置時計が鳴っていた。目覚ましがセットされていたようだった。時間を見てみる。8時半だった。
お尻にはディルドが入ったままだった。そのまま眠ってしまったようだ。とりあえず、ディルドを抜く。ローションが乾いて少し痛かった。洗面所に持っていって、ディルドを洗う。歯を磨いて顔を洗う。そして、トイレ。
トイレを済ませてベッドのところに向かう。さっきは気が付かなかったけど、机の上に着替えが置かれていた。
ベッドの上に座る。枕元にローションの小瓶が転がっている。それを手に取る。少し眺めて・・・僕はそのふたを開けた。手のひらに少しローションを垂らす。立ち上がって洗面所に行って、あのディルドにローションを塗りつけた。アナルにも塗って、そしてそれを挿入した。すんなりと入った。
洗面所から出て、置いてあった服に着替える。今日の服はどこかの学校の体操服って感じで、メーカーのロゴ入りの白いTシャツと同じロゴの入った青のハーパン、そしてジャージの上着だった。それと・・・真っ白のブリーフ。それを着て、洗面所の鏡で見てみる。タキシードよりはよっぽどましだった。普通の中学生で、これから体育の授業って感じだった。
かちっという、小さな音がした。たぶん・・・
ドアの鍵が解除されていた。僕はしばらくの間、ドアの前で聞き耳を立ててみた。何の音も聞こえない。本当に音がしていないのか、それともこのドアに遮られて聞こえないだけなのか・・・数分後、ドアを開けて廊下に出た。ちょうど向かいの部屋からイモ系が同じように体操着で出てきたところだった。僕等は無言で食堂に向かった。
ジャニ系もどきは先に来て、席に座っていた。僕はテーブルの席に着く。若頭達の座る向かい側、ジャニ系もどきの左隣。僕の左にはイモ系が座る。この席順は、ここで初めて彼らに会ったときから、なんとなく決まっていた。今は3人だから、僕が真ん中、ちょうど若頭の向かい側になる。お尻には異物感があった。
「眠れたか?」
若頭が僕に尋ねた。
「はい、まぁ」
何となく答えを濁した。お尻の異物感を少しでもへらそうと、座り直す。
「君たちはどうだ?」
ジャニ系もどきとイモ系にも聞く。二人とも、あまり眠れなかったようだ。
「だろうな。お前だけはやったからよく眠れたって訳だ」
なにを言っているのか分からなかった。テーブルの端のところに、天井からするすると白いスクリーンが降りてきた。そして、そこに映像が映し出される。ベッドの上の方、たぶん天井から撮影したみたいな映像。ベッドの上では、僕が、あのディルドを使っている。
「こ、これって・・・」
思わず声が出た。勃起させた物をしごきながら、ディルドを自分で出し入れしている僕が、半分目を閉じて、そして射精する僕が、自分の精液を全部自分できれいにしている僕が、こうしてみんなの前にさらけ出された。
「お前は、今日の2回戦が不利になると思わなかったのか? それともケツの穴を広げておいた方が有利だと思ったか?」
若頭が笑う。僕は真っ赤になってうつむいた。
「こっちに来い」
若頭が僕に命じた。僕は立ち上がって、テーブルを回って若がしらの横に立つ。
「しかもこいつは・・・」
そして、僕のハーパンを降ろそうとする。
「あっ」
僕は反射的に手でハーパンを押さえる。若頭が僕の顔を見る。怖い顔ではなかった。むしろ、穏やかな・・・でも、僕にはその目が命令しているのが分かった。僕はハーパンを押さえていた手を体の横に力無く垂らす。若頭は、僕のハーパンとブリーフを一緒に降ろした。そのとき、朝食が運ばれてきた。
朝食は、トーストとゆで卵、そしてサラダと果物だった。各自の席の前にそれらが盛られたプレートが置かれていく。僕の座っていた席にも。
若頭の前にも同じ物が置かれた。その横で、僕は若頭に下半身を裸にされていた。お尻にディルドが入っているのを、みんなに見られていた。
若頭はトーストを手にとり、それをかじりながら、もう一方の手で僕のアナルからディルドを引き抜く。
「うっ」
乱暴に引き抜いたディルドを、テーブルの真っ白なクロスの上に、まるで調味料入れかなにかのように置いた。
「きつくはないようだな」
