じていた。その物が僕の穴で動くのを感じていた。穴が気持ちよかった。体が気持ちよかった。頭が真っ白になった。
「んあぁっ」
びゅっと音がした。僕の物から精液が勢いよく飛び散った。
「いったか、この変態」
そして、僕の穴の中で、太った男がいくのを感じた。
「使えそうなガキだな」
太った男が物を引き抜きながら、満足そうに言った。

その後、久夫さんにも犯された。でも、太った男の時のようには感じなかった。久夫さんは僕の中に出すと、なにも言わずに亮さんと交代した。亮さんの物もそれなりに大きかったけど、やっぱり太った男のときみたいには感じなかった。
最後にもう一度、太った男に使われた。それは僕の希望でもあった。男は笑いながら僕に入ってきた。そして、僕はまた男の物を感じながらいった。

(今日は涼君の誕生日だったっけ・・・)
三人の物を口できれいにしたあと、シャワーを浴びながら、ぼんやりと思った。
(いまごろパーティーしてるのかな)
そして、僕は、ここでこんなことしているんだ・・・
でも、満足だった。太った男には、また犯されたいと思った。

すぐに次の呼び出しのメールが来た。次の日曜日・・・涼君と約束した日だった。
涼君にはなにも言わなかった。ただ、日曜日の朝に、『ごめん』ってメールだけ送った。

      


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