約束
−15−


僕等二人は椅子に座らされていた。僕もジャニ系もどきも全裸のままだった。もっとも、玉と竿が大きく腫れあがっているため、下着や服を着るのは無理だろう。それどころか、普通に椅子に座っているだけでも太股に玉が締め付けられてかなり痛い思いをさせられる。僕もジャニ系もどきも足を大きく開いて、少しでも玉への締め付けが減るようにしている。そんな僕等の玉の下には、亮さんが準備してくれた氷嚢がはさまっている。
「お前ら、そんなに見られたいのか」
そんな僕等の座り方を見て、久夫さんが言った。でも、足を閉じることはできなかった。そんな僕等の前に久夫さんがしゃがみ込んだ。
「丸見えだぞ、お前ら」
僕等は手で股間を隠そうとした。
「手をどけろ」
若頭が命令する。僕は手を太股の上に戻す。ジャニ系もどきも同じようにしている。
「足を閉じろ」
無理だと分かっていながらそう命じる。ジャニ系もどきは少しだけ足を閉じた。僕も足を閉じようとする。太股が玉にふれるだけで飛び上がりそうな痛みが襲う。
「ほら、どうした」
若頭がそんな僕等を見ながら言う。
「で、できません・・・」
僕はそれだけ言った。すると、久夫さんが僕に近づいて、両膝を持って無理に足を閉じさせようとした。
「ぐあ!」
思わず久夫さんの腕をつかんだ。久夫さんが僕をにらんだ。
「で、できません」
すると、久夫さんはすんなりと手を離した。少し離れて、また僕等の前にしゃがみ込む。
「そんなに足開いて見てもらいたいなんて、変態だなぁ」
そして、僕にそんな言葉を浴びせる。
「まあ、そういじめるなよ」
若頭が言った。
「こいつはみんなの前で犯されても感じるような、ど変態だってわかってるだろ?」
そして笑う。
(僕等をこんなにしたのはあんただろうが)
そう思ったけど、もちろん口にはしなかった。

「さて、変態の相手よりも、罰ゲームの準備だ」
座っている僕等の目の前に、イモ系が横たわっている。玉は僕等よりも遙かに腫れあがっている。大きなグレープフルーツのようだった。手はさっきのように縛られていた。そして、男が2人、イモ系の体に近づく。男達は、さっきよりも少し細いワイヤーを持っていた。
「今度の罰ゲームは簡単だ。さっきと同じことの繰り返しみたいなもんだ」
(さっきと同じって・・・)
ワイヤーが少し細くなって、そしてまたそれで吊されるんだ。あの腫れあがった玉と竿で体重を支えなきゃならないんだ・・・その痛みは想像できなかった。
「ただし、今回は重りは無しにしてやる」
男の一人がイモ系の玉をぎゅっと握る。イモ系は苦痛のうめき声をあげる。男達はそんなことは気にかけずに、ワイヤーを玉の付け根に回して締め上げる。
「でも、それじゃ体のバランスがとれないからな」
男達は、持っていた他のワイヤーをイモ系の目の前に差し出した。その先には、魚釣りで使うような釣り針が付いていた。ただ、それよりは少し太くて大きい。
「やってやれ」
若頭の命令で、男達がイモ系の乳首のあたりを摘む。もう何をするのか、僕等も、そしてもちろんイモ系にも分かっていた。イモ系は、それが分かっていながら、叫びもせず、逃げもしなかった。叫んでも逃げても無駄なことは分かっているってのもあるだろうけど・・・それでも自分の体に釣り針を突き刺される恐怖に黙って耐えるなんて、なかなかできることじゃない。
男の一人が乳首の回りの肉を摘む。そして、その先端、小さな乳首の根本にもう一人の男が針の先を押し当てた。
「くっ」
さすがにイモ系も体を堅くする。男は乳首を摘んで引っ張りながら、そこに力を込める。
「くっ」
針先が押し当てられ、乳首が変形する。そして、その変形に耐えられなくなった瞬間、針がイモ系の乳首に突き刺さる。
「うっ」
男はそのまま更に力を込めて、釣り針を乳首に貫通させる。そして、もう一方も同じようにする。やがて、イモ系の両方の乳首にワイヤー付きの釣り針が取り付けられた。
男達は、イモ系の体が床で横になった状態で、乳首の方のワイヤーと股間のワイヤーの張りが同じになるように長さを調節する。乳首の方はかなり引っ張られている。イモ系はなにも言わない。でも、すでに涙を浮かべていた。3本のワイヤーは金具で一つにまとめられ、フックに掛けられる。

