「NGワードは、痛い、助けて、ちぎれる、の3つとそれに類する言葉だ」
そう若頭が言った。
それを聞いただけで、僕等がこの第2回戦で、痛くて、助けてと言いたくなるようなことをされるというのは簡単に分かった。ある意味、そこまでは覚悟していたかもしれない。でも・・・ちぎれるってのは・・・
「始めろ」
若頭が短くそう言うと、男達が動き始めた。僕等はベンチの上に仰向けに寝かされる。ベンチは小さいから、首のところから膝の裏くらいまでしかない。まず、両手を頭の上で縛られた。次に男達が僕等の物に何かを取り付ける。
(コックリング・・・かな)
前に一度だけ付けられたことがある。竿と玉の根本をぎゅっと締め付ける感じは、コックリングと同じ感じだった。ただ、なんとなくあれより細い。そして、男がぎゅっとそれを締め上げた。
「いつっ」
思わず声をあげたのは僕だけじゃなかった。ジャニ系もどきも僕とハモった。少し遅れてイモ系も同じような声をあげた。
「おい、NGワードだぞ、今のは」
若頭が少し笑いながら言った。それを予測していたようだった。
「まだ今は準備中だから許してやる。だが、今みたいにうかつに感じたことをそのまま声に出すと、負けることになるぞ」
楽しそうだった。
「自分の股間を見てみろ」
僕等は3人とも、頭をあげて股間をのぞき込んだ。ワイヤー・・・直径3ミリくらいあるのかな・・・が僕の竿と玉の根本を締め付けていた。その先はわっかになっている。
「これからお前ら3人は吊り下げられる。そのワイヤーで、な」
"ちぎれる"の意味がわかった。
「早くNGワードを言うか、あるいは気絶した者が負けだ」
その説明の間に、ベンチの上の滑車から、同じようなワイヤーが降りてきた。その先端には、フックが付いている。
「気絶したかどうかは、俺の質問に答えられるかどうかで判断する。もし、俺の質問にすぐに答えが返ってこなかったら、そのときは気絶したものとみなす」
股間のワイヤーの先のわっかに、フックが取り付けられる。心臓がどきどきしていた。ただのどきどきじゃない。よく心臓が飛び跳ねそうってたとえを聞いたことがある。今の僕はそういう状態だった。たとえじゃなく、ホントに心臓が飛び跳ねていそうな感じだった。
「もっとも、勝負をおもしろくするために、時々ルールを忘れたり、あるいは変更することもあるがな」
そう言って若頭はにやっと笑う。要するに、若頭がやりたいように僕等をもてあそぶってことだ。そんなことは分かっていた。分かっていたけど・・・
男達が僕の足に何かを取り付けた。そして、少しだけワイヤーが巻き上げられた。
「ひっ」
思わず声を出してしまった。まだ吊り上げられるようなところまでは行っていない。ほんの少し股間が引っ張られた感じがしただけ。でも、体が震えた。心臓が震度5くらいで揺れていた。
「準備ができたようだ。じゃ、第2回戦の始まりだ」
そして、ワイヤーが徐々に巻き上げられた。
僕等は文字に出来ないようなうめき声をあげていた。それは最初はおびえた声、そして今は苦痛の声だった。ほんの10センチくらいだけど、僕等の体はベンチを離れて宙に浮いていた。股間で吊り下げられているため、上半身の方が重くて、首がベンチに当たっている。足は宙に浮いて、ふわふわしていた。
「上半身と下半身のバランスを取るために足に重りを付けてやる」
いかにも"僕たちのためを思って"みたいな言い方だった。でも、重りを付けられると、それだけ股間にかかる力が大きくなる。男達が僕の足に重りを付けていく。その重りで体が水平になるように調整されていく。その間も、僕等は股間でずっと吊り下げられ、締め付けられ、そこで体重を支え続けていた。
(痛い・・・ちぎれる・・・・・)
叫びたかった。叫んだ方が楽になるかもしれない。早く勝負に負けた方が楽だと思っていたはずだった。でも、今、それをする勇気がなかった。
「上げろ」
若頭が言った。ワイヤーが僕等の体をさらに引き上げた。ベンチが僕等の下からどけられる。僕等は床から1メートルくらいのところに、竿と玉で吊り下げられていた。
歯を食いしばっていても、うめき声が漏れた。それはジャニ系もどきもイモ系も同じだった。
「さて、最初の質問だ。初めて男とやったのは何歳の時だ?」
若頭が聞いた。さっきのルールの"質問"だ。すぐに答えないと気を失ったと見なされる。そして、それは"負け"になり、たぶん"死"につながる。
「あ、は、じゅう・・・13です」
ジャニ系もどきが答えた。
「お前は?」
僕の番だった。
「12です」
