約束
−20−


その1週間は長く感じた。
調教や教育、トレーニングはそれまでと同じだった。でも、僕等はオナニーも射精も禁止された。夜寝る時は体を縛られ、無意識にベッドにこすりつけることもできない。そんな状態ではあんまり眠れる訳もなく、1日中ぼんやりとしてしまう。その上で、毎日何かを注射された。初めのうちは特になんともなかったけど、しばらくすると体が熱くなり、竿が破裂しそうなくらいに勃起した。きっとそういう薬なんだと思う。そういう薬を毎日注射されて、毎日犯されて、毎日奉仕させられて、毎日射精を禁止されて・・・24時間勃起しっぱなしになった。頭が変になりそうだった。
そして、第3回戦・・・また辛いことをさせられるのかもしれないけど、きっと射精できるんじゃないかと思い始めた。早く第3回戦が始まらないか、そればかり考えるようになった。

そして、ようやくその日が来た。

その日は朝からどきどきしていた。昼食の前に、あの薬を2つ注射された。体がじんじんと熱くなって、じっとしていることができなくなった。食事の最中も、両足の太股を開いたり閉じたりしないと座っていられない。
「て、手錠して下さい」
僕は昼食が終わって食堂から出て行こうとしている亮さんに行った。
「な、なんだって?」
亮さんは僕の意外な申し出に驚いたようだった。
「このままだったら、しごいちゃうから、背中で手錠して下さい」
そんな僕をジャニ系もどきは少し離れたところから見つめていた。ジャニ系もどきの物も勃起して、びくびくと揺れていた。
「ったく、あきれた奴だな。待ってろ」
亮さんは別の部屋から手錠を持ってきて、僕にかけてくれた。
「ありがとうございます」
僕は亮さんに深々と頭を下げた。
「ま、せいぜいがんばれよ」
亮さんはそう言って頭を撫でてくれた。僕の頭は、昨晩またきれいに剃り上げられていた。

「そろったな」
お昼をしばらく過ぎたころ、僕等は食堂に集められた。僕等は部屋に置いてあった学生服を着ていた。ジャニ系もどきはよく似合っていた。僕はどうなんだろうか・・・学生服が少し大きめで、そんな服を着た僕は、なんとなくガキっぽく見えるような気がした。
「今日は別のところでやる。車に乗れ」
若頭を先頭に、僕等は家を出て、大きな車に乗り込んだ。この家を出るのは何日ぶりなんだろうか・・・1ヶ月なのか2ヶ月なのか、それとももっと短かったのか、長かったのか・・・日付の感覚は完全に無くなっていた。明るい日差しも久しぶりに見た。まぶしさに思わず顔をしかめた。
「オナニーしてないだろうな」
若頭が僕に言った。亮さんに頼んで手錠をかけてもらったことはもう若頭には知られていた。この学生服を着るときに、手錠をはずしてもらう必要があったから、なんとか服を抱えて食堂に行き、若頭や久夫さん達が見ている前で手錠をはずしてもらった。彼らの前で服を着ているとき、亮さんが手錠をかけたいきさつを説明していた。もう、淫乱だとか変態だとか言われたり、笑われたりするのには慣れていた。そういう生活をさせられていたんだから・・・
「こいつは今日の対戦を楽しみにしてましたからね」
亮さんが言った。
「そうか」
そして、若頭が僕の股間に手をはわせた。
「しっかり立ってるじゃないか」
ズボンの上から軽く握られる。それだけで僕の体は小さく震えた。
「おい、まだいくなよ」
そんな僕をジャニ系もどきが見つめている。冷たい目だった。

久夫さんが運転する車はしばらく街の中を走っていた。なんとなく見覚えのある街・・・僕が住んでいた街とは違うけど、ここがどこなのかは思い出せない。車の中で、また何かを注射される。朝から注射は3つめだった。
(そんなに注射しても大丈夫なのかな)
腕に針が刺さるのを見ながら、そんなことを考えた。
(でも、もうどうでもいいや、そんなこと)
射精できれば、あとはどうでもよかった。死ぬことも今は何とも思わなかった。とにかく・・・

体が熱くなってきた。そして、少しどきどきする。視界のどこかが時々光っていた。ふわっとした感覚と、体の中心からこみ上げるこの気持ち・・・僕は横に座っていた亮さんに抱きつこうとした。
「こら、まだがまんしろ」
亮さんは僕の体を押し戻す。亮さんの向こうでは、ジャニ系もどきがうつろな目をして体を揺らしていた。僕も同じように体を揺らした。動いていないと体が爆発しそうだった。
「まだそんなに効いてないはずなんですけどね」
亮さんが苦笑しながら助手席の若頭に言った。
「いいじゃないか。始める前にあと3本くらい打っとけ」
「死にますって。あと1本が限度ってとこですよ」
笑いながら会話を交わしていた。
「じゃ、2本だ。楽しみだな」
僕は車のシートでもだえながら、その会話を聞いていた。時々、車が揺れて、僕の体が亮さんの体に当たる。そのたびに僕は小さく声を上げた。

やがて、車はある建物に入っていった。駐車場には数台の車が止まっていた。車のことはよく知らないけど・・・高い車なんだろうなってことは想像がついた。
そして、僕等が乗った車は、その建物の裏の小さな扉の前で止まった。

      


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