「じゃ、上げろ」
「ひっ」
若頭の命令でワイヤーを巻き上げるスイッチが入れられる。モーターの低いうなり音が聞こえてきた。イモ系はその音が聞こえたとたん、おびえたような声を出す。当たり前だ。またあんな辛くて痛くて苦しい思いを自分だけがさせられるんだ。ここでこうして座って見ている僕ですら、逃げ出したい気分だった。
「うぐ・・・」
ワイヤーがイモ系の体を引っ張る。竿と玉が少しずつ引き上げられる。乳首も同じように引っ張られるが、イモ系は上半身を起こして、少しでも乳首にかかる力を減らそうとしている。でも、それも時間の問題だった。
「ぐぅぅぅぅ」
イモ系の体が宙に浮く。まだほんの数センチだけど、体重のすべてを玉と竿と乳首で支えなければならない。しかも、細いワイヤーと釣り針がイモ系の皮膚や肉を引き裂こうとしている。ワイヤーで吊られている部分は、5〜6センチくらい伸びているんだろうか、それがなおさら痛そうに見える。すでに血も流れ始めている。
「この状態でこんなことしたらどうなるかな」
久夫さんだった。手には太い鞭を持っている。
「あ・・・」
イモ系の言いたいことはよく分かる。でも、それを言うために体を動かすことすら苦痛なんだろう。そして、久夫さんは鞭を振り上げ、イモ系の腹に振り下ろした。風を切る音と乾いたような音がほとんど同時に聞こえた。イモ系の喉から言葉にできないような叫び声と、そのあとはうめき声が出てきた。乳首から流れていた血の量が明らかに増えている。
(肉が裂けたんだろうな)
ぼんやりと見つめながらそう思った。そして、自分じゃなくてよかったと思っているのに気がついた。普通なら、そんな思いは頭から押し出すんだろうけど、今はその思いを否定はしなかった。少し前は、自分が負けて、そして罰ゲームを受けて終わりにしたい、そう思った瞬間があった。もしそうなっていたら、自分がああなっていたんだ・・・そう思うと、本当に自分じゃなくてよかったと思った。

「さて、2回目行くぞ」
久夫さんは楽しそうだった。久夫さんだけじゃない、亮さんも、若頭も、そしてさっき準備の手伝いをしていた男達も、この部屋にいる僕とジャニ系もどきを除く全員が楽しそうな顔をしていた。
「や、やめ・・・」
イモ系の叫びは途中で消えた。鞭が体に当たる音、そして、その証拠を示すかのように、体に赤い筋が浮かび上がる。叫びかけていたイモ系の口は、開いたままだった。喉の奥から低いうなり声のような音がしている。
「じゃ、3回目」
すぐにそう言って、鞭を振り上げる。
「嫌だ!!」
イモ系が体を揺すった。乳首や股間に加わる痛みよりも鞭打ちから逃げることを選んだ。つまり、鞭はそれほどイモ系にとって辛いということだ。
「3回目」
改めて久夫さんが言った。
「た、助けて」
イモ系が体をよじって僕等のほうを見た。すがるような目をしていた。でも、僕等にはなにも出来ないことをすぐに悟ると、また体をよじって若頭を見る。乳首からの血が増える。股間からも血が滴り落ちていた。
「助けて」
若頭に訴えていた。
(無理だよ・・・)
僕はそう言いたかった。若頭に訴えても、ここにいる誰に訴えても、みんな笑って見ているだけだ、そう思った。
そして、なにより・・・
(3回目だ)
それを期待している僕がいた。自分がなにを考えているのかわからなくなっている。目の前で行われていること・・・イモ系の体を玉と竿と乳首で吊して、鞭を打つ・・・そんなことに、いつの間にか僕は何かを期待していた。

「久夫、やめろ」
しかし、若頭はそう言って、久夫さんが振り上げていた鞭を押さえた。久夫さんが若頭の顔を見つめる。しばらく久夫さんは若頭の顔を見ていた。やがて、鞭を下ろした。
「わかりました」
若頭は久夫さんから鞭を取り上げる。そして、鞭を持ったまま、僕等に近づいてきた。

「お前がやれ」
若頭が僕に鞭を差し出した。


      


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