約束
−19−


体の方が治ってくると、今度は手足を拘束されたまま穴を使われた。
薬を入れられ、何人かに犯された。そして、そうやって犯されている間は、イモ系が殺された現実を忘れることができた。そうしている間だけ、僕等はまたいたぶられ、そして次こそきっと殺されるだろうという恐怖から逃れることが出来た。
そして、日常的に犯されることに慣らされていった。

第3回戦までの間、僕は単に犯されるだけじゃなくて、いろいろなプレイをさせられた。1日中、背中で手錠をかけられたまま口でずっとさせられ続けたこともあった。もちろん、同じようにしてアナルを使われ続けたことも。そうやって基本的なフェラチオやアナルセックスを仕込まれたあと、今度は横になっている相手に僕が奉仕をさせられた。相手を気持ちよくさせるやり方、気持ちのいいキス、そして気分を盛り上げるキス、激しいキス、そんないろいろなキスから、いろんな体位、どこが性感帯なのか、相手のよろこばせ方、そのためのあえぎ方、気持ち良さそうな表情、淫乱な顔、そそる目・・・次の勝負のために必要なのか、それとも”その先”のためなのか、それは分からないけど、少なくとも僕は立派な男娼として教育され、そして調教された。
そのためには、体もそれなりに維持をする必要があるということで、1日に何時間かトレーニングもさせられた。トレーニングには専用の指導官がついた。トレーニングしすぎて筋肉が付き過ぎてもだめ、もちろん、毎日食事してセックスしてるだけじゃ太るからそれもだめ。”そそる体型”を維持するために、ちょうどいいトレーニングを指導される。時にはそれがセックスのトレーニングと同じようなことだったりもする。特に長時間の騎乗位に耐えられるように、下半身のトレーニングにはかなり時間をかけた。
時々、その成果を見るために、指導官と実際に騎乗位でのプレイもした。指導官はなかなかいかない。騎乗位で1時間、2時間とがんばらないといかなかったりする。そんなプレイができるように僕等は特訓を受ける。大きな三角錐の上に座らされて、その三角錐がアナルに入っていかないようにこらえるトレーニングとか・・・空気椅子ってのがあったと思うけど、あんな感じだった。力がはいらなくなってお尻が下がると、三角錐がアナルに入ってくる。自分の体重で穴が広げられる。結局、足腰のトレーニングと穴の拡張の2つを兼ねたトレーニングだったんだろう。
その三角錐には、いつ、どこまで入ったかがマジックで記入される。僕だけじゃなくて、ジャニ系もどきのも記入されていた。今のところ、ジャニ系もどきの方が僕より広がっているみたいだった。その記録を順番に見ていくと、それまで少しずつだったジャニ系もどきの”進歩”が急に進んだ時がある。
(なにがあったんだろう・・・)
無理矢理太いディルドをつっこまれたのか、それとも・・・
たしか、第2回戦くらいまでは、僕のほうが広がっている感じだった。それが数日でこんなに広がってる・・・どんなことをされているんだろう、僕はそれを知りたくなった。

それは、指導官が教えてくれた。指導官はこともなげに言った。
「フィスト貫通したんだよ」
フィスト・・・たしか、イモ系が第2回戦の前にアナルから血を流していた。あのとき、若頭がフィストしたって言ってた。それまでにもイモ系はかなり太いディルドをはめられていたはず。それでもフィストされるとあんな風に血が出て、歩き難そうなくらいに痛むのかな、そんなことを思い出した。
「もう、平気でフィストできるくらいに拡張されてるよ、あいつは」
指導官は別に聞いてもいないのに話し続ける。話しながら、自分の太い腕をさすっていた。
「パンチングももう平気だしな」
「パンチングって?」
「拳を握ったまま、ずぼずぼすることさ」
そして、僕の前で拳を握る。
「これだよ」
大きな拳だった。
「四つん這いになれ」
指導官が命じた。指導官とは言え、若頭の仲間であり、命令には従わなければならない。僕は指導官の前で四つん這いになった。
「お前にも入れてやる」
そして、僕の穴にローションをたっぷりと塗りつけた。
「む、無理です。フィストも出来ないのに」
僕は訴えた。
「フィストもまだか・・・じゃ、今ここで貫通してやる」
そして、指を3本いきなりつっこんできた。
「うくっ」
まだ3本くらいは平気だったけど、いきなりだったのと、フィストされることに少し怯えていたために声が出てしまう。
「まだまだ」
そして、両手で指を入れてくる。もう何本入っているのかわからない。
「このあたりは余裕だな。それじゃ・・・」
そして一度指を抜く。更にローションを塗りつけ、自分の手にもたっぷりとつけて、再び入れてくる。
「5本根本まではOKだな」
そのままぐりぐりと手を動かす。
「ここからが問題だな」
徐々にお尻に押し当てる力が強くなる。押し当てながら手をねじる。少しずつ僕の穴が広がっていくのを感じる。そして、限界も。
「ぐあっ」
鋭い痛みが走る。
「い、痛っ」
僕は四つん這いのまま前に動いた。
「逃げるな」
指導官が言った。
「もう、勘弁してください」
僕は自分の穴を手で押さえる。痛む部分を指でマッサージするようにさする。その指を見てみると、べったりと血が付いていた。
「ったく・・・お前の調教メニューにフィストを入れてもらうように言っておく」
指導官はタオルで手を拭った。白いタオルが赤く染まった。
「そのうち、ぶち込んでやるからな」
(ジャニ系もどきもさっきみたいに無理矢理やられて貫通されたのかも・・・イモ系を貫通させたのもこの人かもしれない)
そうに違いない。なんの根拠もなかったけど、そう確信した。

