「なにを見られたいんだ?」
「その・・・」
太陽がまたうつむいた。少しの間、そのまま動かない。
「あのっ」
太陽が顔を上げて僕を見た。
「俺が犯されるの、見て!」
そんなに大きな声じゃなかったけど、叫ぶような言い方だった。そして、僕にはそれが理解出来なかった。
「え?」
何を言ってるんだろう、僕が思ったのとほぼ同時に、太陽が服を脱ぎ始めた。
「ちょ、ちょっと、なにを」
僕は慌てて言った。けど太陽はどんどん服を脱いでいく。学生服の上着を脱ぎ、床に放り投げ、シャツを脱いでTシャツも脱いだ。日に焼けた上半身が露わになる。ソックスも脱いで床に落とす。学生ズボンに手を掛け、それも脱いだ。
僕は太陽を見て少し驚いた。太陽は白いブリーフを履いていた。

(あの太陽が、こんな白ブリなんて)
それも、なんだか腰の部分が長い、ダサい白ブリーフだ。
「驚いたか?」
椎名さんが言った。
「驚いたっていうか・・・なに、してるの?」
なんだか喉が渇いて声が出ない。
「なにしてるんだろうな、太陽」
今度は今宮さんが言った。
「太陽、もう終わりか?」
佐伯さんだ。一瞬、太陽が口を開き掛けた。でもすぐに閉じて、僕を見た。その目はまるで僕に何かすがろうとしているような目だった。
「どうした?」
太陽が唾を飲み込む音が聞こえた。床に正座する。
「諒君、俺が犯されて悦んでるの、見て下さい」
頭を床に押し付けた。

「太陽・・・なに、言ってるの?」
理解出来ない。
「分かんないよなぁ、こいつの性癖は」
今宮さんが、床で頭を下げている太陽の体を軽々と抱え上げた。
「ほら、立て」
僕の前に立たせる。
「あっ」
太陽の白いブリーフの前が盛り上がっているのに気が付いた。
「勃ってる・・・」
思わずつぶやいた。太陽は、股間の盛り上がりに手を当てて、そこをブリーフの上から撫で始めた。
「太陽・・・なにやってるの・・・」
僕の口から出たのは、太陽への問い掛けではなかった。それは、太陽が何をやっているのか分かっていたからだ。太陽の顔を見る。太陽は顔を伏せている。
「ほら、どう感じる?」
佐伯さんだ。
「気持ちいいです」
小さな声で太陽が言う。
「どう気持ちいいんだ?」
「諒君に見てもらって・・・気持ちいいです」
太陽が、あそこを撫でながら言う。
「気持ち良くてどうなった?」
みんな、少し離れて太陽と僕を見ている。
「勃ってます」
「なにが?」
「俺の・・・ちんこが」
「俺?」
今宮さんが言った。
「すみません、奴隷のチンポが、です」
太陽と僕の目が合った。すぐに太陽が目を逸らす。
「ほら、ちゃんと顔を見る」
太陽が僕を見た。
「もう一度、お前はなんなのか言うんだ」
「はい」
また一瞬太陽が目を逸らした。でもすぐに僕の目を見た。
「俺は、その・・・・・」
太陽が息を吸い込んだ。
「諒君の奴隷です」
今までで一番大きな声でそう言った。