片手はトーストを持ちながら、もう一方の手が僕のお尻をなで回し、そして指を入れてくる。3本くらい入れられてるんだろうけど、痛くはなかった。
「おい」
ドアの前に立っていた用心棒って感じの男に声をかけた。男は若頭の横に近づいた。
「こいつを犯れ」
男はうなずく。そして、服を脱いだ。柔道体型って感じの体に、若頭よりも大きい物が付いていた。みんなが朝食を取っている目の前で、僕はこの男に犯された。
「ほら、すっかり広がってるぞ」
男の物をすんなりと受け入れる僕を見ながら若頭が言う。亮さんや久夫さんも食べながら僕を見ている。ジャニ系もどきとイモ系は手を止めてうつむいていた。でも、時々ちらっと僕の方を見ているのが分かった。
「お前ら、ちゃんと食べながら見るんだ」
若頭が二人に言う。仕方なく、という感じで二人が顔を上げて僕を見た。そして、僕は感じた。二人の目に、優越感のような、勝ち誇ったような光を。
二人は僕をきっと馬鹿にしているんだと思う。撮影されていることに気が付かずに、今日の2回戦のことも考えずに部屋でオナニーして、それをみんなの前に晒されて、そして今、こうしてみんなの前で犯されて・・・
「う・・・だ、だめっ」
激しくアナルを突かれるうちに、僕の体から力が抜けていき、そしてじわじわとむずむずするような感じが広がっていく。それは下半身から体中に流れていく。熱い何かが体の中心に現れる。それが広がって・・・
「い、いくっ」
男が若頭の方を見る。
「いかせてやれ」
若頭がそう言うと、男は動きを早める。僕の体に男の体が打ち付けられる。男のでかい物を中心にして、熱い波が体に広がる。
「くあ!!」
そして、目の前が白くなる。勃起していた僕の物から、精液が飛び散った。射精する瞬間を、若頭、亮さん、久夫さん、そしてジャニ系もどきやイモ系にも見られた。
イモ系の目が僕を軽蔑しているのを感じた。
今日の勝負はもう、僕の勝ち目はない。辛い1日の始まりだった。
僕は、冷えた朝食を食べた。というよりも食べさせられた。他の人は食後のコーヒーを飲んでいる。僕の目の前でもコーヒーが湯気を立てていた。でも、何を食べても、何を飲んでも味を感じることは出来なかった。この後の第2回戦が気になっていた。そして、それに勝ち目がないことも。
ようやく僕が食べ終わると、それを待っていた若頭が話し始めた。
「昨日、あれがどうなったか興味あるか?」
あれって・・・あの刑事の孫のことだと気付くのに時間はかからなかった。
「どうだ?」
また若頭が僕に聞いた。確かに興味はあった。死んだのか、それとも助かったのか・・・今日の僕もきっとそうなるんだから。
「あの・・・どう・・・なったんですか?」
「興味があるってことだな」
若頭が笑いながら言った。
「お前らは当然興味あるよな」
今度は亮さんや久夫さんに訊ねる。
「もちろんですよ」
二人は笑いながら答える。
「お前らは?」
ジャニ系もどきとイモ系にも聞いた。でも、二人は答えない。
「まあいい。俺とこの二人、そしてそこの変態の4人が興味あるんだから、多数決で決定だな」
そして、またスクリーンに映像が映し出された。あの刑事の孫が跳び箱に固定されて、そのアナルにドリルが突き刺さっている。僕等が見ていたのより少し後の映像だった。
「お前ら、これから目を離すな、絶対に」
僕等3人に、若頭が言った。
「まずは、これをちゃんと最後まで見ることから今日の勝負は始まりだ」
映像の中で、あの少年はずっと叫んでいた。声は枯れていた。体を固定しているベルトを引きちぎりそうなくらい暴れていたが、そのベルトがちぎれたり、ゆるんだりすることはなかった。少しずつ、ドリルが彼の中に入っていっているはずだった。
「少し早送りしないとおもしろくないな」
若頭がリモコンを操作する。映像が早回しになる。ドリルが少しずつアナルに入っていくのが分かる。あの少年は動きまくっている。やがて、ドリルが見えなくなる、完全に体の中に入っている。やがて、少年の動きがさらに激しくなる。早送りの状態でそれは数分続いた。やがて、少年の動きが少なくなる。皮膚が少し赤黒くなっている。アナルからは血が流れ出ていた。
「もう腸は突き破ってるかな」