ジャニ系もどきが答える間に答えは考えてあった。だからすぐに答えられた。
「12というと・・・中1か?」
若頭がまた質問した。予想外の質問に、股間の痛みと戦いながら答えを探す。
「小6です」
半分叫ぶように答える。
「ったく、最近のガキは乱れてるなぁ」
若頭があきれたように言う。そんなこと言われても・・・そう思った。そして、あなたにそんなこと言われたくない、とも。
そして、イモ系の順番になった。ほっとした。
「お前はどうだ?」
ほっとしたのが後悔に変わった。質問され、答えを考えているときは、ほんの少しだけど頭が痛み以外のことを考える。でも、質問が終わったら、もう痛みしかない。股間の痛みが前より激しく感じられる。締め付けられ、引っ張られる痛み。そしてちぎれそうな恐怖。質問されていた方がまだましだった。
「きゅ、9才です」
痛みの中で聞こえたその答えに少し驚いた。ほんの少し痛みが和らぐ。そっちに気を取られたってことだ。
「お前ら早熟だなぁ・・・13でやったこいつが普通に思えるぞ」
若頭がジャニ系もどきの足を押し下げた。
「ぐあぁ」
ジャニ系もどきの体が股間を中心に揺れていた。ジャニ系もどきは口をぱくぱくさせている。その口は明らかに"助けて"と動いていた。しかし、声は出ていなかった。
「この中で最年少でやったお前にご褒美だ」
若頭がそう言うと、男達がイモ系の縛られていた手のところと足に、重りを追加した。
「うぅ」
イモ系がうめいた。
「言い忘れてたが、俺が一番気に入った答えをした奴には、褒美として重りをプレゼントしてやる。両手と両足に500グラムずつ、合計4つで2キロだ」
若頭が僕に近づいてきた。逃げようとしたけど、体が揺れるだけだった。
「そして、俺が気に入らない答えをしたら・・・」
若頭が僕の体の上に軽くお尻を乗せた。
「いっ!」
痛い、と叫ぶのをなんとかこらえた。若頭の体重が僕の股間にかかる。ちぎれるというか、引き裂かれるというか・・・痛みよりも恐ろしさを感じた。
すっと若頭が僕の体から降りた。それはほんの一瞬の間だけだったのかもしれない。でも、僕は泣いていた。その一瞬の間に感じた恐怖で涙が止まらなかった。
「質問にはよく考えて答えるようにな」
そして、若頭は笑った。
「次の質問だ」
次は、どんなことをするのが一番好きか、という質問だった。単に「どんなこと」とか「好きか」という表現だった。でも、絶対にこれはセックスとかそういうことについての質問だと確信した。この人たちが「ゲーム」とか「野球」なんて答えを求めるはずはなかった。
「さ、サッカーするのが好きです」
でも、ジャニ系もどきはそう答えていた。考えてみたら、質問されてから答えを考える時間はジャニ系もどきが一番短い。僕は少なくともジャニ系もどきが答える間、考えていられる。イモ系はジャニ系もどきと僕の二人分の時間がある。そういう意味ではジャニ系もどきは不利だ。
「そうか・・・じゃ、お前は?」
僕は答えた。
「アナルに入れられるのです」
若頭がにやっと笑った。
「お前はこの中で一番の好き者だもんな」
そして、イモ系の答えを待った。今回は前みたいに追加の質問はなかった。若頭の気に入る答えじゃなかったんだろうか・・・僕は心配になる。
「僕は・・・いじめられることです」
今度は声をあげて笑った。
「そうか。じゃ、お前はこういうことされるのも大好きなんだな?」
「え・・・ん・・・はい」
イモ系には追加の質問があった。そして、イモ系は少しつまって仕方なく、という感じで答えた。
「そうか。じゃ、ご褒美だ」
「い、いや、やめて!」
そんな声は聞こえていないかのように、男がイモ系の手足に重りを追加した。これで4キロ・・・自分の今の痛みに、さらに4キロの重りが加わった時の痛みは、想像がつかなかった。
「いや、やめて・・・か。これも今からNGワードに追加する。そして・・・」
若頭がジャニ系もどきに近づいた。思った通りだった。ジャニ系もどきの悲鳴が上がる。僕の時のように軽く、ではなかった。若頭はワイヤーをつかんで、ジャニ系もどきの体の上にまたがった。そのまま足をあげて、体を揺らす。若頭の全体重がジャニ系もどきの股間に加わっていた。
「ひぃ・・・ち、ち・・・」
ジャニ系もどきはそこまで言いかけて、あとは言葉を飲み込んだ。僕はさっきのほんの一瞬のちぎれそうな恐怖を思い出した。ジャニ系もどきは、さっきの恐怖をずっと長く感じている。そして、口に出そうになった言葉をなんとか押さえ込んでいる。大した奴だと思った。