「ちょっと待って」
僕は手を前に突き出した。座っているソファの、僕の横を手で叩く。
「太陽、ここに座ってよ」
太陽は動かない。
「ほら、ご主人様の命令だぞ」
「いや、だから」
僕は口を開く。
「ご主人様とか、奴隷ってどういうこと? それになんで裸になるんだよ。ちゃんと説明してよ」
一気に言った。
「ほら、座ってよ」
太陽の手を握って引っ張った。太陽は倒れ込むようにして、ソファに座った。
「どういうこと? 説明してよ」
太陽の手を握ったまま、僕は尋ねた。
「俺は・・・」
太陽が小さな声で言った。
「犯されてるとこ、諒君に・・・見られたい」
「犯されてるとこって・・・」
ますます分からない。
「俺はこの人達に犯してもらってる」
周りを見回す。男の人達が僕等を見ている。
「この人達に、無理矢理されてるの?」
太陽は首を左右に振った。
「してもらってる」
「してもらってるって・・・無理矢理じゃないの?」
太陽はこくっとうなずいた。
「そう言えって言われてるの?」
首を左右に振る。
「俺がして欲しくて、してもらった」
「犯されたかったの?」
うなずく。そして僕を見た。
「俺は、強姦されるのに憧れてた。だから、強姦してもらった」
何を言っているのか分からない。
「だって・・・男の人だよ?」
周りを見て言った。
「大人だし」
太陽が何かつぶやいた。
「え、なに?」
「どうせ俺は変態だよ」
小さな声だったけど、はっきりとそう言った。
「男が好きで、男に犯されて、それを見られるのが嬉しいんだよ」
膝の上で両手の拳を握りしめていた。
「まぁ、理解出来ないだろうな」
今まで何も言わずに僕等を見ていた佐伯さんが言った。
「確かに、普通の男の子には理解出来ない性癖の持ち主だよ、こいつは」
佐伯さんの顔を見た。
「性癖?」
「ああ」
椎名さんがその先を続けた。
「こいつはね、犯されて、自分が犯されているところを他の人に見られて興奮する、かなり特殊な性癖の持ち主なんだよ」
「中学生のくせにね」
今宮さんが付け加えた。
「そして、誰に見られたいのかっていうと」
僕を指差した
「君だ」
「なんで・・・」
僕は太陽の顔を見た。

「こいつが俺達に接触してきたのはもう半年以上前のことだ」
佐伯さんが言った。
「こいつは無理矢理強姦されたいって言ってきた。まだ経験したこともないのにな」
僕の隣で太陽はずっとうつむいている。
「俺達はこいつの希望を叶えてやった。押さえ付けて、強引に処女を奪った」
なんとなく、太陽の息が荒くなっている。
「そしたらこいつ、ケツから血を流して泣きながら、何回もでっかい声で喘いでトコロテンしやがった」
「生粋のドMだな」
今宮さんが言う。
「ところが、こいつの性癖にはさらに先があった」
佐伯さんが太陽に近づき、手で顎を持ち上げた。
「ここから先は、お前が自分で言え。その方が興奮するんだろ?」
「・・・はい」
太陽が小さな声で言った。
「俺は・・・」
僕を見た。
「諒君が好きだ」
僕に体を向けて腕を伸ばしてくる。
「ちょっと待ってよ」
その腕を掴んだ。
「男だよ、僕は」
そう言ってから、さっき太陽が言ったことを思い出した。
「いくら男が好きだからって、なんで僕なんだよ」
今まで一緒に遊んだ事もないし、一緒に帰ったのも今日が初めてだ。そんな太陽に、急に好きだと言われても・・・・・
「そんなに仲が良かった訳じゃ」
そこまで言ったところで、太陽に抱き締められた。
「そんなの・・・関係ない」
僕にしか聞こえないような小さな声だった。
「諒君はまだお子様だな」
椎名さんが言った。
「仲がいいとか関係ないよ、好きになるのはね」
それでもやっぱり理解出来ない。太陽の体を押し戻した。
「僕にされたいっていうんじゃなくて?」
百歩譲って僕のことが好きだというのが事実だとしても、なんでそんな僕に犯されているところを見られたいんだろう。好きなら僕に犯されたいとかそう思うのが普通じゃないんだろうか。
「俺は、犯されてるところ、諒君に見て欲しい」
「だから、なんでだよ」
「それは・・・・・」
太陽が、周りの大人達を見回した。まるでなんて答えればいいのか教えて欲しいかのように。
「俺は、俺が犯されてる惨めな姿とか、犯されて気持ち良くなってる恥ずかしいところとか、諒君に見られたい」
「だから、なんで」
なんとなく会話が成り立っていないように思う。
「興奮するから」
太陽が言った。
「興奮して、気持ちいいから」
またブリーフの上から股間を手で撫でる。
「僕、クラスの誰かに言うかも知れないよ?」
実際には、たぶん、言わないだろうと思う。こんなことが事実だったとしても信用してもらえないだろうし、何より友達の秘密をみんなに言いふらすつもりはない。友達なら、だけど。
「いいよ」
太陽が言った。
「諒君が誰かに言いたいなら、それでもいい」
すると、今宮さんが口を挟んだ。
「お前はその方が興奮するもんな」
太陽はうなずいた。


      


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