亮さんがぼそっと言った。僕はちらっと二人の様子を見た。ジャニ系もどきはスクリーンから目をそらさなかった。イモ系は・・・真っ青だった。若頭の命令だったから、スクリーンを見ようとはしているけど、目が泳いでいる。
さらに数分が過ぎた。映像の中の少年にはたぶん数十分の時間なんだろう。その体は小刻みに震えているように見えた。実際はもっとゆっくりなのかも知れない。でも、早送りの映像の中ではまるで痙攣しているように見える。それ以外は、なにも変わったところは見えなかった。若頭がリモコンを操作する。早送りから通常の再生へと切り替わる。低いうなり音が聞こえた。そして、小さな声。うなり音はドリルの音、小さな声はあの少年が発しているのはすぐに分かった。
「たすけて・・・たすけて・・・」
小さな声は、繰り返し繰り返しそうつぶやいていた。まるで呪文のように、そう唱え続ければなにかが起きるのを信じているかのように、その声はとぎれることなく続いた。
そして、突然、何の前触れもなく少年が血を吐いた。それは、血というよりは、まるでチョコレートみたいな、どろっとした茶色っぽいものに見えた。
「どっかの内臓を突き破ったってとこか」
若頭が誰に言うでもなくつぶやいた。
「そろそろ、ですかね」
亮さんがそれに答えるようにつぶやいた。
急に少年の体が反り返る。二度、三度とのけぞるように動いたあと、少年の左の肩と胸の間あたりが盛り上がり、そして、そこから血が吹き出した。血の中に、あのドリルの先端が見えた。
「こんなところに貫通しちゃったんですね」
亮さんが残念そうに言った。
「心臓の方を狙ったのに・・・やっぱり動いちゃったからかな」
若頭がにやりと笑った。
がたっと大きな音がした。イモ系が立ち上がった。椅子が後ろに倒れる。そして、イモ系は床にうずくまった。
「おい」
久夫さんが声をかけたそのとき、イモ系が胃の中の、さっき食べたばかりの朝食を床にぶちまけた。
「うっ」
その瞬間をもろに見てしまった僕も、気分が悪くなった。口を押さえて何とか我慢する。その間に、イモ系は2回目を吐いていた。
「誰が吐いていいって言った、え?」
いつの間にか、久夫さんがイモ系の横に回り込んでいる。そして、床にはいつくばっているイモ系の頭を踏みつけた。イモ系は、自らが吐いた薄い茶色っぽい液体の中に顔を押さえつけられながら、さらに吐いている。白いTシャツの首から肩が茶色く汚れていた。
「お前、せっかく食わせてやった朝飯を無駄にするんじゃないだろうな」
久夫さんはさらに足に力を込めた。
「全部舐めてちゃんと胃袋の中に入れろ。いいな」
しかし、イモ系は床にはいつくばったまま、動かなかった。吐瀉物で汚れた顔で荒く息をついている。
「死にたいのか、お前は」
そして、腹を蹴った。
「うぐっ」
イモ系の体が少し浮き上がったように見えた。実際に浮き上がるほどじゃないんだろうけど、そう見えるくらいに勢いがあった。イモ系は、のろのろと四つん這いになると、自分が吐いたものに顔を近づける。その顔がゆがむ。そして、また吐いた。その頭を久夫さんがまた踏みつける。その繰り返しだった。少しずつ、イモ系は床を舐める。僕の胃の中もむかむかとしている。このまま見ていたら、僕も・・・僕は顔を反らした。ジャニ系もどきもイモ系の方は見ていなかった。心なしか顔色が悪いように見えた。吐きそうなのかもしれない。僕はスクリーンに目を戻した。見ていたくはないけれど、それしか見るものがなかった。自分の吐瀉物を舐めているイモ系と、顔色が悪くなってるジャニ系もどきのどっちを見ていても、僕まで吐きそうになるだけだった。
だったら・・・
スクリーンの映像はまた早送りになっていた。肩からドリルの歯が半分くらい出てきていた。茶色く汚れた少年の顔と体・・・それが血であることはわかっていても、今、僕のすぐ横の吐瀉物よりはリアルに見えない分だけましだった。
映像の中の少年は小刻みに動き続けていた。
僕は、この映像とすぐ横で起きている現実、すぐこの後に起こるであろう現実から目を背けようと努力した。涼君のことを考えようとした。
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