ここでの僕等の生活は、こんな毎日だった。
それが何日くらい続いたんだろうか・・・

結局、僕は指導官の腕を受け入れることはできなかった。


夕食は、だいたい若頭達と一緒だった。僕等はだいたい全裸で、たまにコスプレみたいな恰好もさせられる。セーラー服とか、半ズボンとか、ブリーフだったり、ふんどしだったり・・・
そして、夕食時にその日にされたことやさせられたことを報告するのが日課になっていた。その話では、ジャニ系もどきも、あのトレーニング以外も僕と同じようにされているようだった。
あのイモ系の罰ゲームの時以来、僕はジャニ系もどきとは話をすることはなかった。1日の大半は調教とか教育だったから、顔を合わせるのは食事の時くらいだった。食事のときは、隣の椅子に座る。でも、お互い何もしゃべらない。ごくたまに廊下ですれ違うこともあった。そういう時はだいたい誰かに連れられているし、そこでも目も合わさない。でも、二人だけで話す時間がもしもあったとしても、僕等はなにも話さないと思う。あのイモ系の罰ゲームの時に僕がしたことを、ジャニ系もどきはずっと怒っているようだった。そのはずだ。部屋にあるテレビでは、今までの勝負の様子や罰ゲームの様子のビデオが繰り返し流れていた。いつ、どのチャンネルに切り替えてもそれしかやっていない。しかも、時々それを見るように命令される。だから、忘れたくても忘れることができない。ずっとジャニ系もどきはあのときの僕を見ているんだ。
あのときの、あのイモ系を鞭打った僕・・・自分でも初めてビデオで見た時は少し驚いた。こんな表情を自分がするとは思えない表情だった。歪んだ笑顔、気分が悪くなるような笑顔で、僕は夢中で鞭を振り下ろしていた。ビデオの中で、イモ系は僕を見て、
「やめて」
って懇願していた。でもその懇願は僕の耳には全く届かなかった。それどころか、血が流れている乳首や玉、竿のところを集中的に狙っていた。僕に懇願する顔面にすら、僕は鞭をふるっていた。自分でも吐き気をもよおす。ましてや、ジャニ系もどきにとっては、僕を殺してやりたいなんて思っているかもしれない。
そんなジャニ系もどきと最後の対戦をしなきゃならないのは気が重かった。僕が勝っても、ジャニ系もどきが勝っても、そのままじゃ終わらないような気がした。
もっとも、僕等が何かを起こす前に、亮さんや久夫さんに押さえつけられるだけだろうけど・・・

そして、それを聞いたのは、丸坊主にされていた頭の毛が、少し長い坊主狩りくらいに伸びてきた頃だった。



いつものように食堂で僕等は若頭達と一緒に夕食をとっていた。その日は僕もジャニ系もどきも首輪をつけられ、手錠をされていた。床に置かれた皿に一つに盛られた食事に手を使わずに頭を突っ込んで、犬の様に食べさせられていた。
「なかなか従順になってきたな」
若頭が食事中に席を立つ。テーブルを回って、僕等の前にしゃがんだ。
「ほれ、お手」
僕の前に手を差し出した。僕は食事を中断し、若頭の手に手錠をされたままの自分の手を重ねる。
「だいぶ生えて来たな。また剃ってやる」
若頭は僕の頭をなでた。
「もちろん、そっちもな」
僕の丸見えになっている股間も指さした。
「ちんちん」
今度はジャニ系もどきに向かって言った。ジャニ系もどきもその恰好をする。ジャニ系もどきの方は、股間の毛はきれいに剃られていた。
「よしよし、ちゃんと手入れをしてるな。いい子だ」
そして、頭をなでる。ジャニ系もどきだけが”いい子だ”って言われたことに少し嫉妬を感じる。
「さて、そろそろいいかな」
若頭は立ち上がって、僕等を見下ろして言った。
「第3回戦、そろそろやるか」
ジャニ系もどきが答えた。
「わん!」
若頭は笑顔になってジャニ系もどきの頭をもう一度撫で、席に戻った。
「準備もあるから・・・1週間後あたりでどうだ?」
久夫さんが答えた。
「それだけあれば大丈夫でしょう」
最後の勝負が目の前に迫ってきた。
それは、僕等にとって本当の「最期」になるのかもしれない。

      


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