「どうした、言いたいことがあったら素直に言っていいんだぞ?」
若頭が、ジャニ系もどきの上で体を揺らしながら言う。しかし、ジャニ系もどきは口をつぐんでうめき声すらあげなかった。ようやく、若頭がジャニ系もどきの上から降りた。
「さて、次の質問・・・の前に、少し遊んでみようか」
若頭が合図をした。ワイヤーが巻き上げられて、僕等の体が10センチくらい上に上がった。
次の瞬間、体が浮いた感じがした。それと同時に股間の痛みがなくなった。だけど、その次には激しい痛みが待っていた。
「ぐあぁ」
「ぎゃあ」
「ぎひぃ」
3人が3人ともそれぞれ叫んだ。10センチくらい巻き上げられたワイヤーが一瞬でゆるめられ、僕等は巻き上げられた分だけ、つまり10センチ落下した。その衝撃が股間だけに集中する。幸い(?)なことに叫び声以外に言葉は出てこない。口をぱくぱくさせても声が出なかった。
「ほぉ・・・誰もNGワード言わなかったか。なかなか辛抱強いな」
若頭はうれしそうだった。このゲームを継続できることがうれしいんだとはっきりと分かる。そして、次の質問が来た。
「ケツ穴は何センチくらいまで広がってる?」
難しい質問だった。何センチといっても、直径なのか、円周の長さなのか・・・またジャニ系もどきには考える時間がなかった。
「3センチくらいです」
すぐに僕が答える番だった。僕は・・・分からなかった。若頭の太いのは入った。あの第1回戦の時のディルドの太さは、5センチくらいだろうか。
「5・・・センチ」
少し不安げに答えた。そして、イモ系の番。イモ系はすぐに答えた。
「10センチ」
(それって円周じゃないの?)
僕がそう思った瞬間、若頭が言った。
「直径10センチか・・・たいしたもんだな。さすがは腕をぶち込まれたたけのことはある」
この部屋に入るときに見た、イモ系のお尻の血のあと・・・少し納得した。イモ系は本気で直径10センチって答えたんだって。
「しかし、10センチは言い過ぎじゃないか?」
若頭が合図する。男が一旦部屋から出ていき、手にディルドを持って戻ってくる。
「10センチだと、これだぞ?」
そして、男に命じた。
「足を開かせろ」
二人の男がイモ系の足を押さえていた。若頭がイモ系の股間にしゃがみ込んで、10センチのディルドを押し込んでいた。それはほぼ根本まで押し込まれていた。床には血溜まりが出来ている。さんざん叫んでいたイモ系も、今は静かになっている。でも、気を失っている訳じゃない。股間の激しい痛み、アナルを引き裂かれた激しい痛みに耐えながら、それでもうめき声をあげずに歯を食いしばっている。若頭は、ディルドが抜けないように、ガムテープをイモ系の体に×印のように貼り付ける。その間も、イモ系のお尻からは血が滴っていた。
「ちゃんと考えて答えろって言ったろ?」
若頭が笑って言った。
「じゃ、次だ」
またワイヤーが巻き上げられるのを感じた。
「今度は50センチだ。がんばれよ、お前ら」
僕はぎゅっと奥歯を噛みしめて、股間の痛みに備えた。
そんな備えなんか何の意味もなかった。一瞬、頭がふわっとなって、目の前が暗くなった。
(気を失っちゃだめだ)
意識の奥底で誰かが叫んだ。僕自身の声。次の瞬間、激しい痛みが戻ってきた。
「い・・・・」
今度こそ奥歯をかみしめた。僕の意志とはうらはらに口は開き、その言葉を叫びそうになる。首を振り、体を揺すってなんとかそれを言わないように耐える。体の痛みは増したが、どうやら言わずに済んだようだ。
他の二人が気になった。ジャニ系もどきはうめいている。ということは気は失っていない。NGワードを言ったかどうかは分からない。ついさっきまで、僕も人のことを気にするような余裕はなかったから、その間に言っていたかもしれないし、言っていないかもしれない。
イモ系はぴくりともしない。気を失っているのかと思った。ちょうどお尻の下あたりに、あの太いディルドが転がっていた。さっきの落下の時に抜けてしまったようだった。と、言うことは、この勝負はここまでなのかな、と思った時だった。
「なかなかがんばってくれるじゃないか、お前ら」
若頭がそう言ってイモ系に近づき、床に転がっていたディルドを拾い上げ、それでイモ系の頬を叩いた。
「ぐ・・」
それでイモ系は気が付いたんだと思う。絶対間違いない。イモ系は気を失っていた。
若頭はディルドを床に投げ捨てて言った。
「次だ」
それなのに、第2回戦は終わらない。つまり・・・
やっぱり僕等は若頭の気が済むまでいたぶられるってことなんだ。
|